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【J1:第20節 川崎F vs F東京】レポート:第22回多摩川クラシコは死力を尽くしての”殴り合い”に。熱帯夜の熱戦はドロー決着(13.08.11)

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試合後にどうしても話を聞きたかった選手の1人が森谷賢太郎であり、もう1人が小宮山尊信だった。
欠場の稲本潤一に代わり先発メンバーに名前を連ねた森谷は、ボランチとして山本真希とコンビを組んでいた。今季の稲本は、ここ最近の試合では非常に安定したプレーを見せており、勝ち星を積み重ねてきた川崎Fのキープレーヤーの1人となっていた。だからこそ、その稲本の穴を埋めることを求められた森谷の働きぶりに注目した。そして正直に言えば、森谷に対し一抹の不安を感じる自分がいたのは事実だった。
ところが森谷は事前の予想をいい意味で裏切る。稲本のように、体を付けてフィジカルで奪い取る守備スタイルなどではない。ひたすらに走り回り、時に体を投げ出して足を伸ばし、ぎりぎりのタイミングで奪い取る。気持ちの伝わるそんな全力の守備に瞠目させられ、川崎Fの中盤は安定した。

前半は開始から20分ほどの時間帯までF東京が優勢に試合を進める展開となる。7分の渡邉千真のミドルシュートを皮切りに、16分には米本拓司のクロスを、その渡邉がドンピシャで頭で合わせ、川崎Fゴールを脅かした。
これらのピンチを凌いだことで川崎Fが徐々にペースを取り戻すと、前半33分に川崎Fに先制点が生まれる。レナトからのパスを受けた大久保嘉人が、相手DFを引きつけてアラン ピニェイロにパス。DFを背負ったアランは、このパスをワンタッチで前方へ。絶妙なスペースに出されたこのパスに反応した大久保が冷静に権田修一との1対1を決めた。しかし、大久保のゴールに熱狂した川崎Fサポーターの興奮は、すぐに冷まされてしまうこととなる。先制点からわずか6分後の前半39分。米本の浮き球でのパスを受けた渡邉が、GKとの1対1のシュートを蹴り込むのである。

激しい殴り合いの様相を呈してきたこの試合は、後半開始早々に動きを見せる。46分、右サイドを田中裕介が突破した場面。そもそも田中にとっての前半は、今季ワーストと言っていいような内容だった。田中自身は、ミスを連発していた前半について「自分の中で割り切って、今日は悪い日だ」と自覚。「ハーフタイムに自分で頭を冷やし(修正しようと)」後半に臨んでいたと言う。そんな田中からのクロスをゴール正面に位置する大久保が捉え、ヘディングシュート。一度は権田に弾かれるが、これを中村憲剛が押し込んで川崎Fが勝ち越しに成功した。この得点について中村は「いつもだったらもう少し(低い位置で)崩しに参加するんですが、今日はチャンスが作れていたのでペナルティエリアの中で待っていよう」と考え、待ち構えていたという。「(FWのような)ああいうポジショニングができるようになったというのは個人的に進歩です」と中村は試合後に振り返っている。

1点のリードを奪った川崎Fは後半の大半の時間帯を優勢に進める。後半に川崎Fが放ったシュートは6本。それに対し、F東京が打ったのは3本にとどまっていた。この3本のシュートのうち、後半1本目のシュートが56分のFKの場面だった。ゴール前20メートルほどの地点で奪ったこのFKを太田宏介が直接蹴りこみ、F東京が同点に追いつくのである。
試合はこの後、川崎Fが押し気味に進めるが、暑さもあって運動量の低下したF東京の守備を崩すことができず。またF東京も思うようには攻撃の形を作ることができず、2−2の引き分けに終わっている。

川崎Fにとって誤算だったのは、51分のカウンターの場面で左足を痛めたレナトが60分には完全に倒れ込み、そのまま交代を余儀なくされた点。川崎Fの攻撃を牽引してきた選手の1人であり、ケガの具合が気になるところである。
そしてこの交代により、ピッチに立ったのが小宮山尊信だった。原因不明の膝の痛みと戦ってきた小宮山は、およそ1年3カ月ぶりの出場で「帰ってきたという感じで楽しかったです」と述べつつ「出られたのがうれしすぎて(そのうれしい)感情に支配されないように、やるべきことをしっかりやろうと、それは心がけていました」と振り返る。小宮山は81分にセットプレーでの約束ごとを間違えてベンチから厳し目の指摘が入るが、その場面を除けばほぼ満点のプレーとなった。勝利には貢献できなかったが、2度のリードを守れず、引き分けたチームの選手だとは思えない程の満面の笑みで、ミックスゾーン対応する小宮山の表情から、彼が戦ってきた日々の辛さが透けて見えた。

また話を聞きたかったもう1人の選手である森谷は、試合後ミックスゾーン脇にある通路を使い、帰路についた。どんなに内容の悪い試合後でも、しっかりと問いかけに答えてきた選手なだけに何事かと心配だったが、少し遠くからの問いかけに対する返答が「脱水症です」という一言だった。広報からは軽い熱中症であり頭痛発症との説明を受けたが、いずれにしても気温33.3度、湿度58%という高温多湿の環境での全力プレーにより、体が限界を超えてしまったということなのだろう。体調を崩してまで動くことを止めなかった森谷から、勝利への強い意欲を感じた。なお、ボランチでコンビを組んだ山本真希は「前のところで取ってくれてすごく助かりましたし、ああいうプレーもできるんだなと思いました」と発言。まさに新境地を開く試合となったことを付け加えておこう。

試合結果は2−2。川崎Fにとっては3試合ぶりの複数得点試合となったが、相変わらず失点は減らずにドローで決着。森谷、小宮山の収穫の裏には守備面での問題が存在していることを自覚せねばならない。
一方のF東京は、2度に渡りリードされた試合を追いついての引き分けであり、敵地であることを考えれば決して悪くない結果だったと言える。渡邉の得点力や、米本の攻守に渡る貢献が光る試合だった。

以上

2013.08.11 Reported by 江藤高志
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