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【J1:第23節 甲府 vs 広島】レポート:8連敗中は弱気だったけれど、ピッチの中も外も自信を持ってもいいのでは。甲府が2ゴール無失点で首位の広島を撃破(13.08.29)

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記者会見場に現れた城福浩監督の表情や仕草からは特に読み取れるような感情はなかった。首位の広島にホームで2−0で勝ったのだから何かにひどく腹を立てていることはないはずだけど、喜びたい気持ちを押し殺している様子でもない。さすがに、ニヤニヤして会見場に来るなんてことはないけれど、思おうとすれば0−3で負けたときの表情だと思うことができるくらい読めない感じだった。唯一、「あ〜」と思ったのは「結果が出てきたことはチームにとってもスタッフにとっても選手にとっても実は『ほっ』とすること」と、話したところ。8連敗中は城福監督が一番ストレスを感じていたはずだから、この勝利は終盤戦に向けて――主力にケガ人続発というようなアクシデントさえなければ――手応えを掴めたと思えるものだったのではないだろうか。

ケガ人が多く、前節から先発を3人代えざるを得なかった広島に対して、甲府は前節の先発と違うのはベテラン・36歳のマルキーニョスパラナをベンチに置いて、もうすぐ39歳になるもっとベテランの伊東輝悦を先発起用した部分のみ。前節は16位・湘南、中3日の今節は1位・広島、中2日の次節は17位・磐田と続く3連戦をターンオーバーではなく、トーナメントのように戦うと決断した城福監督。同じ3−4−2−1のスタートポジションでマッチアップしやすいとはいえ、甲府のほうがディフェンシブにならざるを得ない戦いだったが、8分にCKの流れから柏好文が先制点を決めると甲府は戦いやすくなった。試合ごとに存在感が増していると言ってもいい河本明人が左足で入れたクロスを青山直晃がバックヘッド気味にファーに擦らせたボールを2タッチ目でシュートが打てる位置にトラップした柏が決めたゴールだった。国士舘大学時代の後輩・塩谷司も「大学時代もすごかったですが、プロになってさらに質が上がっていると感じました」という柏は、直近の4戦で3ゴール。あっちの青山(敏弘)を視察に来たと思われる日本代表のザッケローニ監督に少しはアピールできた…かもしれない。

成熟度の高い広島の3−4−2−1に対して、甲府は両ウィングバックが下がる5−4−1の陣形で隙を作らず守るのだけど、1トップのパトリックだけでなく、シャドーのジウシーニョがチーム1と言ってもいいくらいの献身的かつアグレッシブな守備をしてくれるから最後の5枚とGK・荻晃太は予測をして安定感のある守備で広島の決定機を最小限にすることができていた。16分には荻がキャッチしたボールをボランチに投げて繋げようとして高萩洋次郎にカットされ、佐藤寿人にポストに当たるシュート(結局はオフサイドでシュートにカウントされず)を打たれたが、これは「高萩選手の足が想定外に長かった(笑)」というミスで、慌てて投げて失うミスではなかった。このようなチームメイトも予測がつかないミスが何回もあれば、広島の選手の質ならすぐに1〜2点決めてくるが、この日は、というか、3−4−2−1に変更以降、試合ごとにこの種のミスは減ってきている。前半の30分頃からはお互いにマークがハードになり、ゲームが熱くなってきたが、甲府が前半に許した広島の決定機は16分のこの場面と、33分に左ウィングバックの清水航平がマッチアップする柏をかわして入れたクロスに初先発の17歳・川辺駿が合わせた場面くらいではなかっただろうか。

後半、甲府は清水との接触プレーで首を痛めた河本に代えてマルキーニョス パラナを最初から投入。立ち上がりは広島のアグレッシブなプレーに押し込まれる時間が増えたが、52分に保坂一成が“ヤバイ”ミドルシュートを決める。押し込まれることが長かった時間帯で、打った瞬間は(シュートで終わればカウンターを受けない)くらいに思っていた。しかし、広島陣内の浅い高さの左のタッチライン近くでボールを受けた保坂は、誰もマークに来ないのでドリブルして中に入って行くと「前が空いたから打とうと思った」。狙って打ったシュートではなかったが、これがファーに伸びて決まった。試合内容が良くなりつつあった甲府だが、首位・広島相手に1−0で90分間逃げ切るのは難しいと思っていただけに、2−0になると(最少得点の甲府が首位撃破か?)と脳の中で勝利への勢いがついてくる。スマホで他会場の途中経過を見ると14位の鳥栖がアウェイでF東京に2−0でリードしていたことでも、勝ちたい気持ちにターボがかかった。

今節に関してはストロングポイントをなかなか出せなかった広島。2−0になってからもそのすごさを出しきれず、前掛かりになるのにシュートで終われないから逆に甲府のパトリックにロングカウンターを許すことが増えた。終盤にはロングカウンターのやり過ぎでパトリックの足がつってしまうのだが、ピッチの外で少し治療すると再び復活。87分にはパトリックがカウンターで攻め込み、ボールを失わず粘って、中央から上がってきた石原克哉に決定機をプレゼントする。このシュートはドリンクボトルを2〜3本蹴散らすだけに終わったけれど、キープ力と迫力があるパトリックを中心にロングカウンターという武器を最後まで出し続けて広島にパワープレーの時間を作らせなかった甲府。個人の感想だが、89分に途中出場の石原直樹に許したヘディングシュート以外、後半の広島に決定機はなかった。ビルドアップされても11人の連携した守備で最後の部分では3バックとGKで堅く守った甲府。鳥栖がF東京に2−3で勝ったので、14位に入れ替わることはできなかったが、湘南、磐田、大分と下位のチームが敗れたために、冒頭の城福監督の言葉につながる16位と勝点7差の15位という、少し「ほっ」とできる勝点差になった。

8月最後の3連戦の最初の2試合は大分、甲府と移動がちょっと面倒なアウェイが続いた広島。コンディションに配慮するために通常の前日入りではなく2日前に甲府に入って準備してきた。さらに、ケガ人が多いために遠征メンバーは18人ではなく、ベンチ入りの可能性のある選手は総動員だった様子。前節に最下位の大分に引き分け、今節15位の甲府に敗れるという結果は受け入れ難いものだろうが、広島には立ち返る場所がある。昨日今日手をつけ始めたスタイルではない。再々開後は補強の効果が出るチームもあって前半戦とは潮目が変わる時期だけに、次のホームでのF東京戦は総力戦で勝ち切って自信をもう一度掴み直したい。ただ、ザッケローニ監督に十分なアピールができなかったことは残念だ。

こっちの青山(直晃)は、最近センターバックが安定しない日本代表に少しはアピールできたと信じたい。例え、ザッケローニ監督が海野一幸会長から手土産にもらった甲州葡萄しか眼中になかったとしても、青山、山本英臣、佐々木翔の3人の連携で決定機をほとんど作らせなかった安定感は終盤戦に向けて自信になる。次節は青山が警告の累積で出場できないので、誰がチャンスをつかむのかは気になるが、甲府はJ1残留を最大の目標にしないチームに脱皮できる自信と手応えを掴んだと言っていいだろう。ゴールがなくても貢献度は高いが、これでパトリックが決め始めれば鬼に金棒…となる。

以上

2013.08.29 Reported by 松尾潤
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