前節の岡山戦の勝利が状況を一変させた。まるで、オセロのようだ。岡山に勝利するまで栃木は11戦未勝利と苦しんだが、勝点3を獲得したことで鳥取、山形戦のドローが活きる形となり3戦無敗となった。自ら負けていない状況を作り出すことができたのだ。逆境を跳ね除けたことで、「勝っていない時期に比べれば雰囲気は明るくなった」(西澤代志也)。練習場にはポジティブな空気が漂い始めている。ところが、木曜日の紅白戦ではそれがマイナスに働き、気の緩みを招いて松田浩監督から檄が飛ぶ一幕も。
「緩さが出れば試合には勝てない。もっと一人ひとりが危機感を持たないといけない」
副キャプテンの高木和正は、そう警鐘を鳴らした。ひとつの勝利に安堵しているようでは、再び負のスパイラルに陥りかねない。完全にリズムを掴むまで気は抜けない。ましてや、今節の相手は5位の徳島である。10戦無敗と勢いのある相手に慢心していては、結果が付いてくるはずがない。なぜ岡山に勝てたのか。自分自身にもう一度問い掛け、練習で出た反省点を試合までに改善しておきたい。
岡山戦の勝因として、「我慢強く(自分達のサッカーを)続けられたこと」(松田監督)が挙げられる。つまり、先制されながらも同点に持ち込んだ鳥取、山形戦の流れを、岡山戦に持ち込めたことが小さくなかった。であるならば、徳島戦にも岡山戦の成果を活かさない手はない。GK榎本達也の言葉を借りれば、「前半を0に抑えられたことがひとつ。先制点を取れたことも大きかった。先制点の後に早いタイミングで追加点を取れたこと」が、具体的な収穫になる。
栃木と徳島のシステムは、共に4‐4‐2。互いに持ち味である堅守が光れば自ずと拮抗した展開になり、1点を争うクロスゲームの様相が濃くなるだろう。動きの少ない試合では、「いかに我慢して点を取るか」(高木)がポイントになる。徳島が得意とする堅守速攻の罠にハマらないためには、「ボールの奪われた方でなく、失い方が大事なる」(松田監督)。岡山に付け入る隙を与えてしまったような、中盤でのイージーなパスミスと軽率なプレーは絶対に避けなければならない。津田知宏とキム・ジョンミンへのチャレンジ&カバーを怠ることなく、拾ったセカンドボールを丁寧かつ慎重に扱い、強固な徳島の守備ブロックに風穴を開けたい。
8人が引いて守りを固める徳島を動かすのは容易ではないが、前節の京都の攻め方は参考になるはずだ。守備に難のあるアレックスのサイドを執拗に突いては数多の決定機を生み出し、京都は右サイドを崩して土壇場で同点ゴールを決めた。栃木が同じような形を作るには2トップがサイドのスペースに流れて起点を構築すること、岡山戦でバイシクルシュートを叩き込んだクリスティアーノと西澤が上手く連携を図ることの2点が求められる。右サイドを切り崩し、ここ最近の得点パターンであるサイドアタックからゴールをこじ開けたいところだ。
3‐4‐3から4‐4‐2にマイナーチェンジし、堅実な守備をベースに試合を運べるようになった徳島。その形が奏功してから8勝2分と波に乗った。今、最も勢いのあるチームである。古巣・徳島の強みを、GK榎本はこう分析する。
「守備が安定しているので前の選手が自信を持ち、少ない人数でも個の力で得点が取れている」
粘り強く後ろがファイトできているからこそ、前線の選手は安心して攻撃に力を割ける。それが少ないチャンスを確実に物にできている一因だろう。ただし、守備意識が高いのは前線の選手も同じで、前節はCKから絶体絶命のピンチを津田が身を挺して防いでいる。チーム全体に高い守備意識が浸透している証拠だと言える。色気を出すことなく、焦れずに自分達のサッカーを貫くことが、徳島が無敗街道を突き進む鍵になりそうだ。
栃木がJ1昇格戦線に食い込むのに残された試合数は12。1試合も無駄にできない状況に直面している。中位集団の最後尾である14位に位置する栃木と、プレーオフ圏内の6位・京都との勝点差は8。視野の中にターゲットは入っている。後方から一人ひとり選手を拾っていくのが、マラソンの醍醐味のひとつ。岡山戦で息を吹き返した栃木。前節を契機に昇格に向けてロングスパートを仕掛け、着実に順位を上げていきたい。徳島戦から最終節まで悔いの残らないように、持てる全ての力を振り絞ろう。
以上
2013.08.31 Reported by 大塚秀毅
J’s GOALニュース
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