J2のJ1昇格プレーオフ進出争いが面白い展開になってきている。3位のタケシ京都以外は最終節まで進出クラブが決まっておらず、外野から見てもどうなるのか興味深々。最終節に圏内にいる4位の長崎と6位の徳島が対戦し、負ければ圏外に押し出される可能性があるという恐ろしい組み合わせ。3連勝中で、7位の札幌は、勝てば5位の可能性があるだけに24日の北九州戦(札幌ドーム)は必勝の最終節となる。となると、中2日で迎える天皇杯4回戦(@うまスタ)と、そこから中3日で迎える最終節の比重がどうなるかは言うまでもない。ただ、だから甲府が有利だとは思わない。甲府のファン・サポーターは06年の天皇杯を忘れていないだろし、中立地での札幌戦となれば思い出すはず。縁は重なる。
06年、甲府は初のJ1リーグを大木武監督(現・京都監督)のもとで謳歌し、開幕前は降格候補一番人気も15位ながらも余裕を持って残留を決定してイケイケだった。5回戦では普通なら勝てないはずの川崎F(@丸亀)に5−2で勝ってイケイケ度にターボがかかっていた。試合前から「次はG大阪か横浜FMか」なんて話を担当記者間で話した記憶がある。甲府のエースのバレーは帰国していたが、札幌もフッキが帰国していて、お互いにエース不在という条件は同じで、不利な要素はないと思い込んでいた。現場の選手・スタッフは必死に戦うだけだっただろうが、「前年(J2リーグ)、札幌ドームでアディショナルタイムの大逆転劇もあったし、J1でボチボチやれている甲府がJ2の札幌に勝つだろう」・・・的に思っていた人は少なくなかった思うが、甲府は準々決勝で札幌に0−2で敗れた。帰りに仙台駅で牛タンを食べるのを忘れるくらいにこの敗戦のショックは大きかった。収穫は、根拠のない思い込みや慢心は身を滅ぼすという人生の教訓。だから、今回の札幌がユースの選手を起用したとしても危機感の目盛が下がることはないし、サポーターが選手の背中を押す力が緩むこともない。勝利の女神さまが思い込みや慢心を嫌うことは十分に知っている。
うまスタ(熊本)で札幌と戦うというのがイマイチ、ピンとこないが、お互いに移動が大変なことはピンとくる。甲府は中9日で札幌戦を迎えるのだが、次のリーグ戦(第32節)は中2日でホーム大分戦。土曜日に天皇杯4回戦を戦ったチームは週1試合のペースで最終節まで行くことができるが、甲府は4日で2試合という厳しいスケジュール。行きと帰りで使う空港を変えるなど、できる限り選手の移動負担を減らす工夫はするが、天皇杯4回戦と大分戦を同じメンバーで戦って、ともに最大値を出すことは非常に難しい。城福浩監督は「今週、2勝するためのベストなメンバーを導き出そうとしている」と話しており、どちらかに重心を置くのではなく、両方取りに行く。この場合、「二兎追うものは・・・」という諺は当てはまらないし、当てはめさせるわけにはいかない。「天皇杯で僕ら市民クラブが夢を見たっていいじゃないか」と大宮戦後に話した城福監督。J1残留は、まだ、「ほぼ決定」という状態だが、リーグ戦終盤は広島や鹿島に勝ち、横浜FMや浦和に引き分けていて、「上位相手でも負けない甲府」に成長。残留のために1年間苦労してきたのだから、「夢を見たい」と思うのは甲府に関わるみんなが同じ想いのはず。そして、この夢は実現可能な夢。小学生がバルサでプレーすることを夢見るとは違う、大人のビター味の夢。
いつもは、相手対策という準備もおこなう甲府だが、札幌戦は相手の先発が読めないだけに、チームとしての特徴に対する準備が中心となった。197cmのフェホという特徴のある選手もいるが、総じてのイメージは、「ほとんどの選手が若くても(公式戦の)試合経験があって、スキルの高いサッカーをやってくる。また、足元だけに頼らずに前に行く推進力や勢いもあって、湘南に近いイメージ」と城福監督は話す。甲府にとっては一番やり難いタイプ。今季、甲府は湘南とヤマザキナビスコカップと天皇杯でも対戦していて、4戦して2勝2敗。ただ、素晴らしいのは2敗してからの激闘の末の2勝なので、チームの成長を尻上がりに見せているので慢心もしないし恐れもしない。甲府はベテランを休ませつつ、先発機会の少なかったベテランを起用するので先発平均年齢は30歳ギリギリになりそう。加えて、やり続けてきた大卒1年目の金子昌広もチャンスを与えられそうなので、全力で背中を押したい。金子は開幕戦から3戦連続で先発したものの、その後は出たり出なかったり。ケガもあったが、8月3日(対C大阪)にチームが連敗を8で止めてからはベンチに1回座っただけ。同期の河本明人がサブ→途中出場→レギュラーと徐々に存在感を増していく中で悔しい思いをしていたはずなので、札幌戦ではゴールという実績でアピールする姿を見せてほしい。金子だけでなく、この試合で久しぶりのチャンスを手にする選手は、公式戦の試合勘不足、3−4−2−1の新システムで公式戦を戦った経験の少なさなど、個人的に感じる不安があるのは当然。そこをカバーしあって、個人の特徴を発揮できるかできないかで勝負は分かれる。お互い読めない立ち上がりの15分の戦い方が注目点になりそう。札幌は天皇杯3回戦の磐田戦同様にユース出身の若い選手にチャンスが与えられそうだが、プレーオフの懸かる試合に比べればノープレッシャーなはず。この条件の中で、磐田戦の自信をベースに彼らがどれだけのびのびとプレーするかという点は「札幌に勝ってほしい」と思って見ている人には注目点。そこに、最終節出場停止の超ベテランの砂川誠ら経験のある選手が絡んでくれば、素晴らしいコンビネーションや推進力が生まれる可能性がある。読めない期待と読めない不安や怖さは背中合わせ、だからこの試合に興味が湧く。
ただ、残念なのはどちらのサポーターにとっても平日水曜日の夜に熊本に観戦に行くのは、物凄い努力や覚悟がないとできないということ。もちろん、お金も結構かかる。甲府から熊本に期限付き移籍中の堀米勇輝は見に来てくれそうだが、いつもよりは少ないであろうゴール裏のサポーターと共に甲府・札幌の選手がどんな戦いをするのかは、「録画」だけどスカパーで確認してほしい(視聴可能なハイビジョン契約かどうかも要確認)。甲府の海野一幸会長と札幌の野々村芳和社長が解説をするという画期的な企画で最初で最後になるかもしれない。”懐の深い”経営者視点の話など、通常放送の解説者からは出てこない話なども聞けるのではないかと期待している。そして、くれぐれも終盤に海野会長が黙り込んでしまう展開だけはありませんように・・・。
以上
2013.11.19 Reported by 松尾潤
J’s GOALニュース
一覧へ【第93回天皇杯 4回戦 甲府 vs 札幌】プレビュー:06年以来の甲府対札幌の天皇杯・中立地対決。リーグ戦に挟まれた天皇杯4回戦は読めない先発、読めない展開。放送席では甲府・海野会長vs札幌・野々村社長の経営者対決が勃発・・・するかも。(13.11.20)













