2013シーズンを19位で終えた熊本は昨日、来季の監督に日本代表コーチ等を務めた小野剛氏が就任することを発表。チームはすでに来季に向けて動き出している。
言い換えると、避けて通れない悲しいニュースを受け入れなくてはならない季節が来たということ。クラブは今日の時点で契約満了となる4人の選手を発表。GK佐藤慎之介、DFノ・ヒョング、MFドゥグラスはいずれも1年間の在籍で残念ながらクラブを離れることとなった。そしてもう1人が、発足時からの9年間、チームを引っ張ってきた福王忠世だ。
熊本に来たのは2005年、C大阪を契約満了となった20歳の時。彼と同じように、選手としてロッソ熊本の一員となった加藤竜二GKコーチは、当時のことをこう振り返る。
「今もキャラクターは全く変わってないけど、あの時はまだまだ子どもで(笑)。でも世代別代表の経験もあったし、若い割りにプレーはしっかりしてましたよ。しっかり蹴れるしつなぐこともできるし、コーチングもできる。GKとDFという関係では頼もしい存在でしたね」
加藤コーチが話すように、彼の大きな特徴が、その的確で、時に厳しいコーチングである。練習でも率先して声を出して周囲を盛り上げ、中堅となっていくにしたがい、若い選手たちにはキツい言葉も投げかけた。
今季6得点を挙げて大きな成長を見せた仲間隼斗も、福王に刺激を受けた1人だ。
「忠世さんにはすごくうるさく言われたんですけど、自分とは違うサッカー観を持ってるというか、パス1つのこともチームのことも、サッカーのことをすごく考えてる人だと思いました。練習でも厳しくて(笑)、自分に足りないものをたくさん教えてくれて、自分を高めてくれた先輩です」
仲間の今年の成長は、加入1年目から、全体練習が終わった後に狭いグリッドで1対1を繰り返してきた福王との時間を抜きには語れない。
そしてユースに在籍していた時からその存在に憧れてきたのが、1年目の森川泰臣。2人ともボランチとセンターバックのポジションでプレーすることもあり、森川にとって福王は、いつかは越えたい、越えなくてはならない大きな存在だった。
「練習でもめっちゃ細かく言われるんです。でもいいプレーをしたときはちゃんと褒めてくれる。公式戦で一緒にプレーしたかった気持ちはありますけど、1年間一緒に練習できて、たくさんのことを教えてもらえた。いっぱい怒られましたけど、学ぶところが本当に多かった」(森川)
契約満了を告げられたのは昨日のことだという。だが28日のトレーニングでも、今までと同じように大きな声を出して練習を盛り上げた。無造作に選んでつけたビブスの番号は6番だった。
「記憶に残ってる試合はたくさんあります。地域リーグからJFLに上がった時もそうだし、Jリーグ入りを決めた沖縄での試合(琉球戦)もそうだし。でもいちばん思い出深いのは、2010年のホーム福岡戦(第29節)。前期の試合で福岡にボコボコにやられたけど、後期に2−1で勝った試合ですね。みんなの気持ちがこもったいいゲームだった。
熊本に来た時はまだまだ子どもで、自分が試合に出て当たり前だと思ってた。だから出られない時期は感情をコントロールできないこともあったけど、今は試合に出られない時期も自分なりにチームの空気も感じ取りながらトレーニングしたり、そういうところは若い頃と変わったところかなと思いますね。
本当に長い間、すごく応援してくださった方もいるし、最初の頃と比べるとたくさんのサポーターがスタジアムに足を運んでくれるようになったと思う。自分が試合に出られていない時にも声をかけてくれる人がたくさんいて、試合に出るのを楽しみにしてくれていたと思うんですけど、そういう方やスポンサーの方のためにも、次のチームで試合に出て、皆さんの前でプレーできるように頑張らないといけないと思います。
いちばん最初に熊本に集まったほかの選手の分までやりたかったんですけど、若くていい選手もたくさんいるし、これからはチームに愛情を持った選手、長く熊本のためにプレーしてくれる選手が出てきてくれたらなと思います。
残りはそんなに長くないと思うけど、このまま辞めるのは悔しいですし、まだJリーグでやりたい。どこかでプレーできるように、チームが練習している12月15日まではしっかり、皆と一緒にトレーニングします」
熊本で最後のゲームとなったのは、クラブ史上に残る0−7というスコアで敗れた北九州戦(第19節)。「あれが最後やったら嫌やなぁって冗談で言ってたんですけどね、でもそれも笑い話になったから」と、場の空気を柔らかくする気遣いも今までと同じだった。
昨季、今季と出場試合が少なくなったことに関して「要所要所で、僕が信頼を勝ち取れなかったからだと思う」と話した。とは言え、熊本の中心として重ねてきた182試合というキャリア、チームでの存在感と影響力、そしてサポーターからの支持、そうした要素を踏まえると、福王忠世は間違いなく、ミスター・ロアッソと呼ぶにふさわしい存在だった。できることなら、最後までいてほしかったが、これもまたプロの厳しさ。
「やっぱり、俺にとっては昨年横浜FCに移籍したイチ(市村篤司)と同じで特別な存在ですからね。辞めるんだったら『おつかれさま』って言うけど、まだ次のクラブでプレーするのなら、『がんばれ』という言葉しか言わない」(加藤コーチ)
来季以降、耳に馴染んだ関西弁の、ちょっと笑えるような厳しいツッコミが練習場で聞けなくなるのはとても寂しいのだが、違う色のユニフォームでもいいから、いつか絶対に、うまスタに帰ってこい。
以上
◆福王忠世選手のプロフィールはこちら⇒熊本:契約満了選手のお知らせ
2013.11.28 Reported by 井芹貴志
J’s GOALニュース
一覧へ【J2日記】熊本:福王忠世、クラブの歴史とともに歩んだ9年(13.11.28)
9シーズンにわたってチームを引っ張ってきた
ユース時代から気にかけてきた森川(手前)のプレーに目を配る
今日の練習でつけたビブスは6番だった
2011年の最終戦後のセレモニー。出場機会が少なかったことを受け、ゴール裏のサポーターから「俺達には忠世が必要だ」のボードが上がった
自ら2得点を挙げた2009年第24節・岐阜戦
2009年第47節では、昇格目前の湘南をくだした
風を考慮したロングシュートを決めた2010年第5節・草津戦
自身で「忘れられない試合」として挙げた2010年第29節・福岡戦















