試合後、ミックスゾーンに現れた新潟の選手たちは無表情だった。その胸中には不完全燃焼のくすぶりがあった。川又堅碁は「ゴールを決めて勝ちたかった」、キャプテンの大井健太郎は「勝点3が欲しかった」と勝利を逃した悔しさを口にした。

シュート数は12対1と新潟が圧倒した。立ち上がりからほぼ新潟のペースだった。引き気味の広島に対し、ボールを保持してから崩しにかかる。サイド、そして中央からの縦パス、裏を狙う飛び出し。前半12分には松原健、レオ・シルバの連係から田中亜土夢がシュートを放った。後半に入り、相手の足が止まると、奪ってからゴール前に攻め込む形が続く。川又、成岡翔、岡本英也がシュートレンジからマウスを狙った。

ただ、そのいずれも、ゴールを割ることはできなかった。「どこでどういう形で狙うのか。全員がイメージを共有しなければ」。成岡は言う。パスをつないでも、最後でミスをして打ち切れない、または相手に脅威を与えるシュートには、なかなかならなかった。ヤマザキナビスコカップ予選前節の甲府戦では、ブロックを固めた相手からアディショナルタイムに得点して1-0。だが、この日は最後まで相手の壁を突破できなかった。

柳下正明監督は厳しく言った。「最悪のゲームをしてしまった。俺がヒーローになってやるという選手がたくさんいすぎる。こんなチームを作ったわけではない」。周囲を使ってボールを動かす形を、フイニッシュの場面で欠いていた。「1点入れたらヒーローになる。そういう考え方の選手が多い。だから点が取れなかった」。積み重ねてきたはずの連動した攻撃を出せなかったことに、猛省を促した。

もっとも、それもチーム力に自信がある裏返し。これでリーグ戦は6試合、ヤマザキナビスコカップ予選を含めると9試合負けなし。リーグ戦はこの6試合で失点2と守備は固い。それだけに、攻撃の精度アップが課題として浮き彫りになった。

広島はアウェイで、最低限の勝点1を手にした。「ACLとJリーグと平行して、コンディション的にも難しかったと思うが、できれば勝点3をものにして、広島に帰りたかった」。森保一監督は勝利への執念をにじませながらも、「選手は押し込まれた時間帯が長い中、しぶとく、タフに戦い抜いてくれて、貴重な勝点1を持って帰れる」とホッとした様子だった。

中国・北京で16日に行われたACLの北京国安戦から中3日で、アウェイのリーグ戦。「ACLに出続けている選手は表情に疲れが出ていた」。佐藤寿人が言うように、コンディションは不良。後半に入ると、足が止まった。シュートは前半に青山敏弘が放った1本のみ。カウンターを仕掛けても奪われて、逆襲される形が多かった。

その中で挙げた勝点1。千葉和彦は「自分たちのできることはやれたと思う。勝点1は、強い新潟に対して悪くない結果。危ないシーンもあったが、みんなで身体を張って失点ゼロに抑えることができてよかった」と前向きに捉えた。手ぶらで帰らなければもならない結果でなかったことは、プラスになった。

勝点3を取り切れなかった新潟、勝点1を手中にした広島。結果の受け止め方には差があったが、ともに上位でしのぎを削ろうとするプライドが表に出ていた。

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2014.04.21 Reported by 斎藤慎一郎（ニューズ・ライン）