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【J2:第8節 札幌 vs 群馬】レポート:チャンスで決めたか、決めないか。双方が得点源を欠き拮抗した試合は、テクニシャン・前田の決定力で札幌に軍配。(14.04.21)

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試合終了の笛が鳴った瞬間、1−0のスコアで勝った札幌の財前恵一監督はテクニカルエリアでじっくりと力強く拳を握りしめた。完全に筆者の主観だが、その姿は、いかに試合が苦しいものだったかを明確に表しているような気がした。

開始直後こそ勢いがあったものの、時計の針が進むにつれてホームの札幌は劣勢となっていった。群馬はDFの3人に加え、両ワイドの夛田凌輔、瀬川和樹も横に並び5バックの形で最終ラインを形成。ただし、後方にベタ引きになることはなく、クォンハンジンを中心に積極的にラインをプッシュアップして全体をコンパクトに保ち、札幌の攻撃を寸断していたのである。

「いつもよりもコンパクトさを保てていた」と群馬の小林竜樹は振り返るが、その背景には札幌のメンバー構成も影響していただろう。この試合の札幌はエースストライカーの内村圭宏を負傷で欠いており、1トップに長身の都倉賢、そのすぐ後ろにテクニックのある前田俊介が立つ並びだった。この2人を財前監督が「両方とも足下で欲しいタイプの選手」と評したが、逆に言えば足下にさえ収めさせなければ怖さは激減するということ。それ故、群馬は全体をコンパクトにして彼らへの縦のパスコースを徹底して消しにいったわけである。もし、スペースに走り込むタイプの内村がいたならば、背後のエリアもケアしなければいけないため、群馬のDF陣もあまり思い切った押上げはできなかったはず。あらためて内村の欠場というのは試合の推移に大きな影響を与えていたと言っていい。

そうしてコンパクトに陣形を保った群馬は全体の距離感も良く、攻めに転じた際にも巧みに札幌のプレスをかいくぐってはボールを運んでいた。秋葉忠宏監督も「素晴らしいパフォーマンスだった」と自チームを絶賛したほどだ。

しかし、残念ながら群馬のほうもキーマンを欠いていた。精度の高いシュートでゴールネットを揺らすだけでなく、僅かな隙を見つけては決定的なラストパスも出せる、昨シーズン13得点の絶対的得点源、平繁龍一も負傷によりこの試合を欠場していたのだ。

自分達の狙い通りに攻守を演じていた群馬は、アタッキングサード付近でもダニエルロビーニョ、野崎桂太が積極的に仕掛けてはチャンスを作りかけるが、どうもあと一歩、相手守備を崩しきれない。12分ころには札幌のセンターバック、パウロンからボールをかっさらった野崎が抜け出す大決定機を得るも、シュートをバーに当ててしまった。結果的に敗れることになる群馬にとっては、平繁の不在にばかり原因を求めてはいけないが、狙い通りに試合を進めながらも得点が奪えなかったというのは絶対的な事実である。平繁不在のここ3試合はすべて完封負けである。

そして64分。奇しくも札幌にも同じようなチャンスが訪れる。この日は総じてアグレッシブかつ安定した守備を見せていたクォンハンジンがこの時だけはハイボールの対応を誤ってしまい、それを拾った前田が抜け出すと、こちらは難なく巧みにゴールへと蹴り込んで決勝点を奪う。

あらためて、サッカーというのはシビアなスポーツであることを感じさせる一戦だった。内容としてはアウェイの群馬がコンパクトな陣形で先手を取り、守備面での連係に不備があった札幌が若干後手を踏むという展開で推移。札幌はほとんど攻撃の形を作れないままだった。でも、最終的に歓喜を得たのはホームチームのほう。

何が勝負を隔てたのか。それはもう、言うまでもなく「点を取ったか、取らないか」だ。この日のゲームはトータルで言えばハイライトの少ない試合だった。そのなかで互いに超ビッグチャンスをプレゼントし合ったのだが、そのチャンスを群馬は決められず、札幌はしっかり決めた。内容はさておき結果についてを論じるならば、それがほぼ全てだろう。
互いに得点力のあるエースストライカーを欠いての試合で、群馬はチャンスを決めきれなかったが、札幌には内村だけでなく前田という勝負強いアタッカーも持ち合わせており、その選手が勝負を決めた。その意味では、より選手層の充実したチームが順調に勝った試合だったとも言えるのかもしれない。

以上

2014.04.21 Reported by 斉藤宏則
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