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[ 2006 ゆく年くる年:湘南ベルマーレ ]
【2006 Memorial Scene】
昇格の喜びに黄色が乱舞するなか、湘南は2006シーズンを終えた。ある選手は顔を覆いながらピッチを後にし、またある選手は「もう負けたくない」とつぶやいた。気持ちを新たに臨む来季、我々はこの口惜しさを忘れてはならない。
【湘南ベルマーレ Playback 2006】
指揮者のいないオーケストラは、ある意味で究極のアンサンブルかもしれない。タクトに頼らずブレスを合わせ、ときにアイコンタクトを交わす。強弱や緩急、流れ、そして仲間の音を、五感を総動員して感じ、共有しあう。室内楽と同じようにプレーヤーだけで大曲を奏でることができるなら、それは究極、あるいは理想だろう。
監督が指揮者だとすれば、選手たちはオーケストラを構成する団員である。指揮者の解釈のもとに練習を重ね、目指す音楽を構築していく。表現する場は試合というステージだ。もちろんそこに譜面など用意されてはいない。つぎの音は団員の判断に委ねられ、相手の出方によってときに即興も必要とされるだろう。だれが旋律を執り、だれが伴奏に回るのか、棒なき演奏のなかで自発的なアンサンブルが求められる。
湘南は今季、11位に沈んだ。シーズン途中の監督交代を経験し、失点はリーグワースト2に上る。最終戦では昇格を決めた柏が喜びに泣く傍らで、悔し涙を噛み殺した。
大倉智強化部長は省みる。「自分たちで立て直すメンタルが足りなかった。流れが悪いときに誰が戻るのか。個々の技術は向上しているが、果たして闘っていたか。逆境に負けずに己れの力を出しきる精神力を追求していく」。
テクニカルな演奏だけが聴衆を惹きつけるとは限らない。荒削りであっても、魂を込めた一音に心奮えることもある。一糸乱れぬハーモニーに、思わず吐息を漏らすこともあろう。そうして一体となりアンサンブルを奏でたとき、歓喜のフィナーレが響き渡る。
Text by 隈元大吾2006年12月31日(日)













