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2025年度 第4回Jリーグ理事会後会見発言録

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2025年5月12日(月) 16:40

2025年度 第4回Jリーグ理事会後会見発言録

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2025年度 第4回Jリーグ理事会後会見発言録
2025年度 第4回Jリーグ理事会後会見発言録

2025年4月22日

2025年度 第4回Jリーグ理事会後会見発言録

2025年4月22日(火)16:00~
Jリーグ会議室およびWeb ミーティングシステムにて実施

登壇:チェアマン 野々村 芳和
   執行役員 辻井 隆行
陪席:執行役員 樋口 順也
   執行役員 鈴木 章吾
   経営基盤本部 本部長 大城 亨太
司会:広報部長 萩原 和之

〔司会(萩原広報部長)より説明〕
本日開催いたしました第4回理事会後の会見を開催いたします。
本日は「2025シーズンのホームグロウン選手人数について」と、Jリーグにて推進する「サステナビリティ事業活性化プロジェクト」の始動に関するご報告となります。理事会の決議による発表案件はございません。
本日の登壇者は、野々村チェアマン、辻井執行役員、陪席は、樋口執行役員、鈴木執行役員、大城経営基盤本部長です。

〔野々村チェアマンよりコメント〕
最近のJリーグのトピックを少しお伝えさせていただきます。
昨年、たくさんの方にご来場いただきましたが、今年も多くのお客様に来場いただいており、各クラブの地域での取り組みを含め、すごく良い感じで来ていると思っています。
特に、J2は、昨年のシーズン開始時はV・ファーレン長崎の新しいスタジアムがなかったことなどもありますが、昨年比130%くらいのお客様にご来場いただいており、多くの皆様に興味を持ってもらえている印象です。色々な投資をして、どう成長していけるかというところを上手にやれているクラブもあり、個別のクラブのみならずリーグ全体としてそうした形で推移しています。
皆様にはいつも報道いただいていますので改めてのご案内となりますが、今週末サウジアラビアで川崎フロンターレ横浜F・マリノスがACLE準々決勝を戦いますので、ぜひそちらもよろしくお願いいたします。昨夜(21日)無事チャーター機で出発いたしましたが、メディアの方も同乗いただいていると伺っています。両クラブの関係者やJリーグ関係者も含めて、総勢150名くらいが先ほど現地に到着いたしました。ACLEへの認知・興味を、私たちももっとPRしていかないといけないと思います。ぜひ皆様にも両チームがいい結果を出せるよう、サポートしていただけたらと思っています。

〔質疑応答〕
Q:少し前の話で現状の確認となりますが、FC町田ゼルビア 黒田剛監督による報道が出ていましたが、町田は自分たちの調査機関の調査報告を公式ホームページ上で載せていますが、Jリーグはこの件について調査してくださいとお願いしている段階だと思います。そこから現状どうなっているのかをお聞かせください。

A:野々村チェアマン
私が今の段階でお伝えしなければいけないことはありません。

A:萩原広報部長
司会からコメントさせていただきます。現時点では町田から報告書は届いていないということしかお答えできません。報告書が届き次第、検討いたします。

Q:大谷翔平選手の出産立ち合いの「父親リスト入り」ニュースを受けて、Jリーグの選手が「Jリーグでもぜひ導入してほしい」とSNSで発信していたことが話題になっていますが、それに対するチェアマンの受け止めと、Jリーグとしての考えを教えていただけますでしょうか。

A:野々村チェアマン
(Paternity Listの制度で登録を抹消した場合2軍から1軍へ登録の補充を認めるもの。野球の場合は登録が分かれている事情から制度化されている。)
制度自体詳しくなくご質問になってしまいますが、メジャーリーグは「必ず休まないといけない」というルールになっているのでしょうか?現状のJリーグでは、(野球のように試合の頻度が高くない事情もあり、また当該試合へエントリーしない場合に登録が抹消される訳ではないため、主にクラブでの練習やキャンプ等の集中期間に重なった場合の方を考慮すると)、多くのクラブが、選手がもし出産に立ち会いたいと言えば、当然キャンプ中でも帰すことを(北海道コンサドーレ札幌の)自分の社長時代にもやっていました。出産に限らず、身内に何かあった際、各クラブで対応は現状十分にできていると思います。多くのクラブが対応していると思いますので、各クラブの対応で十分可能という認識です。

《報告事項》
1.Jリーグサステナビリティ事業活性化プロジェクト実施の件
https://aboutj.jleague.jp/corporate/pressrelease/post.php?code=c3c8a44f-d389-4195-b872-63cb169816d4&y=&m=&q=
Jリーグでは気候アクションを推進しています。サステナビリティの取り組みをより効果的なものにすべく、サステナビリティ活動をランキング形式で公表する「Sport Positive Leagues(スポーツポジティブリーグ、略称SPL)」へ参画を決定しました。
同時に、SPLの参画を推進する、「Jリーグサステナビリティ事業活性化プロジェクト」を発足することが先ほどの理事会でも話し合われ、日本財団様の助成を受けることとなりましたので、この後ご説明をいたします。レクチャーの要素が強くなりますが、皆様のご理解のベースを作らせていただければと思います。

《その他》
1.2025シーズンのホームグロウン選手人数について
https://aboutj.jleague.jp/corporate/pressrelease/post.php?code=20cdab05-68f7-494a-8326-56f5b11559f8&y=&m=&q=
ホームグロウン制度における、2025シーズンのホームグロウン選手人数についてお知らせいたします。本制度は、各クラブが選手育成にコミットし、アカデミーの現場を変えていくことを目的に導入したもので、Jクラブはホームグロウン選手を既定の人数以上、トップチームに登録する必要があります。

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〔司会(萩原広報部長)〕
これまでJリーグは気候アクションをいくつか行ってきておりますが、サステナビリティの取り組みをより効果的なものにしたいということで、気候アクションをランキング形式で公表するSport Positive Leaguesという仕組みへの参画を決定いたしました。
同時に社内でのプロジェクトチームを発足させたことが先ほどの理事会でも話し合われ、日本財団の助成も受けることとなりました。詳細をサステナビリティ領域担当の執行役員である辻井よりご説明させていただきます。

〔Jリーグサステナビリティ事業活性化プロジェクトについて辻井執行役員より説明〕
サステナビリティ事業の活性化ということで、2023年1月1日にサステナビリティ部門ができました。Jリーグにとってのサステナビリティという言葉(の意味)も含めてご紹介させていただきます。

01 Jリーグのサステナビリティの取り組み~気候アクション~
大きなインパクトのあるSport Positive Leaguesのところを中心にご紹介いたします。

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サステナビリティは「持続可能性」という意味で、Jリーグとしては、People、Planet、Communityこの3本柱をサステナビリティの活動領域と位置付けています。
現60クラブのホームタウンを日本の面積比にすると、国土の87%をカバーするくらいになります。その中で、「ホームタウンと共に成長していく」という1993年のJリーグ設立以来大切にしてきた考え方に寄り添って、例えば、高齢者、障害をお持ちの方、お子さんの未来などについての色々な困りごとに向き合う「ホームタウン活動」を行ってきました。
その過程で、クラブと地域の学校と企業、クラブと自治体とNPOなど、3者以上で協業する手法を導入し、これを社会連携活動(シャレン!)と呼んできました。シャレン!活動が浸透するにつれ、それが次第に「教育・福祉」といった活動内容を指すようになってきましたが、改めて整理をすると、ホームタウンは活動の場所、シャレン!は3者以上で協業するという活動の手法、その中身のテーマがPeople、Planet、Communityということになります。

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農業人口が著しく低下し、地域の経済に打撃があるということがあれば、選手がファン・サポーターと一緒に農業のお手伝いをするなど、色々な形でこれまで活動してまいりました。

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60クラブがクラブ単体で行なっているホームタウン活動は、約26,000回。それに加えて4,000回が先ほど申し上げた3者以上で行われているシャレン!活動、あわせて3万回くらいの活動を各クラブが一生懸命行なってきました。
円グラフをよく見ていただくと、中身はサッカーの普及、スポーツの振興など、どれもJリーグのミッションに即している大切なものですが、一方で、環境、気候のアクションは1%程度に留まっています。この1%という数字を懸念し、2023年からサステナビリティ部の事業領域に気候アクションを加えました。改めてその背景をご紹介します。

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2018年は西日本豪雨もあり非常に記憶に残る年でしたが、2018年以降、台風の激甚化、線状降水帯、集中豪雨などにより中止になる試合数が5倍ほどに増えています。

もう1つは夏場の暑さです。記憶に新しいと思いますが、一昨年、埼玉県のシニアリーグの42歳の選手が試合の直後に倒れられ、そのまま意識を失い亡くなってしまうという痛ましい事故がありました。こちらに関しては森保一日本代表監督もご遺族に会われ、再発防止をしっかりしますというお話を昨年されています。
もう一つ印象的だったのが、サガン鳥栖カターレ富山徳島ヴォルティスで活躍し、約300試合に出場経験のある元Jリーガーで、現在はジュニアのコーチもされている江藤裕さんから昨年聞いたお話です。
小学校の選手が週末の試合に出られないというので理由を聞いたところ、練習の後にシューズと靴下を脱いだら、足の裏の皮がはがれて靴が履けなくなった。夏場は人工芝が70℃くらいになるからだということです。これは私の幼少期にはなかったことですし、今は31度を超えるとプールの授業すら中止になります。私の子供の頃は寒さで唇が紫色になる、いわゆるチアノーゼの症状が出ると、プールから上がれと言われ、コンクリートに寝そべって冷えた体を温めてたりしていましたが、今は、プールに入るとお風呂と同じように汗が出て熱中症になるということが頻繁に起きています。
さらに一つ気候変動の影響について付け加えると、今治で大きな山火事がありました。こちらは大手メディアのニュース等でも、「明らかに気候変動の影響が大きい」という専門家のコメントが紹介されていました。この山火事により試合が延期になるということが初めて起こりました。山火事は、この後も増えていく傾向になるということです。

こうしたことから、先ほど申し上げた3つの柱の中でも、気候アクションをますますしっかりやっていかないといけないということが強化の背景です。
人工芝でサッカーをするお子さんたちの中には、スペースシャトルなどで使われている銀色の薄い断熱素材を足の形に切ってシューズの中に入れているという話も聞きましたし、カタールのワールドカップでは観客席に冷房を入れていました。このような形で、気候変動による猛暑に対して「適用」していくことは安全や命を守る上で大切ですが、同時に、そういった対処療法的なあり方ではなく、漢方のように、温暖化自体を抑える 「緩和」が大切という観点から気候アクションのお話をさせていただきます。

気候アクションを行うにあたっては、クラブ、Jリーグはもちろん、延べ1,250万人にもなるスタジアムに足を運んで下さっているファン・サポーターの方々、60クラブのステークホルダーである投資家、金融機関、企業、学校、教育機関、研究機関、自治体、NPO、NGO、そういった方々と手を取って活動していくことが大切だと思っています。

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サステナビリティ部門を立ち上げて以降、2023年、2024年は、「サッカーと気候変動は密接に関係している」、「サッカー界にも気候変動に対してできることがある」という認知を広げていくことに注力してきましたが、まったなしの状況の中で、ここから先は実装を強化していくということで活性化プロジェクトという名前をつけました。
このプロジェクトを始めるにあたり、日本財団から本年度3.7億円の助成金をいただきます。 3年の事業計画を日本財団に提出し、 予算総額は3年で11億9,000万円になりますが、1年ごとの申請と助成金の決定となりますので、まずは1年目3.7億円の原資を使ってここに書いてあるような活動を推進いたします。本日は(1)、(2)について詳しくご紹介いたします。

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(1)Sport Positive Leaguesは、2018/19シーズンにプレミアリーグからスタートした仕組みです。もともとは、クレア・プールという女性が一人で始めた活動で、当時、気候アクション、サステナビリティに関しての情報が一括して見られる場所がなかったため、公開されている情報を自分で一つ一つ整理し、Webサイトを作りつつ、20クラブにアンケートを送るところからコツコツとスタートしたそうです。初年度は「なんでアンケートに答えないといけないんだ」と言われることもあったそうですが、今は、多くのクラブがこの取り組みを大切にしており、特に上位のクラブほど熱心に取り組んでいる印象です。
具体的な内容としては、気候変動対策にとって大切な12の領域に関する各クラブの取組を独自の評価マトリクスを使用して客観的に評価、領域毎にポイントを付与して、各クラブの取組状況を定量的に可視化します。
現在参画しているのは、プレミアリーグ、チャンピオンシップ(EFL)、ブンデスリーガ、リーグアン(Ligue1)です。今のところセリエA(イタリア)とラ・リーガ(スペイン)は入るという話は聞いていません。Jリーグは2026年1月にスタート予定 の特別シーズンから60クラブの取り組みを可視化します。アジアからは初の参画となります。

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2022年の事例を紹介しますと、プレミアリーグの順位はこのようになっています(画面表示)。
横軸が領域(全部で12の領域)になりますが、それぞれ簡単にご紹介します。クラブの方針や戦略をしっかりと定めて、経営陣がしっかりとコミットするという「ポリシー・コミットメント」に続いて、「クリーン(再生可能)エネルギー」や「エネルギー効率」といったCO2の大きな排出源になっているエネルギーに関する項目が続きます。次に、「持続可能な輸送/移動」とありますが、これはファン・サポーターの移動、また先ほどもACLで選手の移動の話が出ましたが、移送でもCO2が排出されますので、選手の移動に関する排出もゆくゆくはゼロにしなければいけないことです。「植物性/低酸素食品」は、なかなか日本ではなじみがないですが、現在、プレミアリーグを含む欧米のプロスポーツのほとんどの会場で、ベジタリアンやヴィーガンなどのオプションが選択可能です。世界のCO2の25%程度が畜産を含む食糧生産や森林などの土地利用で排出されていますので、その在り方を変えていくということです。「選手・スタッフへの教育」について言えば、日本でも、ギラヴァンツ北九州から気候変動の話をしてほしいと依頼を受けまして、今年の1月の島原でのキャンプ中に、ハードな練習の後に選手全員と監督・コーチ、社長に向けてお話をさせていただきました。選手の皆さまは、大変疲れていらっしゃったはずですが、リアクションはすごく良くて、かなり本質的な質問もいただきました。また、トッテナム ホットスパーはトップチームの選手に対し、年3回、今はオンラインで、気候変動の最新の情報をアップデートする教育をしたりしています。また、このカテゴリーには、選手、スタッフだけではなく、地域のファン・サポーターや学校の生徒を対象とした教育も含まれています。「コミュニケーション」については、私たちのオウンドメディアだけではなく、メディアの皆様へのコミュニケーションを通じて、少しでも多くの方々にこの取り組みの重要性や意義を拡散していくことがとても大事になります。今日お集まりいただいたことに感謝していますし、今後もさらに発信していければと思っています。最後の「持続可能な調達」 というのは、例えば、会社で机やコーヒー・紅茶など、いろいろなインダイレクトプロキュアメント(間接購買)を行うと思いますが、それらの製品がどのように作られているかによってもCO2の排出量が全く違ってきますので、生産や使用、廃棄の過程でCO2排出が少ない製品を調達する基準を定めている自治体や企業もだんだんと増えてきました。そうしたことも領域として掲げられています。

2022年時点では、トッテナム ホットスパーとリヴァプールが27点満点で24点と、同率1位となっていました。3位はマンチェスター・シティ、4位がサウサンプトン、5位がブライトンと、日本人にもなじみがあるクラブが並んでいます。

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こうした12領域に関する取り組みを評価するための基準を定めたマトリクスについては、プレミアリーグで2019年、2023年のそれぞれで使用されていた基準を見比べつつ、現在、Jリーグに適した指標の検証をしているところです。例えば、「クリーン(再生可能)エネルギー」の領域の場合、2019年はクラブのすべての施設におけるエネルギーの40%以上が再生可能エネルギーである場合は1点などがありましたが、これは4年たって、いまは80%以上、さらに証明書が必要と、だんだん基準が厳しくなっています。背景としては、プレミアリーグの各クラブの取り組みの進化に応じて基準を改定しているからですが、日本に関しては、2019年の基準で2026年にスタートすると、社会的な要請からかけ離れてしまうことになりかねませんし、かといって最新のプレミアリーグの基準で評価すると歴史が浅いJリーグの各クラブにとってはハードルが高すぎることになってしまう。その辺りを見極めながら、60クラブに実態のアンケートをとりつつ、ロンドンのSPLの意見も聞きながらクライテリアを定めているところです。いずれにしても、Jリーグが恣意的に順位をつけるわけではなく、客観的な基準に則って評価を行うということです。

ビジョンとしては、2026年にSport Positive Leaguesのサイトに、リーグアンの下なのかはわかりませんが、「Jリーグ」が加わることです。プレミアリーグとEFLは(母国語の)英語のみで記載されていますが、ブンデスリーガやリーグアンをクリックすると、ドイツ語と英語、フランス語と英語で記載がありますので、Jリーグを掲載いただく際は、日本語と英語で載せていただくことを念頭に置いています。

最後に、導入のカレンダーを整理しますと、2025年はまず助成金を均等にクラブの皆様にご支援して、2026年に向けた準備を後押し致します。申請方式ですので、申請がない場合は助成対象外となります。万が一、余剰原資が発生した場合には、希望のクラブに追加で助成する方向で実行委員の皆様とはお話ししています。60クラブが手を挙げてくださることを期待して、5月末の締め切りを待っているところになります。

また、2026年の特別大会後には最初の評価結果が出ますので、秋ごろにはSPLのサイトに掲載をしていただきつつ、日本財団からの3年目の助成金を活用する2027/2028シーズンの原資については、傾斜率はまだ決めていませんが、ランキングに応じて3億円程度を60クラブで傾斜配分をしてさらに活動を進めていただくことを検討中です。

2026/2027シーズンについてはまだランキングがありませんので、2シーズン目についても本年度と同様に均等に配分を行う形で、各クラブの皆様の活動を後押ししたいと思っています。カレンダーとしては、少し複雑になっていますが、このように進めたいと思っています。

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SPLについては2026年から評価をスタート、ランキングを付けることになるわけですが、先ほど少し触れました通り、2025年はその助走期間ということで、各クラブの取り組みを後押ししたいと考えています。具体的には、財団からの助成金のうち2億4000万円を使い、1クラブあたり400万円を上限として60クラブに配分、各クラブ、12の領域の中から一つ、もしくは複数の領域を選定していただき、その取り組みの原資として使っていただきます。今、ちょうど各クラブから様々な申請をいただいており、3月、4月、5月、各月末に締め切りを設け、助成の審査をしているところです。以下に、少しだけ具体的な事例をご紹介します。

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①ポリシー&コミットメント
クラブがなぜ気候変動対策を行うのか、誰と、どんな活動を行い、いつまでにどんな成果を挙げるのか。そうしたポリシーや会社のコミットメントを示すためのドキュメントを、社会的な要請や国際的なスタンダードにも留意しながら策定するには、外部の専門家やコンサルタントと協業すると効果的です。例えば、コンサルフィー、クラブ内でかかる人件費、出来上がったものを発表するWebサイトの構築費用などは全て助成対象となっていますので、既にいくつかのクラブから実際に申請が来ています。

②サステナビリティに関するコミュニケーション
良い取り組みを行っていても、それが効果的に発信されてない、ファン・サポーター、ステークホルダーに届かないということもありますので、コミュニケーション体制を構築するための費用も対象事例になっています。

⑤使い捨てのプラスチックの削減と廃止、⑥ゴミの削減管理
石油が原料であるプラスチックを生成したり、廃棄したりすると大量のCO2が発生するため、使い捨てのプラスチックをやめてリユースカップを使ったり、さらにそれを循環していく仕組みをつくるといった活動についても助成の対象になっています。例えばヴァンフォーレ甲府は早くからリユースカップを使用していますが、これをさらに一歩進め、循環させる後押しみたいなこともできると良いと思っています。

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本取り組みを開始するにあたり、専門知識を持った方がクラブにいない、知見を集めようにも物理的に対面のミーティングができないといったさまざまな悩みが少なくないことから、『気候アクションハンドブック』の発行を予定しています。先ほどの12の領域を具体的なアクションに落とし込むためのヒントを提供し、無理なく一歩を踏み出していただくための手引き書になります。各領域でどんなステップを踏めば良いのか、また海外・国内のクラブ好事例なども共有する予定です。クラブに参考にしていただくことはもちろん、学生の研究・卒業論文のテーマとして使っていただいても良いですし、他のスポーツ団体がこれを参考にアクションを起こしていただいても良いと考えています。

最後に、改めて、サステナビリティ事業活性化プロジェクトについてのスケジュールを整理いたします。

●2025年4月
・Jリーグサステナビリティ事業活動助成金制度運用開始
・Sport Positive Leagues準備開始
事業の活動助成金運用開始、Sport Positive Leagues準備を開始します。

●2025年5月
・子ども向け教育プログラム概要発表
昨年4月から、サッカーの楽しさと気候アクションの大切を共有する「Jリーグ×小野伸二スマイルフットボールツアー for a sustainable future supported by 明治安田」をスタートしました。3~4年かけて全60クラブを回る予定ですが、ツアーでは、75分間ほど小学1年生から6年生までの子どもたちにサッカーの楽しさを伝える一方で、15分ほどの時間を使って、私と小野さん、開催地域のクラブOBと子供たちと一緒に、気候変動の状況や自分たちにできることを考えるサステナトークの時間を持っています。お子さんたちだけでなく、親御さんたちからの反応も上々で、サステナトークの最後にご紹介している、昨年Jリーグで製作した気候アクション動画「サッカーができなくなる日!?」を親子で見ていただく参加者も少しずつ、確実に増えています。今後は、スマイルフットボールツアー以外の機会として、新たに学校教育の中で使っていただける教材を外部の団体と一緒に作成中です。特任理事の小野さんや内田篤人さん、中村憲剛さんにも出演いただく素晴らしい内容になりそうですので、それを活用して、先ほどの「教育」というカテゴリーにおける各クラブの活動の後押しをしていこうと考えています。

・Jリーグのサステナビリティ領域の活動レポート発行

コミュニケーションの部分は、企業の場合は「統合報告書」「サステナビリティレポート」「インパクトレポート」というものがありますが、Jリーグもサステナビリティ領域、これは気候だけではなく、DE&I、コミュニティのところも含めた活動のレポートを、5月に発行し、これまで各クラブが取り組んでこられたことを、点から線、戦から面という形でしっかり表現できるようなレポートを発行したいと思っています。こちらも絶賛作成中です。

・Jリーグ地域再生可能エネルギー助成対象事業・第1号お披露目会

「Jリーグ地域再生可能エネルギー助成金」を昨年理事会で承認いただいています。その助成金を活用した初の施設をガイナーレ鳥取が中心となって建てています。太陽のエネルギーを発電と芝生の両方に使うソーラーシェアリングという設備になります。もともと、ガイナーレでは無農薬で芝生を育てて販売する事業を行ってきましたが、その芝生農地の上に、ぶどう棚のように隙間を空けてソーラーパネルを設置することで、太陽光の65%を芝生の育成に使い、残りの35%をソーラーパネルによる発電に活用するという画期的な施設をメインスポンサーでもあるローカルエナジーさんと共に竣工予定ですが、そのイニシャルコストの半分である約750万円をJリーグで負担しました。こういったことのお披露目会もしつつ、継続的に地域の人や文化、環境や経済にも配慮した再生可能エネルギーを増やすための支援も続けてまいります。

・明治安田×Jリーグの森~未来をつむぐ森~ (森林保全・再生活動)

また、明治安田さんとは、「未来をつぐむ森」という活動を、少しずつですが、今、山梨県と神奈川県で始めています。森は二酸化炭素の吸収源ですが、特にスギなどの人工林が荒廃してしまうと、花粉が出るだけではなく、二酸化炭素の排出源になったりもしますので、森を健全化することも地域の方と始めています。

●2025年6月
・Jリーグ気候アクション月間開催(5月27日概要発表)
・Jリーグ気候アクションハンドブック発行
・Jリーグ×NTT サステナカップ開催
6月は環境月間でもありますので、5月27日に概要を発表する予定ですが、「気候アクション月間」と銘打って、様々な活動の発表やアクションの推進をしていく中で、先ほどのハンドブックを発行しいたします。また、NTTと昨年から始めているサステナカップを今回は60クラブの皆さんとご一緒に実施いたします。ファン・サポーターの皆さんが、できれば先ほどの12領域に沿った形にしたいと思っていますが、気候アクションに取り組んでいただいた内容を、アプリに登録すると点数が加算されて、クラブでランキングを争っていくというような内容になっています。これも 6月にスタートしたいと考えています。

こうしたさまざまな施策を通じて、来年のSport Positive Leaguesの参画に向けて、良いステップの年にしていきたいと考えています。

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〔質疑応答〕
Q:Sport Positive Leaguesの件ですが、他国では参加しないクラブがあるようですが、JリーグではJ3まで含めて全クラブが参加するという理解でよろしいですか?

A:辻井執行役員
はい。その通りです。イギリスの場合はSport Positive Leaguesがアンケートを送付し、答えなかった場合は、「Not available」 という表記になっています。日本はコレクティブに動くことが得意ですし、Jリーグとしてはまず各クラブとしっかりと対話を重ね、昨年、半年間ぐらい協議をした中で、実行委員会でも進めたら良いのではと賛同いただきました。ただ、発表の方法はこれから詰めるところです。必ずしも各カテゴリー、もしくは全体の中での1位がどこで60位がどこと発表するのが目的ではなく、むしろ、各クラブの良い取り組みを色々な形で参考にしていただき、全体として前進していく形が良いと思っています。例えば、各カテゴリー、12の領域ごとにトップ15のクラブを発表するとか、そういった点はこれから実行委員の皆様とも協議を重ねていきたいと思っています。

Q:クライテリアの話がありましたが、SPLの本体が評価するのではなく、あくまで各リーグの事務局、Jリーグではサステナビリティ部が基準を決めて、点数化もサステナビリティ部がやるということですか。

A:辻井執行役員
実際の運用に関しては今話し合っています、創業者のクレアさんともキッチリと客観性を担保する形で進めましょうと話しているところです。これまで、イタリアやドイツのケースでは翻訳ソフトを使って(各クラブとやりとりをしており)、現地のリーグをあまり介していないようです。しかしながら、日本はコレクティブに全部やるということで、どこまで任せていただいて、どこまでやるかということはこれから協議いたします。クライテリアに関しては自分たちで勝手に決めるのではなく、クレアさんからいただいた19年と23年をベースとしつつ、あまりにも社会的な要請と比べて期待値が低いのは困るし、一方でストレッチしすぎて動けなくなるのも良くないので、どのあたりの塩梅が良いか、協議しながら一つひとつ決めていきます。客観的なクライテリアのマトリクスは始まる前に出来上がりますので、私たちが審査するというよりは、それに当てはめていきます。ただ、ものすごく細かく数値が決まっているわけではないので、ある程度対話が必要になってきます。従って、クラブとは質疑応答を実施いたします。
ランキングの集計自体はおそらくイギリス本体に集計を送付し出してもらうのが良いと考えています。掲載自体も彼女たちのWebサイトを中心に出して、それを私たちが使わせていただき、出版物や我々のWebサイトにも転用する形になると思います。

Q:SPLのページではランキングは全部でますか。他国を見ると、満点がリーグによって違うので、プレミアリーグとJリーグを単純に比べられるものではないのでしょうか?

A:辻井執行役員
ランキングの掲載については先ほどご説明した通りです。比較については、スタートした時点も違いますし、今のプレミアと日本の1年目を比べるというのはあまり意味がないと思います。あくまでも進捗を管理して、みんなで良い方向に加速していくための仕組みだと思っていただければ幸いです。

Q:助成金についてですが、2026年の特別大会のところで出し、2027/2028シーズンで傾斜をつけてという話でしたが、ポイントが高いクラブに多く助成を出すということになるのでしょうか。

A:辻井執行役員
全体として1位なのか、もしくはカテゴリーごとなのかといったことも含めて考えていますが、まだかっちりとは設計はしていません。ただ、傾斜をつけることをクラブに提案していて、それは面白いといった反応をいただいているのが現状です。

Q:結局はひも付きのお金になると思うのですが。取り組んでいるところは多くのお金をもらえてより加速するというのは良いことだと思うのですが、逆に点数が低く、そこに力を入れていないところお金がもらえなければさらにやらない気もするのですが。助成とは別にランキングが高いクラブにはひも付きではないお金を出すといった考えの方がよりやる気が出る気がするのですが。

A:辻井執行役員
今のご意見を参考にして設計したいという段階ではあります。例えば総合点だと下の方にまったくお金が入らないことになりますが、もし、12のカテゴリーごとにできれば、それぞれのクラブ、得意なカテゴリー、これまで強化してきたところが必ずあります。今の実態アンケートを見ると、12の領域でどのぐらいのクラブが何かをやっているかというと、だいたい半数ぐらいずつは何かをやってきています。ただ、それが可視化されていなかったので、カテゴリーごとにランキングを付け、傾斜にすれば、何も点が入らないということはないと思ってはいます。まだ試算をしていないので、そこはこれからです。
原資があれば追加したいのですが。これまでサステナビリティでスポンサーやパートナーを見つける際には、環境活動を頑張っているのでスポンサーになってください等のざっくりとしたアプローチが多かったので、こういった領域ごとに分けていくことにより、具体的な企業の悩みや弱点とクラブや地域が持っている強みをマッチング出来れば、お金を出す甲斐があるといったことが、これからやっと生まれてくると思います。そういった資金が入ってくれば、いろいろな形を考えたいと思います。

Q:Sport Positive Leaguesに参加するJリーグのメリットとしてはプレミアリーグや、海外のリーグと同じページに各クラブの取り組みの情報が載ることで、Jリーグやクラブの世界的な認知度のアップにつながる可能性もあると思いますが、取り組みや点数を他のリーグと比較するわけではないという先ほどの話ですと、ポジティブリーグ側からの例えば点数に応じた賞金などの還元などはないということでしょうか。

A:辻井執行役員
ありません。そもそも他国は賞金無しでやっています。
SPL側が一方的にアンケートを送り可視化するということをやる中で、クラブはクラブそれぞれのインセンティブ、モチベーションを持って頑張りランキングを上げています。実は、イギリスに関しては、ランキング自体は、昨年からテーブル式で公表するのをやめています。4、5年やってきて、全体としての評価はかなり進んでおり、順位表にして認知を高めたり、面白さ、ゲーム性などで色々な人の注目を浴びるという目標はある程度達成出来たので、現在は200ページ程に及ぶ、全20クラブの12の領域を、どのようなことをやって、現状どうなっているかが分かるレポートを発行する形に変わっています。創業者のクレアさんに相談し、日本の現状を考えると一定程度、しばらく順位表の形でやってみて、認知を高めるということも大事ではないかということで、ランキング形式に踏み切りました。また、クラブの実行委員の方々からも「辻井さん、これ、やりましょう」といった声が少なからずあり、日本財団から助成金が出るということも一つの大きな後押しになっていますし、ゲーム性ということでの関心も一定程度あると期待しています。

Q:可視化することでクラブにやりがいが出ると思いますが、賞金が出ないといったところで、例えば将来的にファン・サポーター、クラブがやりがいを見出すために、Jリーグアウォーズで、そういった部門を設けるなどの話はありますか。

A:辻井執行役員
これまで「シャレン!アウォーズ」という名前でアウォーズをやってきました。先ほど申し上げた通り、シャレンというのは手法の名前で、それが少し教育、福祉に関するアクションを指すという形で広がってきた側面があります。また、「シャレン!アウォーズ」とすると、クラブから気候に関するアクションがあまり上がってこないのが現状です。2026年を契機に、どういう名前、形式にするかは決まっていませんが、刷新が必要だと思っています。
また、助成をいただく3年間と、実際にアクションを起こしてランキングするシーズンはズレています。2026年のスペシャルシーズンに関しては、ランキングを付けて日本財団からの傾斜配分は出来るのですが、2026/2027シーズンに関しては、ランキングが出来たあとのお金の当てがない状態です。クラブには3年の時限助成なので、ずっとそれに依存してやっていくのではなく、この3年間の中で良い形でパートナーを見つけたり、自走できるような形にしていく必要性の話はしていますし、クラブもそれを認識しています。
とはいえ、このSport Positive Leaguesの私たちが続けるランキングに対して、大口のパートナーが付いたり、Presented by〇〇といった形で支援いただく企業が見つかったら良いとも思います。例えば日本財団の助成だと、実際に行った事業に対してお金をいただく、計画通りにいかなかった場合は還付するといった仕組みになっています。対象はあくまでもサステナビリティ活動なのですが、例えば、将来的にはそういった制約のない形でパートナーを見つけられれば、7割は環境に使うけれど、3割はチーム強化に使って良いといった形になると、さらに大きなモチベーションになると思います。良いパートナー企業があればぜひ、ご紹介いただければありがたいです。

最後に補足で、パートナーシップの実例です。昨年、リヴァプールに行ったときに共有してもらったキャンペーンについてです。リヴァプールのアンフィールドスタジアム(5万4074人)で、ペットボトルのゴミがすごく出ることから、ペットボトルのゴミ削減という悩みがリヴァプールにはありました。一方で、SCジョンソンという、売り上げが今、1兆5,000億ぐらいあるアメリカの企業が、さまざまなスプレーや除菌剤などを作っているのですが、その容器はプラスチックですので、それをリサイクルしていくことを一生懸命アピールしたいのですが、なかなか自分たちで言っても広がらない。そういったことからリヴァプールとSCジョンソンが組んで、MY LFCというアプリを作って、ファン・サポーターがアンフィールドに来て、ペットボトルをきちんと分別しているところを写真に撮影して登録すると色々な景品をもらえるといった活動を開始しました。遠藤航選手、エリオット選手、サラー選手も出演する「こんな活動をリヴァプールとSCジョンソンでやります、皆さんの力が必要です」という動画を制作し、1シーズンこの取り組みを実施した結果、リサイクル率が25%から86%に上がったそうです。そうすると、その事実をSCジョンソンは自分たちの統合報告書に書くことができますし、こんなに良いことをクラブを応援しながらやっている、ということが企業価値になります。SCジョンソンはリサイクル技術を持って、それを容器に出来る、そしてそれをリヴァプールはファン・サポーターへ訴求できる。現在ではそのリサイクルで作った赤い透明のドリンクボトルを給水タイムで選手が使用したりしていますので、大きなアピールになっています。そういった事例を12の領域で一つひとつしっかりと吟味していくと、マーケット、いわゆる商品になると思っています。そういったこともこれからクラブ、企業と相談しながら深めていきたいと思います。

 

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