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裁定事案に関するメディア説明会 発言録

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2025年12月28日(日) 18:00

裁定事案に関するメディア説明会 発言録

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裁定事案に関するメディア説明会 発言録
裁定事案に関するメディア説明会 発言録

2025年12月23日

裁定事案に関するメディア説明会 発言録

実施日:2025年12月23日(火) 17:00
説明者:Jリーグ 執行役員(経営基盤本部)青影 宜典
    Jリーグ 法務・コンプライアンス部 部長 杉本 渉
    Jリーグコンプライアンス弁護士 あさひ法律事務所 金山 卓晴 弁護士(2事案目)
司会:広報部長 江崎 康子 

司会
本日はお集まりいただきありがとうございます。17時にJリーグから裁定事案の懲罰決定に関するプレスリリースを発信いたしました。事案は2件ございます。

1点目は高知ユナイテッドSC、2点目はFC町田ゼルビアに関連する事案です。
https://aboutj.jleague.jp/corporate/pressrelease/article/15817
https://aboutj.jleague.jp/corporate/pressrelease/article/15818

まず初めに1点目の高知ユナイテッドSCの事案に関しまして、法務・コンプライアンス部長の杉本と担当執行役員の青影からご説明いたします。

杉本より説明
高知ユナイテッドSCの懲罰決定の件についてご説明いたします。

公益社団法人 日本プロサッカーリーグは、下記の件について裁定委員会に諮問し、高知ユナイテッドSCに対し下記のとおり懲罰を決定しました。併せて高知ユナイテッドSCに対し、同種事案の再発防止を期すために必要な措置の実施を依頼しました。

1.対象事案
高知ユナイテッドSC(以下「本件クラブ」という。)において、スタッフの大部分に法律上交付義務の課されている労働条件通知書を交付していなかったとする法令違反行為や、杜撰な労務管理等があった。

2.懲罰内容

【本件クラブ】
・けん責(始末書をとり、将来を戒める)

3.懲罰の理由
前記1の労働条件通知書を交付していなかったとする事実(以下「本件違反行為」という。)は労働基準法に違反する行為であり、その他の杜撰な労務管理も含め、法律、命令、条例等を遵守し、社会的規範を尊重して行動しなければならないことを定めるJリーグ規約第3条第3項に違反することが明らかである。

4.懲罰量定に際し参考とした事情
(1)本件クラブは、本件の問題発覚後に代表取締役を追加選任し、組織体制の見直しを含むガバナンス強化、内部・外部相談窓口の設置を始めとする本件違反行為に関する是正措置を公表し、各相談窓口を既に設置したことに加え、新たに現場業務の責任者となるべき執行役員を配置する等のガバナンス改善に向けた取り組みに着手している。
(2)各スタッフの業務軽減のために速やかなスタッフ増員に着手し、既に増員の具体的な見込みが立っていることに加え、同種事案の再発防止のための各種研修の実施等も予定している。
(3)本件は、労務管理の基礎知識を有する職員を欠き、経営者も十分な知識を持たない中で、漫然と続けられてきた違法ないし杜撰な労務管理行為であり、これを監督すべき取締役会等も何らその役割を果せなかったというガバナンス不全に起因する事案であって、ガバナンス構築の課題は大きい。

5.適用条項
Jリーグ規約
第3条〔遵守義務〕第3項
第133条〔Jリーグにおける懲罰〕第2号
第142条〔懲罰の種類〕第2項

(参考)
Jリーグ規約 https://aboutj.jleague.jp/corporate/assets/pdf/regulation/jleague/jleague_terms_and_conditions.pdf

質疑なし

司会
続きましてFC町田ゼルビアの件をご説明いたします。ここからは、今回ご対応いただきました、Jリーグコンプライアンス弁護士であさひ法律事務所の金山卓晴弁護士が加わります。

杉本より説明
公益社団法人 日本プロサッカーリーグは、下記の件について裁定委員会に諮問し、黒田剛FC町田ゼルビア トップチーム監督(以下黒田監督)およびFC町田ゼルビアに対し、下記のとおり懲罰を決定し、併せてFC町田ゼルビアに対し、同種事案の再発防止を期すために必要な措置の実施を依頼しました。

1.対象事案
黒田監督は、2023年頃からFC町田ゼルビア(以下「本件クラブ」という。)に所属する選手らの前で、自らの意向に沿わない選手がいれば、造反者といった表現を用いて排除する意図を持った発言や、練習中に選手およびチームスタッフの前で特定のコーチに対して大声で怒鳴る行為、懇親会の場でのスタッフに対する暴言等の不適切な発言があった。

2.懲罰内容

【黒田監督】
けん責(始末書をとり、将来を戒める)

【本件クラブ】
けん責(始末書をとり、将来を戒める)

3.懲罰の理由
(1)黒田監督による前記1の事実(以下「本件違反行為」という。)は、指導者である監督として、自らの配下にある選手、コーチ又はスタッフに対して行った暴言ないし不適切な指導であり、指導者の選手その他チーム関係者に対する暴言を禁じる公益財団法人日本サッカー協会(以下「JFA」という。)の指導者に関する規則第20条第7号及び指導者による不適切な指導を禁じるJFA懲罰規程第34条第2項に違反するとともに、選手その他チーム関係者の尊厳及び価値を尊重すべきことを定める同規則第20条第2号に違反し、JFAの定款及びこれに付随する諸規程を遵守する義務を定めるJリーグ規約第3条第1項に違反する。また、社会的規範を尊重して行動すべき義務を定める同条第3項に違反し、Jリーグの信用を毀損した点において、同条第2項にも違反する。
(2)本件クラブは、Jリーグ規約及びJFAの定款並びにこれらに付随する諸規程を遵守する義務があり(Jリーグ規約第3条第1項)、配下の監督、選手等の関係者がこれらに違反しないよう管理監督し、仮に違反行為があれば、これを直ちに是正しなければならないところ、後述のとおり、本件クラブは、監督の業務執行を適切に管理・監督し、違反行為を早期に発見して是正するために必要な体制を整備しておらず、内部統制上の不備があったことは明らかである。

4.懲罰量定に際し参考とした事情
(1)黒田監督の本件違反行為に暴力等有形力の行使は含まれておらず、規律違反としての悪質性の程度が極めて高いものとはいえない。
(2)黒田監督は、本件違反行為の存在を基本的に認めておらず、真摯に反省しているとは言い難い状況にあった上、本件違反行為を含む調査対象となった言動に関し、多くのチーム関係者に真実を語ることを躊躇させるような発言を行った。
(3)本件クラブは、本件違反行為を含む調査対象となった黒田監督の言動に関し、弁護士で構成される特別調査委員会により調査を行った。しかしながら、同委員会による当初の関係者のヒアリングに本件クラブの顧問弁護士を同席させ、黒田監督とヒアリング対象となるチーム関係者が通報内容に関してやり取りすること等を規制しなかったことにより、本件クラブが黒田監督を守ろうとしているとの印象を関係者が持つに至っている。これらは調査対応の不備と言わざるを得ず、チーム関係者の多くに率直な供述を躊躇させる結果となり、真相解明に支障をきたした。
(4)本件クラブは、メールによる相談窓口を設置していたが、相談に係る事実の確認は本件クラブの経営陣が行うこととされており、本件クラブの経営陣が関与する事象について相談できる相談体制を構築していなかった。
(5)本件違反行為は強化部のメンバーやコーチ等がいるところでなされており、本件クラブには、早期に問題行為を把握して是正する機会があったのに、本件クラブの経営陣及び強化部から黒田監督に対して注意する等のけん制機能が働かず、外部への通報が行われるまで問題行為が放置、継続された。

5.適用条項
Jリーグ規約第3条〔遵守義務〕第1項、第2項、第3項
第133条〔Jリーグにおける懲罰〕第2号
第142条〔懲罰の種類〕第1項、第2項
第146条〔両罰規定〕
JFA 指導者に関する規則第20条〔遵守義務〕第2号、第7号
JFA 懲罰規程第34条〔違反行為〕第2項

(参考)
Jリーグ規約
https://aboutj.jleague.jp/corporate/assets/pdf/regulation/jleague/jleague_terms_and_conditions.pdf
JFA 指導者に関する規則
https://www.jfa.jp/documents/pdf/basic/br24.pdf
JFA 懲罰規程
https://www.jfa.jp/documents/pdf/basic/br26_20241121.pdf

杉本
本件の懲罰までのプロセスについて補足いたします。
本件は2025年2月にJFAからJリーグのコンプライアンス部門に対し、JFA暴力等根絶相談窓口への通報に関する共有がありました。その後通報内容の事実関係の調査をクラブに依頼し、4月下旬に調査結果に関して一度報告書を提出していただきました。それらを確認する中でいくつかの観点で調査を補っていただくようクラブに求め、その結果、通報内容の一部についてクラブに再調査を実施いただくこととなりました。クラブの二次調査では、調査対象者を改めて検討・確認する必要があり、クラブが立ち上げた特別調査委員会では、6月〜9月頃までにかけて、選手・スタッフ等関係者にアンケートやヒアリングを実施されたと聞いています。Jリーグでも、クラブが立ち上げた特別調査委員会の調査結果の信用性を判断するために、主要な関係者へのヒアリングを追加的に9月〜11月にかけて、のべ12回実施しました。最終的にクラブから提出された調査報告書の最終版と、Jリーグが独自に話を聞かせていただいた内容を併せて総合的に裁定委員会でご判断いただき、その答申を受けて懲罰を決定いたしました。

質疑応答
Q:クラブが再調査して出した調査結果の最終版はいつ提出されたものでしょうか。

A:杉本 10月下旬頃です。

Q:プレスリリースの「4.懲罰量定に際し参考とした事情」と記されている部分に「黒田監督は、本件違反行為の存在を基本的に認めておらず」とありますが、最終的に黒田監督はこの事案があったことを認めているのでしょうか。

A:杉本 通知自体を行ったのがつい先日(12/19)です。黒田監督が認めていなかったというのは、ヒアリングのタイミングでの事象が記載されています。通知後、クラブからは(処分を受けて)黒田監督は大変反省をしているというような話は伺っていますが、詳細についてはクラブへご確認いただくのがよいかと思います。

Q:Jリーグとしては、黒田監督が今回の件を認めているかどうかまでは確認をしていないということになりますか。

A:杉本 調査をしている段階では認めていなかったということです。

Q:「通知後、クラブからは黒田監督は大変反省をしているというような話を伺っています」と発言された部分で、「黒田監督が反省している」という点について、リーグとしては、当該事案を認めていることによるものだと認識しているということでしょうか。

A:杉本 その通りだと思います。

Q:黒田監督の行為はJリーグとして、今回パワーハラスメントにあたるのでしょうか。どう判断しているのかについて伺わせてください。

A:杉本 今回の事案では、パワーハラスメントの認定によるものではなく、JFA 指導者に関する規則の『指導者による暴言や不適切な指導は認められない』という規則をもって、今回の懲罰を決定しています。

Q:2021年12月に公表された過去の懲罰事案の際には、パワーハラスメントが認められる条件として、優越的な関係を背景とした言動や、必要な範囲を超えていること、就業関係が阻害されることなどの要件があったかと思います。そうした点から見ると、今回の事案も該当するのではないかとの印象を受けますがパワーハラスメントと認定しない理由をお聞かせください。

A:金山 ご質問にある過去の事象では、どのような回答をされたか承知していないのですが、一般論としましては、いわゆるパワーハラスメントが認められるための条件として、優越的な地位であること、業務上の必要かつ相当な範囲を超えているかということ、また職場でのパワーハラスメントに関しては、労働者の就業環境が害されることが要件ということになっています。3つの要件をすべて満たさなければいけないということと、程度の問題があります。「(3点目の要件の就業関係が)害される」というのは、例えば行為を受けた方が嫌な思いをしたとしても、マルかバツかで言いますと、それだけでマルという判定にはなりません。やはりそこは、3つの要素を全て認められなければいけないこと、かつ、ある程度の掛け算のような関係で、一定の限度を超えなければ認められないと認識しています。今回、クラブが(Jリーグが追加調査を求め)立ち上げた特別調査委員会が認めた事実に加えて、Jリーグ側で調査し認定した事実に基づきますと、そこまでの程度には至らない、そこまでの程度を超えた(言動である)という認定は難しいと判断しました。

Q:程度を超えているというところで言うと、もちろん、それが絶対条件ではないと分かっていますが、リリースに記載されている「暴力等有形力の行使は含まれていなかった」という判断でしょうか。

A:金山 一般的に暴力等有形力の行使があれば、その「程度」というのは超えるのが通常だと思います。すなわち、優越的な地位があり、暴力を振るわなければいけない必要性や相当性というのは、まず認められないということです。暴力があればほぼ(必要性・相当性がないことに加えて、就業環境が)害されるという関係にあるので、暴力があればまず(パワーハラスメントとして)認められるだろうというのが前提です。今回は、暴力はありませんでした。ただ、(暴力が)ないから認められないのかというと、当然そうではなく、どういう状況でどういう言葉を発言したかを総合的に判断することになりますが、今回、我々が認定した事実では、そこまでには至らなかったと考えています。

Q:正直、悪質性があるという印象は受けていて、その中でJリーグの今回の処分が軽く見えるようなところもあり、スポーツ界やサッカー界全体のイメージやハラスメントに対する姿勢について、もしかしたら傷ついてしまうのではないかと懸念するところもあります。そのあたりはどう受け止めていますか。

A:青影 懲罰の量刑に関しては、評価をこの場でお伝えするのは(被害者や通報者の保護の観点で)難しいのですが、少なくともけん責という形で懲罰が課されているということを踏まえると、パワーハラスメントに認定されるかどうかといった法的な側面にかかわらず、どのような場面であっても、どのような理由であったとしても、今回、黒田監督が行った行為というものは、他者に対しての人権や尊厳の観点から、やはり不適切な言動であり、暴言であったと認識しており、決してそれは許されるものではないと考えています。
さらに、クラブに対してもけん責の懲罰を課していますが、その行為をおこなった当事者だけでなく、クラブという組織全体としても、今回の事実を真摯に受け止めていただきたいと思います。当然、黒田監督の言動が起因ではありますが、そういった言動を少なからずそばで見ていたクラブのスタッフや、報告を聞くまでしっかり組織的な対応ができていなかった組織のガバナンスにも一定の課題はあると認識しています。そのようなことも含めて、今回の事案をしっかり真摯に受け止めて、再発防止に取り組んでいただきたいと思っています。
また本件は、FC町田ゼルビアの話ではありますが、Jリーグ全体としても、例えパワーハラスメントに認定されなかったとしても、指導者としての不適切な言動は厳に慎むべきであり、今回の事案をもって他のクラブにも共有したうえで、他のクラブでもこうした事案が発生しないように取り組んでいただきたいと思っています。

Q:今回、自浄作用が働いていない、そのようなクラブなのに、問題のある指導者をどうするかは、Jリーグとしては何もできないのでしょうか。クラブに対応してもらうということになってしまうのでしょうか。

A:青影 まずはクラブにしっかり対応していただきたいというのは、お伝えしたとおりですが、もちろんJリーグとしても、クラブ任せで対応してください、で終わりではありません。これまでの過去の様々な事案においても、我々は研修や事例の共有、またそれぞれのクラブと向き合うなど、様々な対応をしてきましたが、これまでよりもさらに深く、広く、クラブに対して対応を求めると同時に、私たちも一緒にそういった事案が発生しないような枠組みを作る必要があると思っています。来年に向けて、これまでとは違う形での取り組みも実施してまいりたいと思っていますので、準備ができ次第、皆様にもお伝えしてまいります。

A:金山 本件の事実認定について補足します。2025年4月の段階で週刊誌による報道や(クラブが最初に立ち上げた)特別調査委員会の調査結果が公開されています。そちらに書いてある事実を、そのまま我々が認定しているのか、認定していないのか、そのうちの一部しか認定していないのかは、また別の話です。ご質問いただいたように、対象事実を踏まえて、少しひどいのではないか、けん責というのはどうか、とお感じになられる基礎となる事実、メディアの皆さんが想定している事実と、(特別調査委員会が最終的に認めた事実とJリーグによるヒアリングを踏まえて判断した)Jリーグ側で認定した事実には差がある可能性があるということは申し上げたいと思います。
さらにFC町田ゼルビアは(組織としての)自浄作用がなかったと我々の中で考えています。同じことをすれば、2回目は当然同じような処分にはならないわけです。そういったことも踏まえて処分を検討しました。

Q:(クラブが公開した最初の)調査報告書では対象事案の時期が2024年までとなっていたかと思いますが、今回(Jリーグが認定した)対象事案も2024年までの期間という理解でよろしいですか。またJFAへ通報があった2025年2月以降も、同様の行為(不適切な発言等)が確認されたなどがあったかどうかも教えてください。

A:杉本 通報後の事案についてはありません。

Q:プレスリリース内の「4.懲罰量定に際し参考とした事情」に記載の(3)特別調査委員会というのは、クラブが週刊誌の報道を受けて設置した調査委員会のことを指しているのでしょうか。

該当箇所抜粋
(3)本件クラブは、本件違反行為を含む調査対象となった黒田監督の言動に関し、弁護士で構成される特別調査委員会により調査を行った。しかしながら、同委員会による当初の関係者のヒアリングに本件クラブの顧問弁護士を同席させ、黒田監督とヒアリング対象となるチーム関係者が通報内容に関してやり取りすること等を規制しなかったことにより、本件クラブが黒田監督を守ろうとしているとの印象を関係者が持つに至っている。これらは調査対応の不備と言わざるを得ず、チーム関係者の多くに率直な供述を躊躇させる結果となり、真相解明に支障をきたした。

A:杉本 少しわかりにくいため、改めて事実関係を申し上げますと、まず、週刊誌報道を受けてクラブが設置した特別調査委員会がヒアリングを当初実施した際にはクラブの顧問弁護士が同席していたことを確認しています。週刊誌報道を受けて公開された調査報告書は、顧問弁護士が同席したヒアリングも材料として作成されたものと認識しています。一方で、その後、実施された調査に関しては、最初の特別調査委員会と同じ(外部の)弁護士の先生方が対応されていますが、顧問弁護士は同席していないという違いがあることを確認しています。そのため同じ調査委員会でも前提が異なることをご理解いただければと思います。

Q:プレスリリースで登場する特別調査委員会というのは、クラブが週刊誌報道を受けて設置したものと同一と考えて問題ないでしょうか。また、特別調査委員会による調査が、真相の解明に支障をきたしたと書いてありますが、今回の懲罰を決定することへの影響をどのように捉えていますか。

A:杉本 プレスリリース「4.懲罰量定に際し参考とした事情」の(3)に記載のとおり、週刊誌報道に対応する特別調査委員会に本件クラブの顧問弁護士の方が同席されていた点は、Jリーグとしては調査の初動として非常に不適切であったと考えています。
ヒアリングを受ける方にとって、顧問弁護士の先生が同席されていると、自身の回答内容が不利益に用いられるのではないか、と感じられてしまうことがありました。(週刊誌報道に対する調査以降)特別調査委員会は、顧問弁護士を同席させず、独立してヒアリングが実施されたことを確認しています。しかし当初の調査で顧問弁護士が同席していたため、ヒアリングを受ける方々の中には、その後も顧問弁護士がいると(思ったかもしれません)。ヒアリングを受ける方々からすると、目の前に複数並んだ弁護士のうち、どの方が(外部の)特別調査委員会の委員で、どの方かクラブの顧問弁護士なのか、分かりづらいこともありえますので、そのような誤解が生じていた可能性は否めないと考えています。
それによって、(その後の特別調査委員会の調査やJリーグが自ら実施した調査に対しても、たとえ顧問弁護士がいなかったとしても)ヒアリングに真摯に答えるということが難しい状況が生まれた結果、真相解明に支障をきたした、そのような趣旨で記載しています。

Q:一方、(2)で記載されている「黒田監督は、本件違反行為の存在を基本的に認めておらず、真摯に反省しているとは言い難い」という記述について、こう認定した根拠は何でしょうか。

A:杉本 Jリーグとして黒田監督にヒアリングした結果や、(クラブによる)調査委員会での調査結果としても、ご質問のような認定がなされています。

Q:認定というのは、(本件違反行為の存在を)認めていないということですか。

A:杉本 そうです。発言を認めていない、と調査報告書にも記載されているということです。「記憶にない」とか「言っていない」などです。

Q:けん責という処分はどのぐらいの重さなのでしょうか。

A:杉本 今回の(黒田監督に対する)懲罰はJリーグの懲罰規程のうち個人に対する懲罰における4段階のうちの一番目にあたります。

事務局より補足
Jリーグ規約の条項は第142条の第2項に記載されています。一番量刑が重いのが公式試合に関わる職務の停止、その次が出場の資格停止、その次に罰金、続いてけん責となります。

Q:例えば人前で叱責するなど、モラルハラスメントといった行為についてはどうだったのでしょうか。

A:金山 認定していません。ハラスメントをどう捉えるかですが、いわゆるパワーハラスメントといったときに、我々法律家が考えるのは、不法行為に該当するような、損害賠償請求ができるような違法行為を念頭に置いています。今回の行為については、その不法行為性まで認められるかどうかで、完全に認められるというところに至らなかったと、協議の結果認定しました。パワーハラスメント、モラルハラスメントと、カテゴリーで考えるよりも、一定の違法性がある行為に該当するかどうかで検討し、ハラスメントまではいかない。ただ、先ほど青影執行役員からも発言がありましたが、不適切な発言とか、暴言には少なくとも該当すると認定しています。

Q: 造反者という表現がありますが、暴言は具体的にどのような言葉だったのですか。

A:金山 個別の発言については回答を控えさせていただきます。理由としては、その発言が誰に対して行われたかが当事者間では分かりえるからです。誰に対するどういったところが認められたかということは開示しないという方針です。その点はご了承いただければと思います。

Q:精神に異常きたす方が出ていたり、大量にチームを離れたり、監督が社長との関係性を持ち出して他者を威圧するような発言があったりと、私が聞く限りでは、聞くに堪えない発言も飲み会の場であったと聞いています。それを踏まえても、パワーハラスメントもモラルハラスメントもないということなのでしょうか。

A:金山 そういったことを(取材を通して)お聞きになられているかもしれませんが、そうした事実があったかどうかも含めて回答を控えさせていただきます。

Q:そうした発言を公にできないということですが、Jリーグは調査をした中で、どのように感じられたのでしょうか。

A:金山 ご質問いただいた「そういった発言」が(プレスリリースに記載されているJリーグの認定事実とは)共通認識ではない可能性があると思っています。

Q:造反者といった表現を用いて排除する意図を持った発言や、練習中に選手およびチームスタッフの前で特定のコーチに対して大声で怒鳴る行為に関して、どう捉えているのでしょうか。

A:金山 例えば発言があったとして、その言葉が(具体的に)何だったかの認定をしています。それはどのようなシチュエーションで、例えば、どのような人の前で、どのような場で行われたか、時間的にどうだったのか、どのような目的だったのか、ということまでを考え、認定したうえで判断しています。ご質問者さまがお聞きになった状況と、我々が認定した事実が異なる可能性があります。

Q:2021年12月に公表された過去の懲罰事案では、クラブが調査不十分として、消極的な隠ぺいに当たるとJリーグ側が説明していたと思いますが、今回の件については、どのような受け止めをしているのでしょうか。

A:杉本 クラブから届いた一次調査報告書の段階では、追加の調査をしなければならないことを強く感じ、我々としてクラブに対し(再度調査を)依頼させていただきました。その際に、調査手法に関しても相当数の助言を行いました。加えて、再度提出いただいた調査報告書を受け、さらに、我々が独自にヒアリングをした方が良いのではないかと判断し、主要な関係者にJリーグとしてもヒアリングをさせていただきました。「のべ12回」と申し上げたとおり、一人の方に複数回のヒアリングも含めて事実確認を試みたうえで、その内容をもって裁定委員会に諮問しております。結果的に、経緯全体をみたときに隠ぺいとまではあたらないと考えていますが、本当にそういうことがなかったかは、(主要な関係者へのヒアリングなどを通じ)慎重に確認させていただきました。

Q:プレスリリースには「調査対応の不備と言わざるを得ず」、という文言がありましたが、調査した報告書の造反者のくだりは、当初(公表された)FC町田ゼルビアの調査では「事実はなかった」と否定していますが、今回の調査ではJリーグとしては認定しています。(当初公表した)調査結果の不備に関してはどのように捉えていますか。

A:金山 ことし4月の段階で(最初の)特別調査委員会の報告書が公開され、その後、Jリーグ宛に提出された報告書を改めて確認した結果、そう結論付けた理由となる根拠の記載や、記載内容のさらなる深堀りをしていただいた方がいいのではないかと判断し、リーグから再度の調査依頼をさせていただいたのは先ほど申し上げたとおりです。その後、再提出として10月末に受け取った調査報告書は、新たな調査結果、内容、判断が(当初の調査結果と比べると)付け加わっていたり、変更されていたり、そのままであったりしました。当初は(既出のとおり)顧問弁護士が同席している事情もありましたので、(再提出を作成した特別調査委員会は外部の方のみで構成されていたものの基本的に顧問弁護士以外は同じメンバーであったことも踏まえ)調査結果の信用性や、違う人間がヒアリングしたら違う回答があることもありえましたので、Jリーグから主要な関係者に聞き取りいたしました。結果としてJリーグからのべ12回のヒアリングを行い、これらをもって判断できるだろうという結論となりました。

Q:12回ヒアリングを実施し、対象の人数を教えてください。

A:金山 11名です。

Q:認定事例に記載の造反者との言葉、怒鳴る行為、懇親会の件ですが、今回被害の訴えはあったけれど、認定はできなかったなどのリーグ側の把握は。

A:金山 通報内容は3つに限られるものではありませんでした。

Q:懲罰理由の中で、選手、コーチまたはスタッフに対して行った暴言、ないし不適切な指導が認定されているわけですが、JFAのスポーツにおける暴力、暴言、ハラスメントのところに(※)、精神的な攻撃や人格を否定するような発言と記載があり、その中にひどい暴言や名誉棄損だとかは、スポーツにおけるハラスメントあたる事例として挙がっています。法的には難しいということでしたが、スポーツにおけるハラスメントにもあたらないということですか。

A:金山 今回認定した事実ではハラスメントにはあたらないと判断しました。

※JFA「スポーツにおける暴力・暴言・ハラスメント・差別とは」
https://www.jfa.jp/respect/about_harassment.html
厚生労働省による「職場のパワーハラスメント」の要素のいずれも満たしたうえでパワーハラスメントの代表的な6類型を示した指針に基づき、スポーツの現場に当てはめて示されたもの

Q:暴言だが、そこまでひどい暴言ではないということですか。

A:金山 その通りです。

Q:先ほど、暴言の内容は特定されてしまう懸念があるので公表できないということでしたが、造反者という表現についても、FC町田ゼルビアが公表した調査報告書を読むと、ほぼ誰なのか、推測できると思うのですが、ここで公開と非公開の判断が異なっている理由は何でしょうか。

A:金山 ご質問いただいた点も、もしかすると前提の事実が異なるかもしれません。「造反者」という言葉を(監督が)誰かに向けて言った言葉なのか、そうではないのか、というところで、4月にクラブの特別調査委員会が調査し公表した報告書に書いてある内容が、例えば「●●に向けて」と書いてあったとしても、我々が調査をして認定した事実はそうではない可能性がある、ということをご認識いただければと思います。

Q:不特定多数に言った可能性があるということですか?

A:金山 その通りです。

司会
今回対象の2クラブより、本懲罰決定を受けた発表がクラブの公式ホームページに掲載されております。以上を持ちまして説明を終了いたします。

2025年12月24日
プレスリリースの表記の一部を訂正しました。

5.適用条項
訂正前)第142条〔懲罰の種類〕第1項

訂正後)第142条〔懲罰の種類〕第1項、第2項

 

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