2026年1月28日、東京・青山。国際連合大学ウ・タント国際会議場で開催された「Jリーグ サステナビリティカンファレンス2026」に集まったJクラブ関係者、パートナー企業の担当者、自治体関係者たちの熱気は、冬の寒さに負けないものだった。

1993年、「豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達への寄与」という理念の下、「スポーツで、もっと、幸せな国へ。」というJリーグ百年構想を掲げ、ホームタウンで多様な活動を推進しているJリーグ。そこから30余年。その「豊かなスポーツ文化」の土台とも言える自然環境そのものが危機に瀕している。急速な気候変動を前に、「サッカーができなくなる未来」をどう防ぐか。議論の軸となったのは、Jリーグが2026年から新たに取り組む「スポーツポジティブリーグ(Sport Positive Leagues/SPL)」だ。順位表というサッカー文化に馴染む形式を通じ、クラブの取り組みを“競争”ではなく“共有と改善”へとつなげる。その導入は、リーグやクラブがサステナビリティに向き合う姿勢を示すだけでなく、地域社会の行動変容を促す装置として期待されている。
この世界基準の施策である「SPL」とどう向き合っていけばいいのか、「サステナビリティカンファレンス2026」ではさまざまな議論が交わされた。
■スポーツが直面する「危機感」と「世界基準」
(Jリーグチェアマン 野々村芳和/日本財団 笹川順平理事長 挨拶)
冒頭、Jリーグチェアマン 野々村芳和が登壇。まず言及したのは、スポーツが成立する前提となる自然環境の変化に対しての危機感だ。

続いて、日本財団の笹川順平理事長が登壇。日本財団が取り組んできたスポーツ事業と社会課題解決の関係性を紹介しながら、スポーツ、とりわけ地域に根を張るJクラブが果たし得る役割の大きさを語った。

■「Progress over Perfection」:完璧を求めるよりも、みんなで一歩でも前へ
(主催者挨拶:Jリーグサステナビリティ領域担当 執行役員 辻井隆行)
主催者挨拶として登壇したのは、Jリーグのサステナビリティ領域担当執行役員であり、「SPL」の旗振り役とも言える辻井隆行。環境問題に対してサッカー界として何ができるのか。一例となるのが「SPL」だという。

「簡潔に『SPL』を説明すると、サッカークラブの気候変動に対する取り組みを12の領域に分類し、点数をつけて可視化するとともに順位をつける、というもの。本日の基調講演スピーカーであるクレア・プールさんが創設し、イングランドでは2018-19シーズンから実施されています」
■基調講演①「Sport Positive Leagues とは」
(SPL創設者兼CEO クレア・プール氏)
クレア氏は2018年に「スポーツポジティブ(Sport Positive)」を立ち上げ、気候変動やサステナビリティの重要性を訴えるとともに、サッカーを通じてポジティブな変化を促す取り組みを続けてきた人物だ。その象徴的事例がプレミアリーグで2018年から始まった「SPL」。環境に配慮した活動やポイント制度を導入してクラブの取り組みを可視化し、情報共有していくことでさらなる行動を促進していく。これらの活動はメディアや社会から高く評価され、クラブのサステナビリティ意識の向上と環境負荷の削減に寄与している。

■基調講演②「ブリストル・シティFCの取り組み」
(ブリストル・シティFCサステナビリティ部門責任者 ピーター・スミス氏)
130年超の歴史を持ち、現在、英チャンピオンシップ(2部相当)に所属するブリストル・シティFC。ピーター・スミス氏は幼少期からこのクラブを愛し、成人後は選手リクルートからスタジアムの大規模再開発プロジェクトまで、幅広い業務を担ってきた人物だ。そして今、サステナビリティ部門の責任者として奮闘し続けている。その言葉には、現場の葛藤を知り尽くした者特有の重みがあった。

■「Sport Positive Leagues日本版」とは?
では、今季から導入される「Sport Positive Leagues日本版」の特徴とは?欧州での取り組みとはどんな違いがあるのか?Jリーグ サステナビリティ部部長の入江知子が解説する。

<SPL参画の背景>
(1)気候アクションの取り組み価値がわかりにくい
現在、すでに多くのクラブで気候アクションへの取り組みが実施されているものの、個別で行われていることも多く、その取り組みがどういった進捗があるのか、どういう成果を生んでいるのかがわかりにくい。
(2)地域での気候アクション重要性の高まり
各地域で気候変動の影響が顕在化し、気候アクションの重要性が高まってきた。そんな状況で、スポーツの力を生かした取り組みへの期待も一層大きくなっている。
<SPLに参画する理由>
[1]気候アクションの現在地と進捗をわかりやすく把握
SPLは気候アクションの現在地と進捗がとてもわかりやすく把握できる特徴があり、参画の背景で挙げた「気候アクションの取り組み価値のわかりにくさ」を解消できる。とくに、ランキング形式はスポーツ、サッカーファンにとって馴染みがあり、興味・関心を持っていただけるのではないか。
[2]良い事例を学びあい、気候アクションを推進
SPLをきっかけに各クラブが学びあい、地域に合わせてカスタマイズして導入することができれば、より気候アクションを推進できるのではないか。
[3]社会へ発信
SPLというプラットフォームを使うことで、世間への発信力を高め、より多くの方に知っていただけるのではないか。
■パネルディスカッション

Jリーグ辻井のファシリテーションのもと、セレッソ大阪の宮島武志 副社長、ジェフユナイテッド千葉の高橋薫 取締役が登壇。基調講演をしてくれたクレア・プール氏、ピーター・スミス氏も交えたパネルディスカッションでは、「現場の生の声」がいくつも飛び出した。
■特別演説「スポーツ界に期待すること」
(根本かおる 国連広報センター所長)
「気候変動は、国連システム全体にとって『一丁目一番地』と言える最優先課題の一つです」
そんな言葉から特別演説を始めたのは、本カンファレンスにご後援をいただいた国連広報センターの根本かおる所長だ。辻井も語った「Jリーグの発信力」について「大きな期待を寄せている」と語ってくれた。

途中に挟んだ軽食も交えながらの「ネットワーキング」や、気候アクション推進に向けてのグループディスカッション「ラウンドテーブル」も含めると、4時間半の長丁場となった今カンファレンス。Jリーグの誕生が日本のスポーツ文化の「新たな常識」を形づくってきたように、サッカーがサステナビリティを「日本の新たな常識」にする。そのスタート地点として、本カンファレンスは確かな一歩を刻んだ。
<本イベントの詳細レポートは、Jリーグ気候アクションサイトにて掲載しております。>
https://www.jleague.jp/climateaction/report_sustainability_conference_2026.html/
















