【2004シーズンの見どころ】
大熊清監督(現U-19日本代表監督)のもと、閑散とした江戸川球技場や夢の島球技場でJFL、あるいはJ2を戦っていた前身の東京ガスを知る者にとって、ここ最近のFC東京の変化はあまりに劇的である。
2000年のJ1昇格後、最初に変わったのは環境面だった。まず練習場が江東区猿江から小平に移転。江戸川や夢の島、駒沢球技場などに置いていたホームも5万人収容の「味の素スタジアム」に移った。指揮官も大熊監督から現在の原博実監督へ。そして最後にプレーヤーの質的向上が図られるようになった。
かつてJ1昇格の原動力となった藤山竜仁、浅利悟らに代わって、今のチームの中心は、日本代表GK土肥洋一、右サイドバック加地亮、五輪代表のDF茂庭照幸、MF石川直宏ら「代表組」だ。2004シーズンからは下部組織から昇格した将来性あふれるボランチ・梶山陽平、市立船橋(千葉)から入団した超高校級DF増嶋竜也、そしてコンサドーレ札幌から移籍したボランチ・今野泰幸など、若く可能性のあるタレントも加わった。長年「キング・オブ・トウキョウ」の異名を取ったアマラオも去り、新たにオールラウンド型FWのルーカスが加入した。就任3年目となる原監督も「今年の新加入組は質の高い選手ばかり」とかなり満足そうである。
J1参戦後、年間順位も着実に上げてきた。昨年の「年間4位」から、2004年は一気に優勝まで持っていきたいところだ。「J1は短期決戦なので、スタートダッシュが肝心。まずは第1ステージ優勝に狙いを定めてやっていきたい」と指揮官はテーマをズバリ語った。
これまでの戦力と新たな選手たちがうまく融合すれば、その大きな目標達成も夢ではない。けれども、今年のFC東京にはハードルがある。各年代の代表チームの活動がひっきりなしにやってくることである。
A代表はご存知の通り、2006年ドイツワールドカップアジア1次予選が毎月のように行われる。U-23代表も3月のアジア最終予選の後、強化試合・海外遠征が頻繁に組まれる予定だ。さらにU-19日本代表もアジアユース最終予選(マレーシア)を9月に控える。期待の梶山、増嶋でさえ、チームを離れてしまうのだ。「今年はワールドカップ予選、五輪予選があり、チーム作りは簡単ではない」と原監督も嘆く。
実際、3月13日の開幕戦にしても、茂庭や石川、今野がチームにいない。彼らは石垣島キャンプにもほとんど参加できず、新たなコンセプトや戦術を理解するチャンスを得られなかった。そんな代表組とそれ以外の選手たちをいかに融合していくか……。それはかなり難しい問題だろう。原監督の手腕が問われるところだ。
FC東京が初タイトルを獲るために、外国人選手の活躍は欠かせない。ジャーン、ケリーはすでにJリーグ経験を重ね、チームも熟知しているが、一番のカギになるのはルーカスだ。アマラオは長身でポストプレーに長け、イザという時にヘッドでゴールを奪ってくれた。が、ルーカスはアマラオとタイプが違う。ポストプレーだけでなく、ドリブル突破、サイドに開いてのチャンスメークなど幅広い動きのできるストライカーなのだ。
ある意味、これまでのFC東京は「アマラオを軸にしたチーム」だった。しかし、その彼はもういない。新戦力のルーカスを生かしつつ、周りをあわせていくのか。それもFC東京躍進のキーポイントになるだろう。
「ニューFC東京」がどんなサッカーをするのか。これまで積み重ねてきた「攻撃サッカー」がどの程度、完成度を高めていくのか。首都・東京を代表するこのチームの戦いぶりは本当に楽しみだ。
【新戦力・注目のキープレーヤー】
今年のFC東京は9人の新戦力を補強した。前述の通り、質の高い選手ばかりだ。
私が最も注目しているのは、五輪代表の今野。東北高(宮城)から札幌を経て、東京へやってきた。それも札幌時代の恩師・岡田武史監督の指揮する横浜F・マリノスからの誘いを蹴って、あえてこのチームを選んだのだ。本人にそのあたりの理由を聞いてみると「これからのチームだと思ったから。自分がFC東京を優勝させたい。そのためには、まずレギュラー獲得ですけど」と謙虚な物言いを見せた。
今野の実力は昨年末のワールドユース(UAE)を見れば一目瞭然だろう。キャプテンとして若いチームを引っ張った彼は、ピッチ上を走り回って攻守に幅広く絡むとともに、闘争心を全身で表現していた。あまり積極的に声を出すタイプではないが、プレーで周囲を鼓舞できるリーダーなのだ。
その今野とコンビを組むだろうといわれるのが、18歳の梶山。U-19日本代表の攻守の要で、スケールの大きさ、展開力、ミドルシュートの威力は稲本潤一(フラム)に匹敵する。汗かきタイプの今野と展開力の梶山がうまく噛み合えば、FC東京の新たなサッカーが生まれるかもしれない。とはいえ、この若い2人にこれまでの宮沢、三浦文丈というボランチがすぐポジションを譲るはずがない。三浦も「まだまだ自分はやれる。若い選手には負けたくない」と激しい闘志をも剥き出しにする。彼ら4人のボランチ競争は大いに興味深い。
超高校級DFといわれた増嶋も、忘れてはならない存在だ。市立船橋(千葉)の時代には、高校選手権優勝、全日本ユース優勝とタイトルを次々と獲得。ジーコジャパンの練習試合にも出場し、海外でプレーする選手たちを守りきった経験もある。彼のクレバーな守備は誰もが評価するところだ。そればかりでなく、鋭い読み、的確なポジショニング、状況を見ながらの攻撃参加と、従来のDF像とは大きく違ったプレーを随所に見せる。さらに甘いマスクで女性ファンの心をつかんで離さない。彼はまさしく「新世代のDF」なのだ。茂庭が五輪予選で開幕ゲームを不在にするため、増嶋のスタメンも十分にありうる。
そしてルーカスにも大いに注目したい。アマラオの後釜として、フランスリーグ1部のレンヌからやってきたブラジル人FWは183cmとまずまずの長身。スピードと技術を兼ね備えている。彼がどんな働きをするかでFC東京の今シーズンが決まる部分もあるだけに、彼の一挙手一投足から目が離せない。
【開幕時の布陣予想】
3月13日の開幕ゲームは、アテネ五輪アジア最終予選・日本ラウンドと完全に重なる。FC東京は主力となるべき茂庭照幸、石川直宏、今野泰幸の3人を欠くことになる。
特に影響が大きいのは茂庭の穴。原監督は石垣島キャンプなどを通じ、ジャーンのパートナー探しに務めていたが、どの選手にも一長一短があり、最適な人材はまだ見つかっていない。しかし原監督は新人の抜擢が大好きだ。浦和の指揮を採っていた98年にも、新人だった小野伸二(フェイエノールト)を開幕スタメンに抜擢。周囲を驚かせた。今回も増嶋の先発は大いに考えられる。
彼自身、石垣島キャンプの途中からU-19日本代表の中国遠征へ出かけたこともあり、周囲とのコンビネーションは今ひとつだが、DFとしての潜在能力の高さは折り紙つき。翌週には茂庭も戻ってくるだけに、Jリーグデビューを飾りたいところだ。
ルーカスと阿部のコンビネーション、日本代表で全く試合に出なかった加地のコンディションなど不安材料はいくつもあるが、何が飛び出すのか分からないのがFC東京の面白味。つねにチャレンジャー精神でのぞんでもらいたい。
2004.2.27 Reported by 元川悦子
以上
F東京鹿児島県薩摩町キャンプレポート
2004シーズン 開幕直前・クラブ別戦力分析レポート
J’s GOALニュース
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