6月19日(土) 2004 J1リーグ戦 1stステージ 第14節
広島 1 - 1 新潟 (15:34/広島ビ) 入場者数 10,450人
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「サンフレッチェの選手、スタッフ、フロント、サポーター。そして、日本の皆さん、本当にありがとう」。
試合後、最後の広島での試合を終えたセザール・サンパイオが、サポーターに最後の挨拶を行った。小野監督、下田選手会長から記念品・花束を受け取った後、彼は少し驚いたような表情を見せた。歩いてきたのは、新潟のMF・山口だった。横浜フリューゲルス時代の盟友であり、サンパイオが「もっとも尊敬している友人の一人」と語っていた山口が、大きな花束を持って近づいてきたのである。サンパイオは、山口の顔を見ると、表情が崩れた。そして、どちらからともなく、抱きあった。横浜F時代に4年間共にプレーし、最後に天皇杯を獲得する栄光を共に味わった盟友。昨年は、昇格を戦うライバルとして中盤で激しいバトルを繰り広げた2人。サッカーを通じて心を通じ合った者同士の間には、語り尽くせない想いが行きかっていた。
「私にとって、この試合は特別。サンパイオのために、どうしても落とせない」。指揮官・小野剛の熱い想いは、広島の選手にももちろん伝わっていた。しかしその想いが強すぎたのか、「勝ちたい」が「負けたくない」に変換されてしまい、広島本来の「前からボールを奪いにいく」サッカーではなく、自陣前にブロックをつくり相手の蹴ってくるボールを跳ね返すサッカーになってしまった。しかし、これは新潟の反町監督にとっても、想定外のこと。新潟は思わぬ形でボールを保持させられてしまい、得意とする縦に速い攻撃が全く機能しなくなってしまった。互いにとって予想外かつ不本意な前半は、サポーターにとってもエンタテイメントとして、とても満足できない展開。ゴール前のシーンは少なく、スペクタクルなシーンもほとんどないまま、45分が過ぎた。スタンドは、ブーイングに包まれた。
後半、小野監督は中山を前線に投入。前からのプレスをもう一度徹底させ、「気持ちをもっと見せろ」とゲキを飛ばした。中山は、その指揮官の想いをのせて、前へと走る。が、それでも前半と大きく変わったところはなかった。
しかし、たった1つのプレイが、この試合を突如として、スペクタクルなものとする。76分、寺川のCKをニアで合わせた安のボールは、必死で頭を出す駒野の向こうを通り、ポストに当たってネットに沈んだ。沈黙するビッグアーチ。新潟のサポーターは歓喜を爆発させ、看板を超えて走ってきた安を祝福する。その直後。それまで「負けたくない」という気持ちに縛られていた広島の選手たちは、何かから解き放たれた。
「このままで終われるか!」
「サンちゃんのホームラストゲームなんだぞ!!」
怒りにも似た感情が、ピッチで爆発した。サンパイオが競ったボールを、高校生Jリーガー・前田が拾い、森崎浩司にパス。ドリブルから、中山につなぐ。中山、勝負を挑む。ボールがこぼれる。駒野が拾った。横パスだ。前田がいる。新潟、囲い込む。しかし、ボールを失わない。アンデルソンが、安が、自らの誇りにかけて、この17歳を止めにいく。前田は粘る。服部が飛び出す。前田、強引に前に出す。服部、強い意志を込めて左足を出す。ドリブルだ。ペナルティエリアの中を切り裂く。服部、シュート!! 鈴木がはじく。が、服部・前田・駒野・中山の祈りに似た気持ちがこもったボールは、森崎浩司の前に吸い寄せられた。右足だった。いつもなら、得意の左足に持ち替えるところだが、この時の森崎浩司に、そんな想いはまったくなかった。強いシュートは、カバーに入ったDFの身体に当たって、そのままゴールに吸い込まれた。
同点!!!!!
森崎浩司は、誰かれともなく抱きあった。そして、最後にサンパイオが笑顔で森崎浩司を迎える。2人は、強く抱きしめあった。
広島のイレブンは、まさに眠りから覚めたがごとく、前に飛び出すようになった。前田のドリブルと中山のポストプレーがアクセントとなり、彼らが前で頑張ることで、森崎浩司や服部のアグレッシブな動きが「点」ではなく「線」としてつながり始めたのである。ロスタイム、中山のヘッドの落としを受けた服部がトリッキーなロビング。そこに前田が飛び込む。ニアで合わせたボールは、ポストをたたく。その直後、今度は中山のポストプレーのボールを受けた前田がシュート。こぼれに森崎浩司が飛び込み、シュート!! 再び、ゴールネットをゆすったが、オフサイド。
「サンちゃん」に勝利を捧げるために。
想いを強くして戦った紫のイレブンの願いは、通じなかった。
次節、広島は磐田と対戦する。この試合、磐田にとって1stステージの優勝がかかった、日本中のサッカーファンが注目する試合である。しかし一方で、6年半にわたり「日本のサッカーに多大な貢献をした偉大な選手」(山口)セザール・サンパイオの、日本でのラストマッチとなる。
サンパイオに勝利のプレゼントを。1年半、サンパイオに薫陶を受け、たくましく成長してきた紫の若者たちは、「今度こそ」の想いを強くしていた。
「磐田戦は、思い切りぶつかる。最初から飛ばして、勝ちに行く」ピッチでいつもサンパイオに怒られ続けた森崎浩司は、強い調子で語った。
以上
2004.06.19 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
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