夜8時キックオフというのに気温は25度を超え、じめじめとした暑さの中で行われたvsセルビア・モンテネグロ代表戦。日本代表のキリンカップ優勝が決まり、同時にジーコジャパンが初タイトルを手にしたこの大切な試合で、勝利のヒーローとして、試合後報道陣に囲まれることとなったのは“意外にも”遠藤保仁(G大阪)だった。
圧倒的なゲーム展開を期待するサポーターの気持ちとは裏腹に、攻守が激しく入れ替わり拮抗した試合内容となっていた中で、後半3分に値千金のゴールを決め、この試合唯一の得点者となったのだ。
遠藤はこれが代表3得点目。代表での出場は19試合目で、ボランチというポジションでは決して少ないゴール数ではない。彼のミドルシュートやFKはJリーグでも充分認知されていることから、得点したことに不思議はない。ただ、遠藤自身が「目立ちたいとは思わない」と普段から話しているように、そのプレーは周りの選手を献身的に生かそうとする「黒子」的なイメージが強く、この試合で遠藤を「点を取る選手」として予想していたサポーターは少なかったのではないだろうか。
しかし、終わってみればシュート数もFW陣よりも多い4本。積極的にゴールを狙う一方、DF陣とうまく連携して無失点にも貢献、まさに攻守にわたる活躍だった。
試合後、矢継ぎ早に質問が飛ぶ会見場で、いつもの朴訥とした語り口でゴールについて「いいアピールになったと思う」と話した遠藤。しかしその中で印象的だったのは「イナ(稲本)がいないからどうとか言われたくなかった」ときっぱりと口にしたことだ。
ユース年代からの付き合いで、同じG大阪ではボランチを組んでいた仲間。怪我に苦しむ「友人」の分も頑張りたかったとの意味もあるだろうが、それ以上に「もう代役とは言わせない」という強い気持ちが伝わってきた。
遠藤がこんなふうに気持ちを表すことは珍しい。いつも自分を「マイペースが売り」と表現する。そして周囲が受ける彼の印象も全くその通りで、目の前のことを着実に、飄々とこなしていくイメージ。
昨年6月の代表での初スタメン以来、レギュラーともいえる活躍が続いていた矢先、小野、稲本、中田、中村ら海外組で形成される「黄金の中盤」が帰って来ると、一転サブへ回る形になった時も、さぞ悔しい思いを抱いているだろうとその話に水を向けてみても「僕もあの中盤なら見てみたい(笑)」と、こちらが拍子抜けするくらいの反応だった。
稲本との付き合いの長さを考えれば、お互いを意識しあい、ライバル心も持っていて当然のはず。内心は様々な思いがあったかもしれない。しかし彼は少なくとも、それを言葉にするタイプではなかった。
けれど振り返ってみると一昨年11月のフル代表デビュー以来、以前は「無欲」とも表現された遠藤が本当に少しずつではあるが変化を感じるときがあった。「代表を意識してサッカーをしていたことはない」と言い続けてきた彼が、代表デビューのアルゼンチン戦の後には「もっと世界の厳しい中でやりたいと思った」と語り、最近では、あまり口にしなかった欧州組とのレギュラー争いについても「使われれば負けない自信はある」と言ってのけている。高いレベルでの経験を積み、徐々にもっと、もっとという欲が出てきたのか。
それならこれからの日本代表にとって、遠藤はもっと心強い存在になる。そして遠藤はこのキリンカップでチャンスを掴み、自身のプレーによって「欧州組不在」による周囲の不安を振り払ってみせた。
さらに自信を深めることとなった遠藤が、今後どう頼もしく変化していくのか期待をもって見守りたい。
「目立たなくてもいい」「自分が一番にとは思わない」何年も変わらず自分のサッカー観をこう話す遠藤だが、必ず後に続く言葉がある。「それより、絶対に必要だと言われる選手になりたい」。
2006年、遠藤保仁は日本代表に絶対に必要な選手となっているか。
以上
2004.7.13 Reported by 高木聖佳
J’s GOALニュース
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