7月29日（木）レアルマドリード ジャパンツアー2004 市原 − レアルマドリード（19:00KICK OFF/国立）
----------
「市原はレアルマドリードではないし、ジダンがいるわけでもない」

　ファーストステージのある試合後、オシム監督は選手たちにそう言って戒めたという。世界各国の代表クラスの選手が集まる強豪チームであるレアルマドリードと市原は対極にあるといってもいい。

　市原は突出した能力を持つ選手を多く擁しているわけではない。だからこそオシム監督はサッカーの基本である≪走力≫の質を高め、選択肢のなかからベストなプレーを瞬時に選べるように常に神経を研ぎ澄ませることを市原の選手に要求した。その結果、市原は≪考えて走るサッカー≫を身につけ、昨シーズンはファーストステージ3位、セカンドステージ2位と健闘した。

　しかし、今シーズンのファーストステージは7試合の引き分けが響いて7位。浦和と対戦したナビスコカップのグループリーグ第5節と第6節はいずれも逆転負けを喫して、決勝トーナメントには進出できずに終わった。2試合とも浦和の逆転弾は混戦に近い状況で、守備の人数が決して足りなかったわけではない。ボールをどういうふうにクリアするかという処理の仕方、ボールを持った相手選手に対するプレスのかけ方に甘さがあった。集中力を切らさずにベストなプレーを遂行するということができなかったのだ。

　レアルマドリード戦は日本代表選手の茶野、U-23日本代表選手の阿部が不在で、守備力はダウンしている。だが、ここでどんな守備ができるかという点は、セカンドステージに向けて重要なポイントになる。市原はセットプレー時の失点が多い。GKの櫛野に、優れたプレースキッカーが多いレアルマドリードについて聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「相手がどんなチームでも、自分にとって1試合は1試合。もちろん失点しないように頑張ります。でも、相手にはうまい選手が多いから、やられてしまうかもしれない。それもまた経験だから、その経験を今後に生かさなくてはいけない」

　オシム監督いわく「壊れたビデオデッキのように」同じように失点を繰り返してしまうという市原の課題。レアルマドリード戦は攻め込まれる時間が長くなることが予想されるだけに、一つひとつの場面の対応をきっちりと行ない、その経験を身体に叩きこんでほしい。

　また、市原は攻撃面では以前から勝負どころで追加点が取れないという課題を抱えていた。今シーズンは対戦相手にさらに研究されて、2列目以降の選手が飛び出すスペースを消されて苦戦していた。前述のナビスコカップの2試合をケガで欠場し、別メニューが続いている坂本は、ファーストステージ終了後にこんなことを言っていた。

「レアルマドリードが相手なら、引かれて守られるということはないでしょう。パスをどんどん回されて攻められるだろうけど、そこでどうやってボールを奪って攻めていくのかが大事になると思いますよ」

　引いてスペースを消して守るのか、中盤で激しくプレスをかけて守るのか。対戦相手の守備のやり方がどうであれ、的確に対応して攻め、必要な≪1点≫を奪う。それができるレベルにまで攻撃力を高めなければ、悲願の初優勝達成は望めない。

　27日の記者会見で、オシム監督は「この試合で学べるのは対戦後になります。うちはやれることをしっかりやって、全力で走って戦うだけです」と語った。タレントが揃う強豪チームを相手に市原が勝てる術は何なのか。集中力を切らすことなく、選手一人ひとりが味方をサポートして惜しみなく走り、自分の持てる力を最大限に発揮することだったはずではないのか。市原にとってレアルマドリード戦は自分たちがプレーするうえで何が重要なのか、オシム監督から指導を受けた大切な基本を再確認する一戦となる。

以上

2007.07.28 Reported by 赤沼圭子