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【J2:第42節 大宮 vs 水戸 レポート】大宮、完勝。涙の昇格(内定)(04.11.20)

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11月20日(土) 2004 J2リーグ戦 第42節
大宮 3 - 1 水戸 (14:03/大宮/10,546人)
得点者:'46 森田浩史(大宮)、'57 トゥット(大宮)、'71 バレー(大宮)、'89 オウンゴ−ル(水戸)
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 金澤慎が目を真っ赤にしてインタビューカメラの前に立ち、涙声で質問に答えている。気丈に誠実に、真摯に答える姿は、ピッチ上に君臨していた同一人物とは思えない繊細さを漂わせる。

「2年前は大分に大宮で決められて悔しかったですし、いつか逆の立場になりたい、と思っていました。本当に気持ちいいです。大宮の昇格を見せる事ができてうれしいです。お客さんもたくさん来てくれたですし、地元でしたしね」(金澤)

 試合に出る事を優先させて大宮ユースを選んだという金澤の実家はスタジアムの近隣にあるという。まさに生粋の大宮育ちの選手だ。

 その金澤とともに大宮の中盤をまかされ、昇格(内定)に貢献したディビッドソン 純マーカスは「泣かないと思っていたんですが、声援を聞いていたら泣けてきて、スタンドにいる両親を見たら涙が止まらなくなった」と、ひとしきり泣いた後のさわやかな顔で記者からの問いかけに答えた。

「金澤とマーカスには『ボランチというチームの心臓に当たるポジションをJ1とJ2でこの若さでプレーする選手はいないぞ』と話した。そこのポジションを彼らがいいと思ったから使った」(三浦俊也監督)

 夏以降の大宮の強さを支えてきたこの21歳のボランチコンビは、昇格のかかった大一番で普段と変わらないパフォーマンスを発揮してみせた。

 シーズンも大詰めのこの42節。大宮は昇格(内定)まであと1勝、というところまでたどり着く。そんな大宮と対戦したのは、今季ここまで五分の成績を残す難敵水戸だった。水戸を率いる前田秀樹監督に試合前に話を聞くと「昇格をかける相手との対戦という機会はほとんどない。勝てればうちの選手には最高の経験なんですけどね」と目を光らせていた。水戸の秘策は3ボランチ。栗田泰次郎を真ん中に左に北島義生、右に永井俊太を配したバランス重視の布陣であり、ここ2試合はこれが良く機能していた。

 ともにボランチが見所となる両チームの対戦は、お互いに無理をしないスローペースな立ち上がりとなるが、その傾向は水戸に顕著に出ていた。さすがに異様な雰囲気でのアウェイマッチでは無理はできないという事だろうか。永井の攻撃力を活かしてきた3ボランチは、その永井の攻撃参加がほとんど見られないものとなる。ただ、それでも前半を0−0で折り返せたのは水戸には予定通りの試合展開であり、と同時に大宮の選手にとっても予定通りの試合展開だった。

「前半から水戸は守っていた。ただ、セットプレーから入る気がしてた。後半の開始直後で何となく合いそうな気がした。そしたら当たりました」(安藤正裕:大宮)

 ハーフタイムを終えた選手たちが躍動を再開した直後の46分。左からのコーナーキックがファーサイドの森田浩史をとらえた。大宮お得意のセットプレーからのゴール。前田監督が最も警戒していた形でのゴールだった。

「後半の立ち上がりのいい時間帯に取れた。あれで水戸は出てこなければならなくなった。うちの流れができた」(森田)

 水戸の前半の動きを見ていて、後半勝負なんだろうと考えていた。ところが、この失点が水戸のゲームプランを狂わせる。前田監督は52分に、バランサーとして水戸の守備を支えていた栗田に変えてFWの松浦淳を投入。前の人間を増やす采配を取るが、逆にこれで永井は中盤の底から動けず、水戸の攻撃は停滞する事となる。

「追加点される事を覚悟でシステムを2トップに変えたが、やはり裏目に出た。トゥットやバレーの突破力はすばらしいですから、そういった大宮のいい所が出るようなゲームになっていった」と前田監督は流れを失った采配のミスを認めた。

 攻めたい気持ちが空回りする水戸に対し、大宮は徐々に特徴を発揮。57分にトゥットがスピードを活かしてDFを抜き去ると、そのまま持ち込んでゴールにねじ込む。ここで勝負はほぼ決まった。得点力のない水戸に2点を跳ね返す力はなかった。

 関係者が試合を振り返って「泣きそうだった」と話したのは、71分のバレーのゴールシーン。トゥットがシュートにまで行ける場面だったが、そこで併走するバレーにパスし、彼のゴールをお膳立てしたところだ。

 昇格(内定)を決めた試合後、バレーはベンチ裏に座り込み、人目をはばからず電話を片手に号泣していた。ブラジルの母親との通話だったのだという。今年67歳になるという母親は今でもスーパーでレジを打つ毎日。貧しい生活を送っていたバレーは、その母親と同じスーパーに13歳の時から手伝いに出ていたという。だから学校にも行けず、まともにサッカーを教わった事もなかった。「ただただ、母親に楽をさせたい」。その思いだけでプロとなり日本での大事な試合でゴールを決めた。涙の訳は人それぞれに深い。

 連携ミスによるロスタイムの失点も、昇格(内定)の喜びの前にかき消された。ホイッスルが鳴ったその瞬間、バレー、トニーニョ、奥野誠一郎がピッチ上にうずくまった。トニーニョとともにJリーグでも屈指の「壁」を作り出していた奥野は、98年に当時まだJFLに所属していた大宮へと移籍している。そこから数えて7年目の昇格(内定)に奥野は涙した。

「(ホイッスルの瞬間は)放心状態というか、無になりました」(奥野)

 男泣きの光景は、ピッチ上に限らずスタンドの至る所で見られた。涙の昇格(内定)だった。

 シーズン当初から歯車がかみ合っていたわけではなかった。ただ、低迷する時期に行ったポイントを押さえた補強が成功した。そして能力本意で才能を抜擢する三浦監督の思いきりの良さがチームをここまで導いた。勝つための最大限の努力の結果だった。

 大宮は地域での普及活動に特に力を入れてきたという。それは、同じ日にJ1を制覇した浦和という巨大な先輩よりもきめ細やかに進んでいるという。そうした普及活動の成果か、この日もスタンドには多くの子どもの姿が見られた。大宮とともに育っていく彼らは、いつの日か金澤のようにチームに帰ってくる。そうやって人材が蓄積していく先にあるものがどんな姿になるのか興味深い。

 何はともあれ、大宮は来季よりJ1へと戦いの舞台を移す資格を得た。そんな大宮のみなさん、2位確定おめでとうございます。

以上

2004.11.21 Reported by 江藤高志
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