11月27日(土) 2004 J2リーグ戦 第44節
湘南 2 - 0 水戸 (14:00/平塚/4,780人)
得点者:'59 坂本紘司(湘南)、'81 坂本紘司(湘南)
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「来季に向けて、戦う上田ベルマーレのプロローグをご覧ください」最終戦のキックオフを数分後に控え、湘南ベルマーレの真壁潔代表取締役は、スタンドを埋めたサポーターを前に力を込めた。それから約90分後、真壁の言葉が現実となる。試合終了後、傾きかけた陽射しが照らしたのは、湘南の選手たちの笑顔だった。
苦しいシーズンだった。昨季途中、サミアからバトンを受けた山田松市監督は、シーズンを終えてから選手たちのフィジカルを入念に鍛えなおし、また組織力の強化に努めた。「楽しみですよ」と、開幕直前に指揮官が見せた笑顔が忘れられない。それほど手応えを感じて臨んだシーズンだった。しかし、いざリーグ戦に突入すると、引き分け、あるいは黒星の山を築く。悪循環に拍車をかけるようにケガ人も続出した。思うような采配を振るうことができなかったことも事実だろう。昨年に次ぐ監督交代、そして望月達也監督代行を経て、上田栄治監督にチームは委ねられた。
湘南と同じようにもがき苦しんだのが水戸だった。今シーズンは、昨年から指揮する前田秀樹監督のもと、1年間で築き上げた守備力をベースに攻撃の強化を図っていた。だが攻守に活躍した田中マルクス闘莉王の移籍が影響したことは否めない。持ち味である守備に精彩を欠き、また堅守が揺らぐとカウンターに転じることも難しかった。引き分けが続き、湘南の初勝利が第8節なら水戸も第7節と、こちらも完全に出遅れた恰好となった。
「総括するようベストを尽くしたい」最終戦を前に、上田監督は話した。不本意な2004年を送った両チームにとって、最終戦は今季の総決算であるとともに、来シーズンへの足がかりとしても重要な一戦となる。果たして前半は、とくに水戸が引いて守ってカウンターを仕掛けるサッカーを展開した。また左サイドの伊藤が、高めにポジションをとるボランチの北島と連係しながら突破を試み、チャンスをうかがった。逆に湘南は、攻撃のひとつのポイントである右サイドバックの加藤がマッチアップする伊藤に出足を奪われ、攻撃参加ができない。その分、右サイドの高田が自らドリブルで内に切れ込み、あるいは裏へ積極的に飛び出すなど、しみついているFWの嗅覚を呼び覚まし動き回った。だが両チームとも決定的な場面には至らず、45分を終える。
前半、流れを引き込むことのできなかった湘南だが、選手には確信があった。「後半に入れば相手も前掛かりになってくる。そこにチャンスが生まれる」佐野の予想は的中した。水戸は積極的に前線にボールを放り込む。だが、奪われてからの切り替えが遅かった。パスミスも目立つ。14分に湘南が手にした先制点は、不用意なパスミスを佐野が奪い、抜け出した坂本が決めた得点だった。
先制を許した水戸はFWの吉田と小林を相次いで投入し、追撃を目論む。22分には伊藤に代えて秦を入れ、3枚の交代カードを使い切った。サイドからの攻撃は見られないが、最終ラインから前線へ幾度もロングボールを供給する。流れは徐々に水戸に傾きかけたように映った。だが36分、湘南は坂本が左サイドからドリブルでひとり抜き、ペナルティエリアで相手のファウルを誘う。ボールをセットした坂本は自身の左足でPKを決め、水戸の流れを断ち切った。ここ2試合、終了直前で失点していた湘南だが、最後まで攻撃の手を緩めず、無失点のままホイッスルを聞いた。
「J1やJ2の上位チームは攻守の切り替えがもっと早い。そこを直さなければ上位進出は難しい」試合後、前田監督はチームの弱点を振り返った。リーグ戦初勝利の上田監督も、「勝ちきっていくためには相当の力が必要」と、リーグの厳しさを痛感している。今季、抜け出した上位3チームを除いて引き分けが多いのは、各チームの実力が拮抗し、戦いもタフになっていることを裏付けていると言えよう。勝利も敗北も紙一重である。ただ、この僅かな差をいかに埋め、リードするかが、勝ち抜くためのポイントでもある。
苦しかったシーズンの幕は下りた。両チームともに、視線はすでに来季へと向いている。「苦しい時期があったからこそ得られるいい経験ができた。課題もはっきりしている。来シーズンに繋げたい」この日、2得点をあげた坂本が今シーズンを噛み締めた。「戦う上田ベルマーレのプロローグ」――左足を振り抜き、『序章』の狼煙をあげた坂本だが、来季に思いを馳せたその口元は引き締まっていた。
以上
2004.11.27 Reported by 隈元大吾
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