12月11日(土)2004サントリーチャンピオンシップ第2戦
浦和 1 - 0(PK 2 - 4)横浜FM (19:37/埼玉/59,715人)
得点者:'76 三都主アレサンドロ(浦和)
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「闘莉王は一番手だったし、ギリギリまで我慢してセーフティに蹴ってくると思っていた。ビデオでも見ていたし、自分のイメージ通りに止められた。長谷部(誠)もそう。浦和は1本外していたから追いつきたい気持ちも強い。だからボールを置きに来るのかなと。そのあたりも予想通りだった」
金髪の守護神・榎本達也は声を枯らせつつ、興奮交じりにタイトルの行方を決めたPK戦の様子を振り返った。そしてMVPを獲得した中澤佑二も「今日は本当に苦しい戦いだった。でもウチも少しはしぶといチームになれたかな」と心から安堵した様子を見せた。
PK戦、120分間にわたる高度に意思統一された守備、守から攻への素早い切り替え…。日本サッカー界屈指の知将・岡田武史監督の築き上げた「戦える集団」はあらゆる面でやるべき仕事をこなし、2年連続3回目のJリーグ年間王者の座を手中にした。
横浜F・マリノスの先勝でスタートした2004年Jリーグチャンピオンシップ。11日19時半キックオフの第2戦は、浦和レッズのホーム・埼玉スタジアムで5万9715人の大観衆を集めて行われ、90分間では浦和が1−0で勝利した。これで2試合の対戦成績が互角になり、延長戦へ突入。それでも両者ともにゴールを割れず、最終的にはPK戦の末、粘りと闘志の横浜に軍配が上がった。
迎えた決戦の日。日中こそ穏やかさが感じられたが、夜になると一気に冷え込んだ。キックオフ時は気温12.5度。刻一刻と時間が過ぎていくにつれ、どんどん寒さは増していった。そんな中でも、スタンドを赤一色に染めた浦和サポーターの意気込みは凄まじい。度重なる「We are Reds」のコールが、スタジアム全体に地鳴りのように響き渡った。
サポーターともに第2戦に全てを賭ける浦和・ブッフバルト監督は、満を持してシステムを3−5−2に変えてきた。田中達也をスーパーサブに回し、山田暢久をトップ下に起用。攻撃的布陣で勝ちに来たのだ。
これに対し、横浜・岡田監督は悠然と構えていた。試合前のミーティングもたった5分。「アウェーの雰囲気とか1点リードしているとかを考えず、欲を出さずにやれ。浦和相手にそうそう守れるもんじゃない。点を取りに行くことを忘れるな」とだけ選手に伝えたという。スタメンもGK榎本、DF中澤、松田直樹、河合竜二、ボランチ・上野良治、中西永輔、右サイド・田中隼磨、左サイド・ドゥトラ、トップ下・奥大介、FW坂田大輔、清水範久という前回と同じ顔ぶれだ。
戦前の予想通り、浦和は序盤から猛攻を仕掛けてきた。2トップと両サイドが高い位置をキープ。4トップに近いような形で横浜ゴールに向かったのだ。チーム全体に三都主を使おうという意識があったのか、彼は田中隼の裏側を執拗に突く。2列目の山田も前後左右にフレキシブルに動いて、横浜のマークを混乱させようとした。この流れから開始3分、いきなり平川がフリーでシュートを放った。
第1戦ではペナルティエリア内にこんな穴が生まれるなど有り得なかった。「立ち上がりはレッズサポーターとチームの勢いに押されて慌ててしまった」と松田も言う。それでも最後の集中だけは欠かさなかった。「前半0−0のレッズは一度も勝っていない」という指揮官の与えたデータも選手たちにしっかりと刻み込まれていた。彼らはリスクを冒さず、じっと耐え、数少ない攻撃チャンスを待った。その結果、前半31分にはロングボールを受けた清水がドリブルで抜け出し、強引にシュートを打った。これは狙い通りの形だったが、残念ながらゴールにはならなかった。
怒涛の攻めを続けているのに、どうしても点が取れない浦和。エメルソンは負傷のせいか本来のキレが見られず、度重なるセットプレーのチャンスも生かせない。結局、両者ともにスコアレスのまま45分間が終了。「前半はプラン通り」と岡田監督は満足感を深めた。
後半に入ってもゴールを割れないドイツ人指揮官はしびれを切らし、ついに切り札・田中達也を投入。エメルソン、永井、田中達也、三都主と山田が前線に上がる実質的な「5トップ」で総攻撃を仕掛けてきた。中澤、松田を軸とするディフェンスラインの冷静さは変わらなかったが、たった1つのプレーから「勝利のシナリオ」が崩れてしまう。
後半29分の出来事だった。田中達也からのスルーパスを受け、ドリブルで突進しようとしたエメルソンに、中西が後方からスライディングタックルを仕掛けたのだ。本人は「ボールに行っていたし、あれはファウルじゃない」と断言したが、上川徹主審が出したのは何とレッドカード。真っ赤に染まるスタンドからは大歓声で沸き返った。
中盤でエースキラーの役割に徹していた男が退場を余儀なくされ、数的不利に追い込まれた横浜。失点はその直後だった。三都主のFKは美しい弧を描いてゴールネットを揺らしたのだ。GK榎本もさすがに動けなかった。横浜にとっては「最悪の展開」だと思われた。
ビッグマッチは1点の重みが違う。大サポーターに後押しされた浦和はイケイケになった。この勢いで追加点を奪い、勝負を決めようと一気に前がかりになった。けれども、この日の横浜には「ツキ」が残っていた。後半終了間際、CKから闘莉王が完全フリーの状態でヘディングシュートを放った。高さ、強さ、鋭さ…と、全てが完璧だった。が、皮肉にもボールはGK榎本の正面。このプレーが勝負の明暗を分けたといっても過言ではない。
延長戦に突入する前、岡田監督は「何とかVゴールで勝てるかな」という予感がしたという。実際のところ、満身創痍の横浜攻撃陣にそこまでの力は残っていなかったが、ディフェンスだけは相変わらず硬かった。浦和の一方的な攻撃を完封。ついにはエメルソンを感情的にさせ、退場へと追い込んだ。
ゲームの流れは明らかに横浜に傾いていた。そしてPK戦は案の定、榎本が大活躍。闘莉王と長谷部を止め、4−2で勝利した。最後のキッカー・ボールをゆっくりとゴールに蹴りこんだ瞬間、ベンチ前で見守っていたサブの選手たちが一気にピッチへなだれ込んだ。スタッフと抱き合う岡田監督からも会心の笑みがこぼれている。無言のレッズサポーターと彼らの歓喜の様子が実に対照的だった。
この2試合を通じて、横浜の「堅守」と「諦めない姿勢」は見事だった。久保竜彦や安貞桓という代表クラスのタレントを次々と負傷で失い、戦力的にかなり厳しかった。にもかかわらず、岡田監督は高度に意思統一された守備を完成させ、ワンチャンスでゴールを奪って勝ち切った。坂田、上野、河合といった闘争心に欠ける嫌いのあった選手たちを再生させた手腕も見逃せない。まさに「日本一の名将」に相応しい采配を見せつけたのだ。
MVPを取った中澤の活躍ぶりも目を引いた。以前からの武器だった高さに加え、1対1の強さ、状況判断、フィード、攻撃参加と何をとってもハイレベルだった。今季の彼は日本代表と横浜でのゲームを掛け持ちし、肉体的には疲労困憊だったが、そんな弱さを決して見せなかった。「日本最高のDF」にふさわしい存在に成長したことを、中澤はこのゲームで改めて示した。
以上
2004.12.12 Reported by 元川 悦子
J’s GOALニュース
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