甲府の仕上がりが早い。2月13日のF東京戦、2月22日の東京V戦と2つの練習試合を取材したのだが、これらを見る限りすでにコンディションは整っている印象がある。チーム戦術面でも整理されているようで、すぐにでも開幕できるような状態だった。
甲府のこの仕上がりの早さは、ある意味当然とも言える。というのもJ1、J2全チームの中で最速の1月11日にチームは始動しており、それが完成度を高める一因となっている。
そんな甲府を指揮するのは、2002年シーズン以来の復帰となる大木武監督だ。当時は低迷が続いてきた甲府を戦える集団に作り替え、万年下位のチームを中位にまで引き上げた手腕が思い出される。また甲府のサイド攻撃に安定感をもたらしたのが大木監督だった。ここ数年の甲府の中位安定の戦いの礎を築いた監督と言えるだろう。
例えば倉貫一毅はそんな大木監督のことを「やっているサッカーは変わっていない(だから入っていきやすい)。また2年間いろいろな経験を積まれてきているので、いろいろなもののサイズが広がった感じがする」と述べている。03年には清水でJ1を指揮し、04年には川崎Fでユース年代の監督として育成に力を注いだ。そうした経験は指導者として確実にプラスになっているようだ。
ところで、前述の通り甲府といえばサイドからのダイナミックな攻撃が特徴的だが、その傾向は当然のことながらこの新チームにも引き継がれている。
左右のサイドハーフにボールが出ると、サイドバックが自然な形で前に出てパスコースを作り出す。それに対してディフェンスラインは横にずれてスペースを埋めるか、ボランチの倉貫がカバーに入ってケアをする形になる。そうやって守備面での不安をなくすことで、安心してサイドバックが攻撃参加できているのである。
また、今年の甲府の怖さはサイドだけではないという点にある。大宮から獲得したバレーが利いていて、攻撃面でアクセントをつける結果となっている。ある程度ゴールから遠い位置でボールをもらっても強引にドリブルでつっかけていく積極性で、相手の守備陣形を崩す役割を持っている。
またコンパクトなチームに対しては最終ラインの裏に飛び出る動きができるのも大きい。タイミングさえ合わせてボールが出てくれば、その馬力とスピードで相手DFをふりほどきシュートにまで持ち込む強引さを持っている。そのバレーに対しては藤田健、倉貫、鈴木隼人といった選手からのパスが期待でき、常に前を意識したプレーができそうだ。
ただ、一つだけ残念なのがバレーはそれほどシュートがうまくないという点。GKとの1対1には持ち込むのだが最後の詰めの甘さ、具体的にいうとシュートの正確性に欠けるきらいがある。もちろんそれは大宮時代からわかっていた最大の弱点。周りの選手の運動量でカバーしたいところだ。
大木監督はこのオフ期間中にいくつかのセットを試していたが、バレーとコンビを組む小倉隆史が守備で走り回っており意識改革に成功したようにも見受けられる。
昨シーズンなどは特にそうだったが、中盤に降りてきてパスをさばく役回りをこなす姿が見られていた小倉。守備をこなしつつゴール前にポジションを取れれば、やはり怖い選手だ。バレーの加入によって、小倉の活躍にも期待できそうだ。
【新戦力・注目のキープレーヤー】
上にも書いたが、今季の甲府の最大の補強はバレーである。その突破力だけを見ればJ1でも通用する選手だけに、大宮が放出を決定した直後には「獲得を希望するチームが続出した」(海野一幸社長)とのこと。その争奪戦を勝ち抜いて獲得している。
そのバレーが生きるのが、相手守備網を強引に切り裂くという仕事である。近年のJ2は、指導者のレベルが上がり、おかしな戦いをするチームがほとんどなくなってきている。どのチームを見ても、守備のレベルアップと安定感は目を見張るものがあるという状況だ。
それだけに組織としての守備を、個の力で突破できる存在としてバレーの獲得は大きい。フィジカルではめっぽう強い川崎Fの箕輪義信をして「彼の馬力はすごい」と言わしめた存在は甲府最大の武器となりそうだ。
またボランチではレギュラーで練習試合を続けてきた鈴木(隼)の存在が気になる。彼の動きを見ていると攻撃的な意識の強さが出ており、コンビを組む倉貫に守備を任せ前に出て行く姿が度々見られた。バレーへの決定的なパスも持っており、相手チームは対応に苦慮させられそう。練習試合では控えとしての位置づけが多かったが同じくボランチの保坂一成も高い能力を持つ選手で期待できそうだ。
またまだクラブからは正式発表されていない(24日現在)が、海野社長によると第3の外国人選手の獲得が決定したとのこと。社長自ら目を細めて「楽しみだ」と述べており、期待の度合いがうかがえる。すでに来日し、手続きを進めている最中で近日中にはその全貌が明らかになるはずだ。ただしコンディション等々、開幕に間に合うかは未知の部分が残る。
【開幕時の布陣予想】
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このチームの中で外せない存在となりそうなのがバレーだ。その突破力は魅力的で、問題なのは誰を組ませるのかという部分。確認した中では山崎光太郎、小倉といった選手とのセットが試されているが、バレーにスピードがあることや、東京V戦を見た印象では小倉が一歩リードか。
中盤はボランチは倉貫、鈴木(隼)のコンビで決まり。右サイドハーフも藤田で間違いなさそうだ。問題はケガで石原克哉が出遅れた左サイド。ここに長谷川太郎が入っても十分に機能しており、コンディションなどの部分で長谷川が使われる可能性が高そう。
最終ラインは、左右両サイドバックの杉山新、アライールは決定か。問題は中央の2枚。池端陽介を軸に津田琢磨、青葉幸洋がポジションを争っている。またベテランの仲田建二もケガから復帰しつつあり、じきに先発争いに加わりそうだ。最終ラインに関しては、サイドと中央の両方ができる選手が複数おり、メンバー次第でどうにでも組み替えられる柔軟性を持っているのも特徴だ。
GKはヴィッセル神戸へと移籍した阿部謙作の穴は大きいが、清水から完全移籍してきた鶴田達也がまずまずの安定感を見せており鶴田で間違いなさそうだ。
Reported by 江藤高志

















