昨年、リーグ最終節まで昇格争いを続けた山形では、今シーズンのJ1昇格は至上命題となっている。
クラブは「INNOVATION」をスローガンに掲げ、目標達成へ向けより本気度を増した。昨年の昇格争いのアナウンス効果は絶大で、サポーターはもちろん、一般の県民の間にも「今年こそ」の気運がこれまでになく高まっている。
鈴木淳監督は「選手だけでなく、チームにかかわるすべての人が本気でJ1に上がろうと思うことが大切」と話し、サポーター・県民一体となった昇格を目指している。
「チーム全体の技術レベルは上がった」
昨シーズン、パス精度の足りなさをたびたび口にしていた鈴木監督も、各年代の代表経験のある選手を多くそろえた今季の補強には満足の様子。手倉森コーチも「今年は去年よりもミスが減りますよ」と、2月初めのキャンプの時点で確信していた。
今季掲げたチームスローガンは「Aggressive Play(積極的プレーをする)、Accurate Skill(正確な技術と判断を追求する)、Alertness(隙のない状態にする)」。昨年同様、「ボールも動き、人も動く」スタイルの中、パス1本1本の精度が高まることで、より緻密で正確、そして速い展開が実現できる。開幕前に行われた練習試合では選手同士の有機的なつながりは発展途上の段階だったが、時間とともに、観ていてエキサイティングで、何より、ゴール前でのチャンスが多いゲームに結実していきそうだ。
開幕前、各チームのサポーターたちは、クラブを去る選手と加入する選手を見比べながら、昨年の成績よりも上に行けるのか、あるいは下回るのか。期待と不安の中で過ごしているに違いない。それは山形についても言える。12人が抜け、10人が加入。人数的には珍しくないが、問題はその中身だ。
まず、抜けた中に昨年の主力数人を含んでいることがある。その代表格・大島秀夫は、他のフォワードが低調な中、22得点と一人気を吐いた。他に攻撃的な選手では、右サイドで突破のできる星大輔が京都に移籍。シーズン途中からレンタル加入した左サイドの宮沢克行も新潟に戻り、攻撃陣は再構築が必要な状況になった。
もうひとつは、新加入の多くがJでの出場機会を求めて来た若い選手だということ。技術が高く、将来性もあるが、こと今シーズンに限ってどの程度活躍してくれるのか? そうした未知数の部分が、抜けた選手の実績と見比べてどうなのか? と考えるサポーターも多いようだ。
山形の見どころを「抜けた選手の穴は埋まるのか?」という部分に集約させて考える傾向があるのは、ある意味で仕方のないところではある。しかし、1月の新加入選手の記者会見で、鈴木監督はその答えをはっきりと示している。
「選手が変われば戦術も変わるので、昨年のチームとは若干違った形にはなるかも知れない。それはいい意味で期待していきたい。チームを離れた選手の穴を埋めるだけの選手が、ここに来ていると確信している」
新しく生まれ変わる山形のプレーに、乞うご期待!
【新戦力・注目のキープレーヤー】
今季の新加入選手は10人。技術レベルの高い選手が多く加入し、ゲームの中でパス精度が良くなることは予想されるが、肝心のゴール前で得点が取れる選手がいないことには話にならない。その意味で、チッコの活躍なしでは昨年の成績を超えることはないだろう。得点力も求められるが、チームの軸として機能することが期待されている。ヘディングでの競り合いに強く、ポストプレーができるため、もう1人のフォワードや中盤の選手とのコンビネーション次第では、かなり大きな役割を果たせそうだ。
J1では出場の機会が少ない若い選手が多く加入しているのも特徴。彼らにとって、山形で結果を出すかどうかは、今後のキャリアに大きく影響を与えるため、それぞれが必死でサッカーに取り組んでいる。
「今年は勝負の年」と自ら宣言したのは阿部祐大朗。誰もが認める素材だが、出場機会を求めて横浜FMから移籍してきた。「タイプがないんですよ。オールラウンダーって言うしかないですね」と自らを評するが、“一芸”を持っている選手が多い山形の中で、やわらかいトラップと意表を突くアイデアの炸裂が待たれる。
本橋卓巳は、昨シーズン鳥栖で40試合出場という実績と、それによって得た自信とともに加入。動きの中でリズムをつかんでいくタイプで、ポジションチェンジもスムーズにこなし、早くもチーム戦術に馴染んでいる。サイドチェンジのような長いパスも正確で、セットプレーでも期待が大きい。
首脳陣の間で評価が高いのは、MF佐々木勇人。今シーズン唯一のルーキーだが、その活躍は小学校時代から鈴木監督の目に留まっていた。持ち味は50メートルを5秒9で走る俊足。ボールを扱う技術も足の速さに負けることがなく、驚異的なドリブル突破ができる選手だ。
新加入以外では、林晃平がチーム浮沈のカギを握る。昨シーズンは俊足のスーパーサブとしてチームの流れを変え続けた。第2クールまでは得点がなかったが、プレシーズンのトレーニングゲームではゴールを量産、ゴール前での決定力アップを印象づけた。
入団4年目、今年は背番号が「1」に変わったGK桜井繁も、気持ちを引き締めて新しいシーズンに臨んでいる。昨年は平常心を保ちながらアグレッシブにプレーする術を体得し、昇格争いという緊張感の中で1試合1試合実践してきた。1対1で体を張って飛び出す場面でも、当然のように止め、涼しい顔をしている。
【開幕時の布陣予想】
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「フォーメーションは柔軟に対応する」という鈴木監督だが、基本的には昨年同様の4−4−2だろう。
GKは桜井が有力。「自分のやってきたことには自信を持っている」と、技術の他、精神面でも大きく成長している。
ディフェンス4枚はほぼ昨年と同じメンバーになりそうだ。右サイドバックには、ともに攻撃的なセンスを持つ太田雅之と臼井幸平がいるが、開幕は臼井になる模様。太田先発の場合は、臼井をひとつ前で使うのもおもしろそうだ。
中盤の真ん中では、永井篤志、大塚真司のコンビが今シーズンも健在。昨年終盤から2トップと両サイドハーフが入れ替わる“非常事態”では、2人の豊富な経験がものを言いそうだ。左サイドは正確なクロスとプレースキックが武器の高木和正が入りそう。右サイドはプレーがアグレッシブに変身した秋葉勝、あるいは50メートルを5秒9で走る変則ドリブルのルーキー佐々木が起用されるだろう。中盤は高橋健二、本橋など人材が豊富で、シーズンを通してさまざまなオプションが登場しそうだ。
フォワードはチッコが軸になると予想されるが、コンビを組む最短距離にいるのは名古屋やU-22代表でも、一定の実績を残している原竜太。また、今年に入り根本亮助も好調をキープしている。
Reported by 佐藤 円
















