8月13日(土) 2005 J2リーグ戦 第26節
湘南 1 - 1 甲府 (19:04/平塚/5,313人)
得点者:'12 佐野裕哉(湘南)、'19 バレー(甲府)
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ファーストシュートは、笛の余韻さえまだ残るキックオフ直後のことだった。湘南の吉野智行がボールを奪うと、佐野裕哉を経由し、坂本紘司がシュートを放つ。ボールは甲府GK阿部謙作の正面を突くが、「試合の入り方は悪くなかった」と佐藤悠介が振り返ったように、ゴールへの意識が序盤から流れを手繰り寄せる。そして前半12分、その意識が実を結ぶ。背後から送られた坂本からのクロスを佐野が右足で巧みにトラップし、すぐさま左足を振り抜いた。「ゴールの位置は見なくてもわかりますから」日頃からFWの嗅覚を研ぎ澄まし、且つ柔らかい足元のテクニックでボールを我が物にした佐野のシュートは、一直線にゴール右隅に突き刺さった。
先制を許した一方の甲府も、攻撃に転じた際のゴールへの意識は譲らない。藤田健が豊富な運動量で左右前後のスペースを見つけては動き回り、連動して倉貫一毅をはじめとする中盤が押し上げる。両者とも一進一退の攻防を繰り広げるなか、甲府が同点に追いつくのは湘南の先制点から7分後だった。自陣でボールを奪うと、杉山新が前線のバレーに素早く収める。ボールを受けたバレーのドリブルは加速し、マークについたバリシッチの阻止も及ばず、あっという間に湘南ゴールを貫いた。
追いつかれた湘南は、右サイドの鈴木良和が中に絞れば佐野が流れ、またトップ下のスペースを佐藤が使うなど、動きながらパスを回しリズムをつくった。サイドを起点にシュートも狙う。だがゴールには届かない。甲府もバレーのドリブルの破壊力で湘南を脅かす場面もあったがゴールには至らず、同点のまま前半を終えた。
互いに追加点を目指して臨んだ後半、早々の7分にDF井上雄幾に退場が言い渡され、甲府が劣勢を強いられることになる。だが勝負は単純な数字上の計算式で弾かれるものではなかった。上田監督は振り返る。「数的優位だという心理的な余裕が生まれてしまうことによって活動量が落ちて準備が遅くなり、あるいはボールに対するプレッシャーが少なくなってしまう」。数字上の明らかなる優位性が、見えないプレッシャーとなる可能性もある。相手に退場者が出た際の数的優位の状況は得てして難しいものだ。事実、湘南は第1クールにも後半途中にひとり欠いた札幌に対し、最後まで決勝点を奪うことができずスコアレスドローに終っている。
果して、この日も同様に、ひとり失った甲府のほうがむしろ勢いを増した。前半は時折りサイドを駆け上がる動きも見せた奈須伸也が中盤の底に固定され、攻撃に転じると藤田を中心とする前線の選手たちが「攻撃は最大の防御」と言わんばかりに攻守の切り替えから素早くシンプルにパスを繋ぎ、湘南ゴールを脅かす。15分過ぎには石原克哉の左サイドからの折り返しをバレーが、35分過ぎにはバレーからの浮き球をペナルティエリアに走りこみ受けた藤田が、シュートを放つ。攻撃にかける人数は当然、少なくなったが、選択肢の減少が逆に個々のゴールへの意識を研ぎ、役割を明らかにした。前半の3本に対し後半12本を記録したシュート数がその事実を物語っている。しかし、湘南のちょうど倍放ったシュートも、小林弘記の好セーブもあり、ゴールを割ることはできない。
対する湘南も無論、防戦一方ではない。前半に較べロングボールを多用して柿本倫明を走らせるなど、シンプルにゴールを目指す。甲府の不用意なバックパスを、この日初出場となったカシアーノが逃さずGK阿部との1対1にまで持ち込み、またコーナーキックからの混戦のなか、詰めていた中里宏司が左足を振りぬき枠を捉えた。だがこちらも、判断力を発揮した阿部の再三の攻守に阻まれる。互いのGKが牙城を崩すことを最後まで許さず、試合終了の笛を聴いた。
「相手が退場になり数的優位に立ちながら勝てなかったのは残念。ただリーグ戦はこれからも続くし、勝ち点1を積み重ねることは大切だと思う」試合後、上田監督は口惜しさを飲み込み、引き続きホームで行なわれる次節に目を向けた。大木監督も、「前半の出来と退場になったことを思えば、勝ち点1で我慢しなければならないという気はする」と、口惜しさと現実との狭間で揺れる。手痛いドローを足踏みで終らせないために課題と収穫を見つめなおし、両チームともに次節を目指す。正念場は終らない。
以上
2005.08.14 Reported by 隈元大吾
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