10月22日（土） 2005 J2リーグ戦 第37節
甲府 5 - 0 徳島　（18:34／小瀬／8,097人）
得点者：'7 倉貫一毅（甲府）、'15 バレー（甲府）、'43 秋本倫孝（甲府）、'46 バレー（甲府）、'89 藤田健（甲府）
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「あっ、そうですか」。記者に得失点差で、仙台を抜いて3位になったことを聞かれたときの大木監督の最初の一言だった。あまのじゃくといえばあまのじゃくだが、会見室の椅子に座る前、緩みそうになる頬を引き締めるようにしかめっ面を作ったところに、一瞬だが大木監督の喜びが感じ取れた。バレーが復帰するまでの苦しい戦いの日々から、自信を持って残る7試合を戦うことが出来るということだろうか。

7試合ぶりにバレーが戻ってきた甲府。立ち上がりからバレー効果は存分に発揮できた。ポストプレーと突破力が共生するFWの実力は際立っていた。GKに阻まれたが、バレーが3分に放ったシュートは、これまでの甲府とは違うことを感じさせた。そして、7分に石原がドリブルでペナルティエリアに切り込み、そこから下げたボールを倉貫がループ気味のミドルシュートで先制点を挙げると小瀬陸上競技場は一気にヒートアップする。8分後には復帰したバレーが藤田のクロスを右足で決めるとモヤモヤした3位争いに気を病んでいた甲府サポーターは「3位に入って、入れ替え戦に勝ってＪ1」という夢が現実に近づいたと感じたのではないだろうか。ただ、甲府に失点の可能性が少なかったわけではない。徳島は、運動量の多いトップ下の片岡、ツートップの羽地・小林の突破力とコンビネーションで、得点のチャンスは作り出していた。前半41分に左から小林が上げたセンタリングに羽地が頭で合わせたシュートは決定的だった。しかし、このシュートを甲府のGK・阿部が止めたことで流れが甲府に傾き始める。2分後にコーナーキックから秋本がＪリーグ初ゴールを挙げて3-0になり、甲府は魔の2点差を脱することになるからだ。徳島は得点差ほど内容で劣っていたわけではないだけに、2-1にすることが出来ていれば流れを引き戻すチャンスはあった。しかし、3点差になったことで、3戦連続となる悪夢の大量失点を予感した徳島。失った自信を取り戻すことは出来ず、後半に逆襲を仕掛ける力はもう残っていなかった。この日の朝、地元紙を見てバレーの先発を知った徳島。甲府のシステムは変わらないので、予定通り対処するはずだった。しかし、バレーというFWの能力に数では対処できても、個々のクオリティでは対処できなかった。後半には一人でも大きな仕事が出来るバレーの恐さを思い知らされる。

後半開始1分、バレーは自らの力を見せ付けた。徳島陣内のセンターサークル付近でボールを受け、2枚のディフェンスを振り切って一気に徳島ゴールに向けてドリブルで突き進み、そのまま右足で4点目のゴールを決める。そして、89分には藤田のゴールが決まり5-0。甲府がこの日の結果で3位に上がるためには、勝ち点で並ぶ仙台を得失点差で上回る必要があり、そのためには5点差の勝利を必要としていた。あわよくばと言う程度の期待だったが、見事に甲府は5点を挙げて5位から3位にジャンプアップした。3位を争うライバルにとっては脅威を感じる結果となった。お互いに安定感の無さから3位争いを図らずも面白くしてきた仙台、山形、札幌は、今後の7試合を甲府の安定感が高まることを恐れながら戦わなければならない。甲府の安定感が高まるかどうかには、まだ確信は持てないが、少なくとも甲府が有利になったことは間違いない。バレーが不在の間を支えた、須藤も力をつけており、サブメンバーにも不安はない。ケガをしていたディフェンス陣も徐々に復帰しており、残る７試合は先発メンバーを殆どのケガ人が復帰した状態から選ぶことが出来るようになるからだ。今後、長谷川、藤田らのテクニシャンが、ワンタッチパスを繋いで相手を崩すシーンを見せてくれれば甲府の攻撃力は完全に戻ったと言っていいだろう。大木監督の狙いである、守から攻に移った瞬間のダイレクトな攻撃姿勢が発揮されれば、3位争いは甲府のものだ。

一方、徳島は3試合で14失点と重症だ。ただ、失点の多さほど内容が悪いわけではない。それだけに修正するポイントを見つけることが難しい。残る7試合は正念場となるが、選手が自信を取り戻して戦えるかどうかが最大のポイントになるだろう。

以上

2005.10.23 Reported by 松尾潤