11月3日(木・祝) 第85回天皇杯 4回戦
広島 3-1 水戸(13:01/広島ビ/3,076人)
得点者:52' ガウボン(広島)、67' 大木勉(広島)、83' 深津康太(水戸)、87' 森崎和幸(広島)
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85分、左サイドで広島がスローインを得た。服部公太がボールを拾いにいく。そこに逆サイドから、一人の若者が走ってこようとしていた。ルーキーのU-20日本代表・中尾真那である。中尾は、小野剛監督からベンチ入りを告げられた時、こう言われている。「ロングスローの練習をしておけ」そう、実は彼は、ここでロングスローを投げるために、起用されていたのだ。ところが中尾は、服部がボールを拾ったところで逡巡した。ピッチの中央で立ち止まり、戻っていく仕草すら見せた。
この瞬間、小野監督は、ベンチから大声を張り上げる。「真那っ!お前が投げるんだ!!」その声に引き戻され、中尾は再び走って、服部からボールを受けた。手のひらの汗を拭き、助走をつける。グーンと身体がしなり、大きなストライドの助走から中尾はボールを投げ飛ばした。中尾の手を離れたボールは、強烈な初速を得て、グングン伸びる。ギュン、という音が聞こえるほどの伸びを見せた放物線は、ついにはファーポストを超え、ゴールエリアのラインの向こうまで飛んでいった。推定飛距離45メートル。和多田充寿(神戸)に匹敵する、すごいボールだった。
両チームの選手たちが唖然として見上げていたこのロングスローは、広島の決定機にはつながらなかったものの、水戸の選手たちの集中をそぐに十分なインパクトを与えていた。その証拠に、この超ロングスローの2分後、あれほど集中の高かった水戸のDF陣が、森崎和幸のシュートがネットを揺らすのを、呆然と見つめている。まるで、中尾のロングスローが描いた放物線に、未だに魅入られているように。水戸は前半、広島のダイレクトパスをつなぐコレクティブなサッカーを見事に封じた。ゾーンをコンパクトに、かつ低い位置で保ち、徹底して相手にスペースを与えない。中盤はワイドに張り出し、広島のサイド攻撃を封じこめる。自分たちの良さを出すことより相手の良さを消していくサッカーに、水戸は徹底して集中したのだ。森崎和のスルーパスや、服部の突破に苦しみはしたものの、GK本間幸司や最終ラインの要・吉本岳史を中心に最後の最後で身体を張り、広島のシュートやラストパスを狂わせた。前田秀樹監督の狙いが、前半はピシャリと当たった。が、この展開は、小野監督と広島の選手たちにとっては、想定内のこと。もちろん、前半の出来は満足できるものではなかったが、後半に巻き返せる自信もあった。うまくいかないことで心の中に生まれるいらだちに負け、自滅さえしなければ。
その自信の裏付けは、小野監督が施した事前の準備にある。小野監督は、この水戸戦用に特別な形をいくつも用意していた。例えば、前半から再三見せていた服部と茂原のポジションチェンジ。ドリブルでえぐってマイナスのクロスを入れることは、スペースのない中では難しい。それよりも、ゴールに向かっていくボールをどんどん入れていくことによって、相手GKとDFにプレッシャーをかけ続けたい。それが、左利きの服部を右に、右利きの茂原を左に入れた意図だった。
前半は、流れの中で行っていたこのポジションチェンジ。しかし小野監督は、こう着状態が続けば、このままの形で最後まで押し通す覚悟だった。服部の「右サイドからのクロス」によって狙い通り先制点をあげたため、彼らを本来のポジションに戻しはしたが。他にも、高さのある西河や小村をFWの位置にあげる練習もしていた。そして、中尾のロングスローも、どうしても「1点」をとりたい時のオプションの一つ。彼のロングスローを見せることによって水戸に「タッチに逃げる」という選択肢をなくすことも、目的の一つだった。さらに、PK戦を想定して、前日練習でPKの練習までやっていたのである。この周到な準備が、水戸の素晴らしい守りに苦しめられても自滅せず、「必ず勝てる」という自信を植え付けたのである。
「とれるタイトルはすべてとりにいく」と、小野監督は語った。そして、この試合に見せた周到な準備は、その言葉を「戦略」という形にして示したもの。その指揮官の意志に、選手たちも呼応している。「天皇杯?優勝しかないでしょう」と佐藤寿人は強く言い放ち、森崎和幸もまた「天皇杯は優勝のチャンス」と意欲を隠さない。過去3度、ファイナリストに輝いた経験を持つ広島が、今季は本気で、元日の国立競技場で天皇杯を掲げることを、目指している。
以上
2005.11.03 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
一覧へ【第85回天皇杯4回戦:広島vs水戸 レポート】小野監督の周到な準備により、広島が水戸に快勝。天皇杯初戴冠に向け、力強い一歩を踏み出した。(05.11.03)
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