12月3日（土）J1 第34節 広島 vs 清水（14:00KICK OFF/広島ビ）
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　両チームにとって難しい試合となる。実は「広島対清水」は、1週間後にまた広島で対戦することになっているのだ。今季最後のタイトル＝天皇杯、である。「だから清水は、もしかしたら手の内を見せたくない、と考えるかもしれませんね」と広島・小野監督は警戒する。澤登不在については、小野監督も予測していた。しかし、前節で怪我をしたチョ・ジェジンについても、天皇杯のことを考えると温存してくる可能性もある、と小野監督はにらんでいる。勝って勢いをつけることと、手の内を見せたくないという希望と、両方の想いを抱えて長谷川監督は対広島戦の戦略を組んでくる。確かにそれが、一般的な見方だろう。

　一方の広島には、そういうことを考える余裕はない。8月24日以来、ホームで勝っていないこと、さらにホームラストゲームという現実も考えれば、天皇杯のことよりもまずリーグ戦勝利の方が重要だ。小野監督も「ホームの最終戦をとにかく勝利で飾りたい。それが、翌週の天皇杯にもつながります」と、明日は必勝の構えで戦いに挑む。とはいえ、状況は苦しい。広島の守備の要・ジニーニョが右足捻挫のために出場できないし、守護神・下田もリハビリ中だ。代役を務める西河と佐藤昭も成長しているが、若い二人を引っ張るディフェンス・リーダー小村への負担は相当なもの。実際、下田・ジニーニョ不在の横浜FM戦は3失点し、柏戦はゼロに抑えたものの、二人の欠場をカバーしようとチーム全体の重心が守備に傾いていた現実は否定できない。

　まして、J1残留を決定づけた清水の調子は尻上がりだ。特に第29節にルーキー・青山をDFラインに起用して以降の戦績は、3勝1分1敗。柏・神戸という残留のライバルたちとの直接対決に勝利し、前節は優勝を争っている鹿島に対して、常に先手をとる戦いを見せつけて引き分け。見事に勝ち点を積み重ねている清水の今の実力は、「（15位という）今の順位にいるチームではない」と小野監督も警戒を強めている。

　清水の好調を推進しているのは、青山・枝村・兵働のルーキートリオによるディフェンス面での活躍だ。特に、枝村と兵働が見せる中盤での運動量はすばらしく、清水の5試合で5失点という堅守は彼らが支えているといっていい。ただ、小野監督はもう一つ、違う見方をしている。「時にはペナルティエリアの中に2列入ってくるような低いゾーンを清水が設定する場合もあるのですが、それでも勝てるのはやはりマルキーニョスの存在が大きいんですよ」
　得点力不足に苦しんでいた清水に後半戦から加入してきたマルキーニョスは、ここ5試合で5得点と爆発している。彼のコンディションがあがってきたことが、ゾーンを後ろに引いても点がとれるという自信につながり、全体の守備強化になっている、と小野監督は分析しているのだ。「マルキーニョスはボールキープにも長けていますから、アウトサイドが攻撃に出る時間がつくることができる。それにより、清水の攻撃力が増しているわけです」

　しかし、清水にマルキーニョスがいるとするならば、広島には佐藤寿人がいる。しかも、前節の神戸戦で今季2度目のハットトリックを達成して広島を勝利に導いたこのヒーローの清水戦に対しての感情は、やや特別だ。広島への完全移籍で重圧もかかっていた今季の開幕ゲーム・清水戦の前日、佐藤寿は高熱を出してしまった。なんとか強行出場してみたものの、ほとんど決定機をつくることができずに途中交代。その後、佐藤寿が移籍後初得点を決めるまで第9節まで待つ必要があったのである。「あの時の悔しさは忘れていません。それは明日、点をとって勝つことで晴らしたいと思っています」
　もう一度ハットトリックを達成すればシーズン3度目となり、過去にディアス（当時横浜FM所属）・中山雅史（磐田）・エメルソン（当時浦和所属）しか達成していない偉業となる。またシーズン得点は20の大台に乗り、広島のチーム記録を11年ぶりに更新する。「もちろん難しいけれど、チャンスはゼロではない。僕が3点とればチームも勝てると思うし、可能性がある限りは狙っていきます」と佐藤寿は言い切った。

　マルキーニョスか、それとも佐藤寿人か。ここ数試合で輝きを放っている両チームのエースが、明日のゲームの指針を握っている。

以上

2005.12.2 Reported by 中野和也

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【今節の予想スタメン】
●広島：システム/4−4−2
GK　佐藤昭
DF　駒野・西河・小村・服部
MF　森崎和・李・ベット・大木
FW　ガウボン・佐藤寿

※中盤はダイヤモンド

●清水：システム/4−4−2
GK　西部
DF　市川・青山・高木和・山西
MF　枝村・伊東・久保山・兵働
FW　西野・マルキーニョス