●12月24日(土)第85回天皇杯準々決勝
鹿島 0-1 大宮(15:04キックオフ/仙台/6,298人)
得点者:55' 森田浩史
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今季J1初参戦にもかかわらず、リーグ戦で横浜F・マリノス、浦和レッズらを相手に「大物食い」をやってのけた大宮アルディージャ。徹底した組織的守備をモットーとするこのチームが、天皇杯準々決勝でまたしても見せてくれた。優勝候補筆頭に挙げられた鹿島アントラーズを1−0で撃破。クラブ史上初のベスト4進出を果たしたのだ。リーグ戦では2度続けて鹿島に完敗を喫していたが、最終ラインと中盤をコンパクトに保ち、ここで相手を網にかけて素早い攻撃に転じる形が完璧なまでに機能した。「優勝できなかった今季を象徴するような不完全燃焼な戦い。相手の『これしかない』というサッカーにはまった」と鹿島の鈴木満強化部長も反省の弁を口にするしかなかった。果たして大宮の快進撃はどこまで続くのか…。
第85回天皇杯準々決勝の4試合がクリスマスイブの24日、全国各地で行われた。日中の気温が0度、一時的には激しい雪も降った仙台では鹿島と大宮が激突。6,298人の熱心なサポーターが仙台スタジアムに集まった。
今季限りで退団するトニーニョ・セレーゾ監督率いる鹿島は、最後のタイトルを本気で狙っていた。リカルジーニョは試合直前の練習で負傷したものの、フェルナンド、アレックス・ミネイロの両ブラジル人は健在。この日は小笠原満男がボランチに回り、2列目に本山雅志と深井正樹、FWに「大宮キラー」と評される野沢拓也と決定力の高いアレックス・ミネイロが位置する4−4−2を採った。対する大宮も4−4−2。ケガの奥野誠一郎に代わり、冨田大介が最終ラインをコントロール。片岡洋介がともにセンタバックを担い、FWの一角には若林学ではなく森田浩史が入った。
鹿島がボールを支配し、大宮が守るという展開が予想されたこの試合。だが意外にも主導権を握ったのは大宮だった。寒さとピッチ状態の悪さが影響したのか、鹿島の選手たちはボールが足につかない。開始3分に小笠原からアレックス・ミネイロに絶妙のスルーパスが通ったが、彼は野沢にパスしてしまい得点機を逃した。これが決まっていたら、全てのシナリオは違っていただろう。
大宮は鹿島とは違って、積極的なサッカーを仕掛けた。最終ラインと中盤でボックスと作ってボールを奪い、左に開いた藤本主税、スピードあるFW桜井直人らが起点となって一気に前線へ展開する。この速く組織的なサッカーに鹿島は明らかに戸惑っていた。34分には右サイドの西村卓朗が60mのドリブルでゴール前まで持ち込むなど、得点の匂いはやはり大宮のほうに感じられた。
それでも前半はスコアレスのまま終了。鹿島は後半に入るや否や、建て直しを図るかと思われた。実際、今季リーグ戦でも前半と後半に全く別の戦い方を見せることが多々あった。ラストタイトルを狙うセレーゾ監督も選手たちに喝を入れたはずだった。
ところが皮肉にも試合の流れはさらに大宮に傾く。鹿島は、切り込み隊長として敵陣をえぐっていた深井が後半開始早々に負傷したのも痛かった。9分に本山がゴール前でフリーになるが、これも決まらずじまい。勝利の女神は鹿島からどんどん遠ざかっていった。
そんな相手の不安定な部分を大宮は確実に突いた。後半10分、藤本の鋭いスルーパスに反応した森田がドリブルで持ち込んだ。遅れて守りに入った岩政大樹をフェイントで難なくかわした彼は、そのまま右足を降りぬいた。角度のないシュートだったが、さすがの曽ケ端準も防ぎきれず、大宮に1点が入った。意図した通りの展開に三浦俊也監督はしてやったりの表情を浮かべた。
劣勢に回った鹿島のセレーゾ監督は、反撃の糸口を見出そうと不調の新井場に代えて鈴木隆行を投入。フェルナンドを左サイドバックに下げるという大胆な策を講じた。名良橋晃を青木剛に交代。30分を過ぎたあたりから、早くもスクランブルで1点を狙うという形になった。しかし大宮の守備は堅く、ゴール前にスペースを作らず、徹底的にハイボールを跳ね返す。鹿島得意のセットプレーも小笠原とフェルナンドのプレースキックが微妙にズレてしまい、決定的なチャンスにつながらなかった。こうした展開にイライラが募った小笠原は後半終了間際の44分に2枚目の警告をもらって退場。その後、そのままタイムアップの笛。
J1初年度の大宮に、まさかの敗戦を喫した鹿島の選手たちはガックリと肩を落とすしかなかった。これが日本でのラストマッチになってしまったセレーゾ監督は「選手たちは気持ちのこもったプレーをしてくれた」と労いつつも、「全員が100%の力を出し切ったかといえば疑問」と複雑な胸中を口にした。鹿島らしからぬ戦いで敗れ去ったのだから、指揮官も納得がいかなくて当然だ。今季は2001年以来のタイトルを狙い、序盤から飛ばし続けた鹿島だったが、最終的には無冠のままシーズンを終えることになった。
逆に大宮はリーグ戦で7連敗(22〜28節)した頃の低迷から完全に脱し、さらにチーム完成度を高めている。トニーニョやトゥットらシーズンを引っ張ったブラジル人選手は不在だが、その穴を藤本や桜井ら個人能力で打開できる選手たちが確実に埋めている。この日も「鹿島は中が強いから、外を崩すことに徹した」と藤本は鋭い戦術眼を披露。「リーグ戦では鹿島に攻められっぱなしだったから、勝てたこと自体非常にうれしい」と三浦監督も胸を張った。トーナメント戦というのは勢いが大事。そういう意味でも、大宮初タイトルのチャンスは大いにある。
以上
2005.12.24 Reported by 元川悦子
J’s GOALニュース
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