第84回全国高校サッカー選手権大会 ２回戦

大阪朝鮮（大阪） 3-0 岐阜工（岐阜）（12：10キックオフ/2,000人）
得点者：26分 梁泰雄(大阪朝鮮)、31分 梁正成(大阪朝鮮）、66分 朴治宣(大阪朝鮮)

国見（長崎） 1-0 富山第一（富山）（14：10キックオフ/2,000人）
得点者：5分 田中政勝(国見)

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　気温４度、そして冷たい大粒の雨。最悪のコンディションに見舞われた市原臨海競技場で２日、行われた全国高校サッカー選手権大会２回戦の２試合は、ともに「高い意思統一」と「際立ったパワー」を特徴とする２校が３回戦へと勝ち上がった。

　12時10分からの第１試合では大阪朝鮮（大阪）と岐阜工業（岐阜）が激突。大阪朝鮮が徹底した組織的と卓越した個の力を見せつけ、３−０で完勝した。

　総合力に勝る大阪朝鮮は序盤から優位に試合を運んだ。左サイドバックの朴帝宣の精度の高いキック、右ＭＦ金大龍の攻め上がりなどを軸に攻撃を組み立てる。彼らのフィジカルの強さ、パワーとスピードは相手を大きく上回った。そして迎えた26分、右サイドバック・金裕士の絶妙のクロスに飛び込んだＦＷ梁泰雄が右足ボレー。確実にボールを叩き込んだ。これでさらにリズムをつかんだ彼らは31分に追加点を奪う。キャプテンのＤＦ安泰成からのロングボールに呼応した長身ＦＷ梁正成が巧みにＧＫをかわしてフリーになりヘッド。無人のゴールにボールを送り込むのに成功した。

　対する岐阜工は全く主導権が握れない。流れの中の攻撃は機能せず、ボランチ・益山司のＦＫでチャンスを作ろうとするのが精一杯。それも相手の高さと強さを併せ持った最終ラインに跳ね返されてしまう。前半放ったシュートはわずか２本。一方的な展開のまま２−０で前半を終了した。

　何とか巻き返したい岐阜工は後半開始と同時に左ＭＦ高井洋尚に代えてＦＷ松井陽佑を起用。攻撃のきっかけをつかもうとした。が、大阪朝鮮の組織は簡単に崩れない。しかも途中出場したＦＷ朴治宣も相手守備陣を脅かすのに十分な動きを披露する。そして後半26分には左に開いた梁泰雄からのクロスに絶妙のタイミングで飛び込んだ朴治宣がダイナミックなヘッドで３点目をゲット。完全に勝負を決めた。「今の高校サッカーには大阪朝鮮のようなパワフルなチームはない」と国見の小嶺忠敏総監督も舌を巻く勝ちっぷりで、彼らは３回戦進出を決めた。

　続く14時10分からの第２試合は全国屈指の名門・国見（長崎）と選手権常連校の富山第一（富山）が対戦。選手権優勝６回を誇る国見だが、今年は高校総体出場を逃しており、これが初めての全国大会となる。選手たちもチャレンジャー精神でのぞんだが「最初は硬かった」と小嶺総監督も話す。そんな重苦しい空気を打ち破ったのが開始５分の先制弾だった。右サイドをえぐった田中信也からのマイナスのクロスを受け、反転しながら強引に左足でシュートを押し込んだのが、エースストライカーの田中政勝だった。「あれで緊張がほぐれた。いつも練習している形がうまくはまった」と本人も笑顔で話す会心のゴールだった。

　その後も国見は鍛え抜かれた走力と１対１の突破力で相手を圧倒した。富山第一はボールポゼッションをしながらの組み立てで同点ゴールを狙うが、思うように国見守備陣を崩せない。エースの菊池琢哉が２度３度とＤＦ裏に飛び出すものの、最後の力強さが足りなかった。

　それでも富山第一に絶好のゴールチャンスが訪れる。前半28分、左サイドをえぐった菊池のクロスが国見のＤＦ浦田幸陽の手に当たり、レフェリーが「ハンド」を宣告。ラッキーなＰＫが転がり込んだのだ。が、キッカーの大平直人はあえて力を抜いたキックをＧＫ町田大貴に当ててしまいゴールならず。彼らは絶好の同点機を逃した。

　後半も富山第一は積極果敢に得点を狙った。菊池と２トップを組む高橋駿太のヘッドやバイシクルキックなど惜しいチャンスはあったが、どうしてもゴールを割れない。終盤には菊池が負傷でベンチに下がる不運にも見舞われた。結局、１−０のままタイムアップの笛。国見の個々の強さと運動量を富山第一は最後まで崩しきれなかった。

　明日の３回戦は大阪朝鮮と国見が激突することになった。タフで高い意思統一を誇る両者の対戦は非常に興味深い。「これがヤマ」と小嶺総監督も気合を入れる。この一戦は今大会を大きく左右するかもしれない。

以上

2005.01.02 Reported by 元川悦子