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【2006シーズン 戦力分析レポート:湘南編】「継続」と「変革」。昨年までに布石を打った上田湘南がさらなる力を蓄え、昇格に挑む。(06.02.13)

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【今季の見どころ】

「Believe」・・・2006シーズンの始動を前に掲げられた、湘南のキャッチフレーズである。「監督を、選手を、スタッフを信じる。サポーターやボランティアの方々とともに、信じ合う。J1も含めた31チームの中で、信頼関係において最も秀でたチームでありたい」と語るのは、湘南ベルマーレ・真壁潔代表取締役。

 2000年にJ2リーグに足を踏み入れて以来、湘南は苦悩のシーズンを送ってきた。2003年と2004年には2年連続10位という辛酸も舐めている。また成績が落ち込むたびに監督が入れ替わり、スクラップアンドビルドを繰り返した。そういった苦い歳月を重ねてきたチームが、昨シーズン記録した7位という成績は、決して満足できる数字ではないとはいえ、現場を信じてこそ導かれた明らかなる前進だった。

一方で、1年間戦わなければ見えない現実、あるいは1年通して初めて表出する真実というものもまた、存在する。体制の継続と補強の断行はつまり過去に幾度も行なわれてきたスクラップアンドビルドを葬り、これまでに時間をかけ作り上げてきた土台を強固にするとともに、前年に浮き彫りとなった課題の克服を推し進める。

 目指す「攻守の切り替えの速い、常にゴールを意識したアグレッシブなサッカー」を実現するため、90分間走り続け、戦い切ることのできるフィジカルの強化に上田監督は着手した。肉体の強さとスピード、持久力の向上である。そのためにブラジルからフィジカルコーチも招いた。さらに選手たちには、チーム状況が落ち込んだときに自己批判する精神力、チームのために行動するマインドを求めている。その2点に加えて技術力も当然、要求する。そして補強はこの3点を重視し、ひとつのポジションに2人以上という観点で進められた。日本をよく知るブラジルトリオを獲得し、またJ1経験者も多い。彼らの融合は競争を喚起し、勝つために必要な推進力を引き上げるだろう。

「昇格が使命だと思っている」昨年に引き続き指揮を執る上田監督は言う。
「心のこもったプレーをすることが“Believe”のベース。結果と内容にこだわりながら、目標にチャレンジしたい」

 柏や東京V、神戸と、J1から3チームが降りてきた今季、これまで以上にタフなリーグになることは想像に難くない。また52節、48試合という過去に例を見ない濃いシーズンも、真綿で首を締めるように選手たちの肉体と精神を蝕むだろう。その厳しい状況のなか問われるのは、個の力とそれを結集したチームの総合力である。リーグ戦のピッチに立つまえにチーム内での熾烈な競争があり、またそれ以前に自身との内なる戦いがある。逆に、名を連ねた29人が競いながら補完しあうことが、ゴールをより近づける。目の前の浮き沈みに動じない湘南のポテンシャルと今シーズンの躍動を、信じている。

【注目の新戦力】

 11人の新たな戦士が加わった。中でもベルマーレ平塚時代に降格を経験し、6年ぶりの復帰となる外池大亮には人一倍、期する思いがある。「上田さんとともに当時の無念を晴らしたい。僕にとっては『J1昇格』ではなく、『J1復帰』です」。先のキャンプ中に31歳を迎え副キャプテンにも任命されたベテランには、プレーだけでなく精神的支柱としての役割も求められる。ピッチ上では見えにくい、しかしチームにとってもっとも大切な部分での活躍を、彼には期待したい。

 外池と同じく古巣への復帰となったのが、GK伊藤友彦である。「湘南のために」と言い切る背番号1はコミュニケーション能力に長け、意識も高い。後方から的確な指示を飛ばし、また窮地には最後の砦として身を挺す。セレッソ大阪で培った持ち前の鋭いプレーと精神的な強度は折り紙つきだ。

 大宮から移籍のFW横山聡も心強い。隙あらばDFの裏に飛び出し、常にシュートを狙う。彼の泥臭いまでのゴールへの執念は、チームに不足していた決定力を十分に埋める筈だ。横山をはじめとするFW、あるいは逆サイドに、F東京から新加入した左サイドバック・尾亦弘友希からの正確なロングフィードが集まれば、攻撃はより活性化する。さらにセンターバックの松本昂聡が1対1の強さを武器にゴール前を固め、ときに正確なフィードで攻撃をも後押しするだろう。

 加えて湘南は今シーズン、ブラジル人選手を3名獲得した。昨年まで水戸でプレーしたFWファビオはテクニックとヘディングに長ける。MFアジエルは2000年の浦和の昇格に貢献した。ドリブルを操り、同時に決定力も併せ持つ。山形でプレーしたこともあるMFニヴァウドは守備力に優れ、ボランチを組む佐藤悠介の攻撃参加をサポートするだろう。

 彼らを含めた11人それぞれに特長があり、期する思いがある。総てを書き切ることはできないが、それぞれのポジション争いがチームを沸騰させ、ボトムアップに繋がることは言うまでもない。

【日本代表へイチオシ】

●DF 21 尾亦弘友希
 U-18日本代表候補に選ばれた頃の記憶が蘇る。尾亦は当時から正確な左足を武器に個性を見せていたが、どちらかというときれいなプレーをするという印象が強かった。しかし湘南のユニフォームに袖を通しピッチに立つ彼は、その色を確実に変えていた。正確なロングフィードには磨きがかかり、機を見ては左サイドを駆け上がる。攻撃参加したあとの戻りも速い。攻守にわたり左サイドバックとしての職務をまっとうするのはもちろん、なによりも目の前のボールにこだわる泥臭さが、1つひとつのプレーから滲み出ていた。

 思えばU-19日本代表に選ばれ世界を知りながらも、下部組織から昇格したF東京のトップチームではほとんど出場機会に恵まれなかった。大宮へ1年間の期限付き移籍も経験している。そして今シーズン、湘南に完全移籍を果たした。光も影も味わったこれまでの道のりが尾亦を変え、新天地での跳躍を予感させるのだろう。日本代表が4バックを敷くのならば、守備の意識が高く攻め上がるタイミングも心得る、左サイドバックの職人ともいうべき尾亦を推したい。

【開幕時の布陣予想】

 FWからGKまで29人総てが凌ぎを削っている現在、開幕スタメンにどのような顔ぶれが並ぶのかは未だまったく見えない。キャプテンに任命された佐藤悠介と副キャプテンの加藤望の両雄を中心に、考え得るバリエーションは様々だ。また個々のモチベーションは高く、誰がピッチに立ってもおかしくない。

 GKは伊藤を軸に、成長著しい植村も持ち前の鋭い反応を見せアピールしている。センターバックは激戦区だ。新加入の外池や松本をはじめ、ケガの回復を待つ田村、昨年はサイドバックの起用が多かった村山、そしてこのポジションで開眼した城定らがひしめく。先日水戸から合流した須田と昨年ルーキーイヤーながら活躍を見せた冨山、そしてF東京から加入の尾亦と湘南2年目となる池田ら両サイドバックの競争も激しい。いずれにせよ、攻守のバランスとコンディション、パーソナリティを見極めたうえで、DFラインは決まってくるだろう。

 中盤、そして前線も、加藤と佐藤を軸に、あらゆる組み合せが現状では考えられる。スピードとセンスに優れる永里や鶴見、森谷ら若手選手は、前線でジョーカーとしての起用もあるだろう。横山や坂本、中町らもキレのある動きを随所に見せ、攻守にわたり貪欲な姿勢を表現している。MF北島のメンタリティも得難い。ブラジルトリオのコンディションによっても、メンバーは左右されるだろう。

Reported by 隈元大吾


2006開幕直前 クラブ別キャンプ・戦力分析レポート
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