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【J1:第9節 甲府 vs 横浜FM レポート】J1残留という小さくて大きな目標から、『大きな』という文字が消え始めた甲府。(06.04.24)

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4月23日(日) 2006 J1リーグ戦 第9節
甲府 1 - 0 横浜FM (15:04/小瀬/14,615人)
得点者:'89 バレー(甲府)
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歓喜の響きは、これまで小瀬陸上競技場で聞いたどんな勝利よりも大きく、音量とは違う種類のパワーになっていた。歓声がメインスタンドの屋根に反響して空気を震わせた瞬間、血も騒いだ。

2分間のロスタイムを20秒過ぎていた。レフリーが引き分けを告げる笛をいつ吹いてもおかしくはなかった。ピッチでは、自陣の深い位置から右サイドのタッチライン際をドリブルで駆け上がったビジュが、ファールで倒された瞬間だった。ロスタイムに入ってから過ぎ去った時間を考えれば、そのFKはゴール前に蹴り込むべきだった。しかし、ビジュはショートパスを選択して同サイドの石原にボールを蹴る。そして、石原もすぐには蹴り込まずキープする。横浜FMの選手もこの時間帯に右サイドでショートパスを選択することは考えていなかっただろう。ゴール前の守りを固めるのが先決。石原へのマークは甘い。このクロスを跳ね返せばカウンターの時間が残っているかもしれない。悪くても勝ち点1は拾える。
「ゴール前に2〜3人味方がいてすぐに(クロスを)上げようかと思った。でも、『キープ』と言う声がかかった」
石原に声をかけたのは後ろからオーバーラップしてきた杉山。その声で間を置くことになった石原の眼に映ったのは、駆け上がる杉山ではなく、ゴール前の秋本。
「カツ(石原)は、ああいう場面で見てくれていて、絶対来る感じがあった」(秋本)
そして、ニアに走りこむ秋本に向かって石原の蹴ったボールは放物線を描く。
「『いいボールを上げたとなぁ』と思ったら、秋本のヘッドは空振り」(石原)
「頭に当たらなかった」(秋本)
「でも、(秋本の)後ろに凄い人がいた」(石原)
秋本が空振りしたことで、バウンドしたボールは横浜FM守備陣を欺いた。中澤はバウンドする前の軌道に合わせて飛び込み、ボールがバウンドした時は体制を立て直すことが出来ずにゴールの中に飛び込んでいた。そして、空いたファーにポジションを取っていたバレーが頭で押し込んで、観客の感情を開放させるスイッチを入れた。そして空気が震えた。

引き分けの匂いと、劇的なゴールの匂いが入り混じった0−0の後半の後半。逆のことが起こっても不思議ではない展開だった。FKからのショートパス、間を置いて入れたクロス。何か、ドーハの悲劇のショートコーナーを思い出してしまう。横浜FMにとって、試合前、試合開始直後、前半終了時なら絶対に勝たなくてならない、絶対に『勝てる試合』だった。しかし、後半の後半は絶対に勝たなくてはならない、『勝ちたい試合』になっていた。前半は横浜FMが有利に試合を進め、後半はイーブンとなり、お互いにチャンスを潰し合っていた。気持ちの強さと少しの運が勝敗を決める試合になっていた。そして、FKからのショートパスと、間を置いて入れたクロスが勝敗を決める最後の味付けをした。実証は出来ないが、「ビジュがFKをゴール前に蹴り込んでいても、甲府が絶対に勝てた」とは思えない。予測できない味付けは、「横浜FMに敬意を払っていた。自分たちのサッカーを続けていたから、あのような形で点を取ることが出来た」(バレー)という言葉で説明される。先にこの言葉だけを聞いても陳腐に感じてしまうが、この流れを見てから聞くと、信じて戦い続ける気持ちの意味を実感できる。

「前半はいい感じ、後半はチーム全体のリズムが縦に早くなり過ぎて、ミスが続いて、流れが変わった」
 奥のコメントに試合の流れが凝縮されている。そして、監督会見で感情を押し殺して淡々と試合を振り返る岡田監督。それでも、表情から滲み出してくる憤怒に横浜FMの感情が凝縮されていた。『勝てる相手に負けた』。非公開練習のベールから出てきたのは3−5−2ではなく、予想外の4−4−2。甲府のスリートップをバレーのワントップとみなし、自らの守備陣を中盤の厚いツーバックと表現した岡田監督。両サイドバックが高い位置でプレーすることで成り立つ勘定だ。

甲府と横浜FMのボール回しでは、質の高かったのは横浜FM。ショートパスのなかに正確なミドルパスが入るところが最大の違い。甲府のショートパスは、サイドに場所を移した瞬間にプレッシャーを強める横浜FMの守備の網にかかる。そこで、ワンタッチパスを2本、3本と続けてプレッシャーをかわし、逆サイドに展開できればチャンスとなったが、網にかかることの方が多かった。横浜FMは同じような場面をショートパスだけでなく、1本のミドル、ロングパス、浮き球でかわすことが出来るチーム。その差が前半に出た。しかし、ゴールを決めきれないために、縦に急ぎ過ぎた後半に繋がってしまった。

優勝を求められる横浜FMに対して、誰も口に出したくないがJ1残留という小さくて大きな目標が潜在する甲府。しかし、その目標から『大きい』という文字が消え始めている。サポーター、そして、昨シーズンまでJ2で戦ったライバルにも希望を与える大きな1勝は、忘れることができなくなるだろう。

2006.04.23 Reported by 松尾潤
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