6月3日（土）J2 第19節 札幌 vs 山形（14:00KICK OFF/札幌ド）
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1ヶ月以上も勝ち星から遠ざかっている札幌。Ｊ1昇格を目標にしながらも、現在の順位は10位。今節の結果によってはさらに順位を落とす可能性もある。置かれている状況は決して芳しいものではない。しかし、どんな状況でも果敢にチャレンジする精神が柳下監督率いる札幌の目指すスタイルであり、こうした苦しいシチュエーションを経験することは若いチームにとって必ず良い経験となるはずだ。とにかくまずは1つ勝つこと。Ｊ1昇格云々よりもまず、目の前の1勝に全力を注がなくてはならない。

復調の兆しはある。首位・柏とアウェーで対戦した前節は1-2で敗れたものの、チーム全体のバランスは安定していた。中盤に下がってボールを受けるスタイルのストライカーであるフッキを出場停止で欠いていたものの、それが逆に選手個々の役割を明確にしたようだ。中盤でプレスを仕掛けてくる柏に対しても、相川のポストプレーを軸にサイドへ展開するという狙い通りの攻撃を仕掛けることができており、守備に関しても、左MFの西谷がインサイドへ絞りすぎてスペースを与えてしまう嫌いはあったものの、右MFの芳賀が下がって形成する4バックによって、柏のブラジル人トリオにも応対できていた。セットプレーから失点したが、後半の守備はそれまでの数試合に比べればずっと安定していた。イージーなミスは相変わらず幾つも目についたが、そこはもうとにかく練習を重ねるしかない。

一方の山形は絶好調だ。第2クールに入って4連勝。開幕直後は若干出遅れた感もあったが、ここにきて勝率を5割に戻している。特に前節は強風というコンディションの中でも、しっかりとゲームをコントロールし、3-0のスコアで水戸に完勝してみせた。システム変更や選手交代などで様々な揺さぶりを仕掛けてくる水戸をシャットアウトし、2試合続けての完封勝利で守備網の成熟も見せつけた。

「第1クールでなかなか勝てないときでも、選手達がやっているサッカーに対してしっかり自信を持って、下を向かないでやってくれた。それがようやく、点も取れるししっかり守ることができるという結果もついてきた」。山形の樋口監督は出遅れからの浮上をこう振り返った。そう、長いシーズンの中ではどんなチームにも必ず上手く進まない時期がある。その苦しい時期にどれだけしっかり歯を食いしばって上を向くか、そうした強い気持ちを持つか。その部分がリーグの行方を大きく左右するはずだ。

調子を落としている札幌は、ここが勝負どころだ。自分たちが積み上げてきたものを信じ、突き進んでいくしかない。さらに言ってしまえば、ちょっと調子が悪くなるとすぐにコロコロとやり方を代えたりして失敗を繰り返したのがかつての札幌だった。そうした悪しき習性を断ち切ることが、2004年から取り組んだ「五段階計画」だったはず。それに、ちょっと成績が下がってきた程度で下を向くようでは、本当の意味での強いチームになれるはずがない。その意味でも、現在置かれている状況というのは札幌が強くなるための重要なハードルのひとつだと言っていいだろう。

札幌も山形も、どちらも主導権を握ることで自分たちのペースを生み出すプレースタイル。ポジティブでアグレッシブな試合になりそうである。前節の試合前、札幌サポーターが陣取る柏スタジアムのアウェイ側スタンドには『攻めて　魅せて　奪い取れ　必要なのは勝ち点３』と書かれた大きな横断幕が掲げられていた。これが札幌サポーターの総意ではないのだろうが、狡猾に勝ち点を稼ぐチームよりも、アウェイであっても積極果敢に勝ち点３を貪欲に奪いに行く試合が見たいということなのだろう。そういうチームに育って欲しいと、サポーターは願っているのだろう。

以上

2006.06.02 Reported by 斉藤 宏則