7月22日(土) 2006 J1リーグ戦 第14節
広島 2 - 4 千葉 (18:06/広島ビ/13,432人)
得点者:'33 服部公太(広島)、'37 ハース(千葉)、'48 山岸智(千葉)、'51 水本裕貴(千葉)、'55 ウェズレイ(広島)、'74 山岸智(千葉)
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「君たちは、どうして1対1を怖れるんだ。勝負してボールを奪えば、チャンスが待っているじゃないか。腰を引いて逃げて、周りの助けを求めていて、どうやって闘うんだ!」試合前日の広島ビッグアーチで、広島・ペトロヴィッチ監督が激怒した。口から泡を飛ばし、額に青筋を立て、通訳が追いつけないほどの早口で、まくしたてた。
千葉はその圧倒的な走力を利して、様々な局面で「2対1」をつくってくるチーム。それがわかっているだけに、どうしても守備側としては人数をかけて守りたくなる。そうなれば必然的にチームの重心は後ろに重くなり、攻撃の枚数が足りなくなってしまうことは明白だ。
ペトロヴィッチ監督は、また怒鳴った。「君たちは相手の攻撃を受け止めるだけで満足なのか。私は違うぞ。勝つんだ。点をとって勝つんだよ」そのペトロヴィッチ監督の強靭な意志は、間違いなく選手たちに伝わっていた。
前半から、広島は千葉の選手たちに果敢に1対1を挑んだ。決して逃げることなく、かわされることも怖れず、抜かれても食い下がった。千葉が持ち前のスペースランニングを駆使して抜け出そうとしても、広島の選手が厳しいマークを仕掛けるため、出したい場所にパスが出せない。そして、広島はいい形でボールを奪うと、鋭くパスをつないで一気にゴール前まで迫ってくる。
今年、両チームはナビスコカップで2度対戦しているが、これまでの闘いぶりとは一変した広島の闘志に、千葉の選手たちは戸惑っていた。そしてその流れの中で、服部の見事なミドルシュートが決まり、広島がこのまま一気にペースを握るか、と思われた。
が、その流れを突き崩したのは、千葉の中でも突出した戦術眼と柔らかさを持つマリオ・ハースだった。37分、中盤で下がってボールを持ったハースは、そのままゆっくりと前にあがる。そのスローな動きに広島の守備陣も合わせてしまい、そこまでの厳しいチェックがゆるんで小さなスペースができてしまった。そこを絶対に見逃さないのが、ハースの持つ高い戦術眼である。振り足の速い右足で小さなモーションから放ったシュートは、「こんなに人がそろっている中でシュートはないだろう」という広島DF陣の心の隙を見透かしたかのように、ゴール左隅に突き刺さったのである。
さらに後半早々、ハースは輝きを放つ。縦パスを受けたハースは、プレスをかける駒野を引き付けて横に走り、スペースをつくってスルーパス。そこに走り込んだ山岸の判断とスピードも素晴らしかったが、それを引き出したハースのプレーが、この逆転ゴールを生んだと言っていい。
その3分後にも加点した千葉が、そのままペースを握るかと思われた。しかし、そこから広島が息を吹き返したことでゲームは一気に白熱化する。盛田の積極的なドリブルを起点としてウェズレイがゴールを決め、1点差。そして66分、青山の素晴らしいスルーパスから佐藤寿が完全に抜け出し、GKとの1対1となった。しかし立石が、完全に佐藤寿のシュートコースを読み切り、ブロック。「あれを決めていれば」とペトロヴィッチ監督が試合後に悔やんだように、このプレーが勝負のアヤとなった。
広島は奮闘した。2点差をつけられてもあきらめることなく前に出た。実際、前半の先制点までは間違いなく広島のペースだった。1対1を怖れ、かわされることを怖れ、腰を引いてしまった春先の惨めな姿は、そこにはなかった。
しかし結果は、苦しい状況をマリオ・ハースという個の力で一変させて、千葉が勝利を握った。しかも千葉の凄みは、そういう個の強さを持った選手がチームの中で連動し、1+1が2ではなく3にも4にもなることだ。そこが、イビツァ・オシム時代、いやもっとさかのぼって2000年からスタートしたベルデニック監督時代からの一貫したチーム強化が続いている千葉と、チームづくりが一度頓挫し、6月に就任したペトロヴィッチ監督に再生を託している広島との違い、なのかもしれない。
しかし、試合後の広島の選手たちの表情は、敗戦に悔しさを露にしながらも、「方向は間違っていない」という自信をみなぎらせていた。殴られっぱなしではなく、力を出し切って一矢も二矢も相手に突き刺した。1対1でも逃げなかった。手応えはあった。しかし、その手応えを自信に変えていくためには、勝ち点という結果が必要になる。内容は確かによくなった。だが、まだ自分たちの位置が、J1残留を強く意識するべき場所であることを、広島の選手たちもサポーターも、理解している。
以上
2006.07.22 Reported by 中野和也
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