10月28日(土)J1 第29節 広島 vs 横浜FM(14:00KICK OFF/広島ビ)
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「私は、サンフレッチェの選手たちが一番、闘う気持ちを持っていると信じている。それを信じられなくなったら、私はこのチームの監督をやめる」
前節・C大阪戦での完敗後、「気持ちで負けていたのではないか」という記者の質問に対し、広島・ペトロヴィッチ監督は気色ばんでそう答えた。周囲がそう思うのは勝手だが、指揮官たるもの選手を信じなくてどうする。そういう彼の信念に揺るぎはなかった。
翌日の練習、ペトロヴィッチ監督は試合に出場した選手たちを前にして、静かに語りかけた。
「昨日は、負けるべくして負けた試合だった。ただし、その敗戦の責任はすべて、監督である私にある。君たちにお願いしたいのは、負けたことにいつまでも引きずられることなく、次の横浜FM戦に向かってほしい、ということだ。自分たちのサッカーを思い出してほしい、ということだ」
C大阪戦で負けたのは、自分たちのサッカーができていなかった。つまり、システムうんぬんではなく、走れていなかったからだ。ペトロヴィッチ監督はそう分析し、もう一度「考えて走るサッカー」を思い出そう、と訴えた。全員でまずしっかりと守り、そしていいディフェンスからボールを奪って素早く全員で攻撃する広島のサッカーをやりぬこう、と選手たちに語りかけたのだ。「やらなきゃいけない。そう感じました」。監督の言葉を聞いた後、顔を紅潮させて森崎浩司は口にした。その想いは他の選手も同様だった。
その中でも、前節で先発しながら45分で交代させられた李漢宰の想いは特別だった。この交代は攻撃に出るための戦術的なものだったが、李は自分のプレーに手応えを感じていただけに、到底納得できるものではなかった。わき上がる感情をコントロールできず、悔しさに身を任せてしまっていた。
そんな李にペトロヴィッチ監督は、帰りの新幹線のホームで「お前には次があるんだ。期待している」と語りかけた。そしてその言葉どおり、U-19日本代表に招集された柏木陽介のポジションに、練習で彼を起用したのである。
一時は感情を高ぶらせていた李も時間の経過と共に落ち着きを取り戻し、ペトロヴィッチ監督の自分に対する信頼を受け止め始めた。練習では誰よりも走り、誰よりも真剣に監督の言葉に耳を傾けた。前節の試合後に戸田が指摘した「誰かのためにもっと走らないといけない」という言葉は監督の想いを代弁したものだったが、李はプレーでそれを実践したのである。
「チームのために頑張ることで、僕はここまでやってきた。その気持ちは今でも変わらないし、それがなくなったら僕はプロとしてプレーすることはできない」
李はもともと気持ちの強い選手だ。しかし時に、その強い気持ちが空回りしてしまう時もある。この厳しいJ1残留争いの中では、熱い気持ちとクールな頭が必要だ。しかし、李はこう語る。
「僕が悪い時は、失敗するとネガティブになって、受け身になってしまう。自分の良さを出し切るためには、とにかく積極的に前に出ること。失敗してもそこで気持ちを折ることなく、アグレッシブにいきたいです」
広島に乗り込んでくる横浜FMは「ドイツで言えばバイエルン・ミュンヘンのような存在だ」とペトロヴィッチ監督が例えるビッグクラブ。今季前半はケガ人がこれでもかというくらいに続出し、リズムを崩して優勝争いから脱落してしまったが、水沼貴史監督に交代してからは5勝1分3敗と何とかペースを立て直すことに成功。エース久保竜彦が復調の兆しをはっきりと見せ、トップ下の山瀬功治が切れ味の鋭い動きを見せつけている。首位G大阪と引き分け、鹿島も撃破。強豪ははっきりと上昇気流に乗ってきた。さらに前節の鹿島戦ではマルケスも復帰。攻撃陣の陣容も充実してきた。それに、広島がJ1に復帰した2004年以降、横浜FMは広島に対して4勝1分と負けていない実績も、横浜FMにとっては好材料だろう。
個々のタレントの総和では横浜FMの方が上。しかし、広島も佐藤寿人が出場停止から戻ってくるし、U-21日本代表の青山敏弘が中国戦で自信を付けて帰ってきた。選手への信頼を揺るがせないペトロヴィッチ監督の下、伸び盛りの若手が力を発揮すれば十分に闘えるポテンシャルを広島は持っている。選手たちにかかっている重圧を振り払い、ホームのサポーターの前でアグレッシブな闘いを見せ、J1残留に向け力強い一歩を踏み出すことができるか。広島にとって非常に大切な闘いが始まる。
以上
2006.10.27 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
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