11月11日（土） 2006 J2リーグ戦 第48節
神戸 3 - 4 柏　（15:04／神戸ウイ／13,776人）
得点者：'0 鈴木達也（柏）、'44 北本久仁衛（神戸）、'50 鈴木達也（柏）、'56 ディエゴ（柏）、'58 柳川雅樹（神戸）、'80 近藤祐介（神戸）、'85 ディエゴ（柏）
★ハイライト＆会見映像は【こちら】
----------

　試合前に神戸サポーターが歌う『神戸讃歌』がかき消されるほど、相手サポーターの声がウイングスタジアムに響いたのは今季はじめてといってもいいだろう。集まった観衆は今季最多の13,776人。もちろん、神戸サポーターも負けじと声を張り上げて、スタジアム全体をチームカラーである『深紅』に染め、ビッグフラッグを掲げて選手を後押しする。キックオフ前のそうした風景から伝わってくる、この一戦の重要性。そんなサポーターの声援を背負い、ピッチに表れた神戸イレブンは堅く円陣を組み、勝利を誓い合う。「絶対に負けられない」との思いを示すように。

　だが、一瞬にして神戸は窮地に立たされる。開始から約20秒。前線へのボールを柏のMF山下がヒールパス。つめたFW鈴木のシュートは一度は神戸GK荻の手によって弾かれるものの、そのこぼれ球を再び鈴木が豪快に決め、痛恨の先制点を与えてしまう。だが落ち込む暇も与えないほど、神戸サポーターがすぐに『ヴィッセル神戸』のコール。その声に押されるかのように、選手たちは顔を上げ、負けられない戦いに再び気持ちを向ける。だが、柏の速いプレス、厳しいマークの前に思うように攻撃が仕掛けられない。点を取りに行かなければいけないとの思いの一方で、これ以上失点を与えられないといった思いが過ったのか、ラインが下がり気味になってしまう。得意のサイド攻撃も柏DFの速い寄せもあり勢いが見られない。

　それでも、ロスタイムに入り、MF三浦のフリーキックからDF北本が右足であわせて同点には追いついたことで、前半をイーブンで終えられたことは大きかったはずだ。拮抗した戦いではセットプレーでの得点が明暗をわけるポイントになりうると考えれば尚更のこと。だからこそ、このロスタイムでの１点が、後半、狼煙をあげるきっかけになることを期待させるものになったと言えるだろう。

　だが、その後半も、神戸は常に後手に回った展開となってしまう。なぜなら、50分、56分と立て続けに柏にゴールを許し、『追いかける』立場で試合を進めざるを得なかったから。それでも、負けられない思いが選手を走らせ、その思いは結果へと繋がっていく。そのとっかかりとなったのは58分にDF柳川が挙げたプロ初ゴール。MF三浦の左CKをDF坪内が頭であわせたボールが、DF柳川の右足に当たってゴール。1点差に詰め寄ると、80分には左サイドをドリブルで突破したFW近藤が、DFを振り切って放ったシュートがうまく柏GKの脇をすりぬけ同点弾を叩き込む。諦めない姿勢が生んだ、あっという間の同点劇。スタジアムは最高潮の盛り上がりをみせる。

　だが、この直後の82分におけるMF栗原からDF小林への交代が神戸に微妙なズレを生んでしまう。『守るのか、あるいは攻めるのか』。逼迫した状況ということもあり、チーム全体の意思統一を欠いたかに見えた神戸は交代直後の85分。そのズレを見逃さなかった柏MFディエゴに逆転ゴールを決められ、再びリードを奪われてしまう。加えて、ロスタイム4分を含めた残り時間の中で、同点ゴールを挙げることが出来なかった結果、3-4で試合終了。

　取られても取り返す姿勢を見せ続けた攻撃力は、十分評価に値するものだったが、その一方で、警戒していたはずの柏MFディエゴをはじめとする柏の前線の選手を捕まえきれずに4失点を食らった守備力については、今後の戦いに課題を残すことになった。

　これを受け、２位横浜FCとの勝ち点差は1、3位柏との勝ち点差は2。優勝争いはますます激化を極めることになったが、「横浜FCには絶対に勝ちます！」とMF三浦。もちろん、90分間、絶やすことなく声を張り上げ続けた神戸サポーターも、それを信じている。

以上

2006.11.11 Reported by 高村美砂