11月11日(土) 2006 J1リーグ戦 第30節
鹿島 3 - 1 G大阪 (15:05/カシマ/14,663人)
得点者:'6 マグノアウベス(G大阪)、'13 オウンゴ−ル(鹿島)、'32 田代有三(鹿島)、'86 野沢拓也(鹿島)
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カシマスタジアムに集まった赤いサポーターにとって、これほど溜飲の下がる勝利は久しぶりだろう。10冠を目指したヤマザキナビスコカップ決勝で敗れ、リーグ戦優勝争いからも脱落。10月は信じ難いことに4連敗を喫していた(第26節〜29節)。そんな鹿島アントラーズがこの日、浦和レッズと激しい優勝争いを展開しているガンバ大阪に完勝したのだ。「今日は単に勝ったわけでなく、勝つべくして勝った」と、日ごろチームに厳しいパウロアウトゥオリ監督も満足そうな笑みを浮かべた。彼らはかつての常勝軍団らしさをようやく取り戻したようだ。
2006年J1リーグも早いもので残り5試合。優勝争いは浦和、G大阪、川崎フロンターレの3チームに絞られた。すでにノーチャンスの鹿島だが「残りは5連勝のつもり」と中後雅喜が言うように、リーグ戦終盤でスパートをかけ、残されたタイトル・天皇杯獲得へ向かいたいところ。
しかし3日のヤマザキナビスコカップ決勝で柳沢敦と野沢拓也が負傷し、8日の天皇杯4回戦・Honda FC戦でも深井正樹と本山雅志が肉離れを起こすなど、チーム状態はまさに満身創痍だ。それでも野沢と本山は大事に至らず、先発のピッチに戻ってきた。この日は最終ラインの中央に岩政大樹と大岩剛、右に新井場徹、左にファビオ・サントスが陣取り、ボランチに青木剛と増田誓志、攻撃的MFに野沢と本山。そしてFWはアレックス・ミネイロと田代有三のコンビとなった。一方のG大阪は5試合ぶりに勝利を飾った前節・清水エスパルス戦と全く同じメンバーだ。
立ち上がりはJ1連覇を狙うG大阪が主導権を握った。守備力に問題を抱えるファビオ・サントスの裏を加地亮が積極的につき、中央にスペースが生まれたところに二川孝広やマグノ・アウベスらが飛び出す。そんな機動力あるサッカーは確実に鹿島DF陣を脅かした。そして開始6分、右に開いた二川からのクロスにマグノ・アウベスが飛び込み、フリーでゴール。早々と先制点を奪った。
その後もG大阪の攻勢が続くかと思われたが、鹿島は1つのミスから同点に追いつく。始まりは前半13分、野沢の左CK。岩政がタイミングよくニアサイドに飛び込んだが、これを防ごうとした橋本英郎のクリアボールがゴールネットを揺らしたのだ。鹿島にしてみれば非常にラッキーな同点弾だった。
この1点で我に返ったのか、鹿島はダイナミックな攻撃パターンを取り戻す。田代がハイボールを落とし、アレックス・ミネイロがその裏を突くといった前線のコンビがうまくが噛み合い、中盤も豊富な運動量で彼らをサポートする。特に光っていたのが本山だ。ヤマザキナビスコカップ決勝のピッチにほとんど立てなかった大黒柱が悔しさを晴らさんとばかりに猛然と走り回る。相手を寄せてボールを奪い、スピーディーな動き出しと小気味いいドリブルでチャンスを作る。小笠原満男や中田浩二がチームを去った今、ピッチ上の彼からは「自分がチームをリードしなければいけない」という強い意欲が感じ取れた。
鹿島の2点目にもその本山が絡む。前半32分だった。中盤でボールを受けたアレックス・ミネイロが左サイドを走る本山に展開。本山はダイレクトで中央に精度の高いクロスを出した。ここに走りこんだ田代が見事なボレーシュートでゴール。実にムダのない、美しい崩しで彼らは逆転に成功した。
このまま負けたら浦和との勝ち点差がさらに開いてしまう。危機感を抱くG大阪の西野朗監督は後半開始と同時に播戸に代えて寺田紳一を投入。3−5−2から4−4−2への布陣変更し、よりサイドを使う攻めを試みた。
後半の立ち上がりは寺田や家長昭博がサイドをえぐるなど西野采配は当たったかに見えた。しかしアウトゥオリ監督もあらかじめ手は打っていた。後半から増田に代えて中後を入れ、ボランチを3枚にする形を取っていたのだ。これによって青木が最終ラインに入る余裕が生まれ、ゴール前の守りが一層強固になった。G大阪がクロスを次々と蹴りこんでも鹿島守備陣はキッチリと対応。危ない場面をほとんど作らせなかった。唯一のピンチが37分にマグノ・アウベスのシュートがDFに当たってゴール前にこぼれたシーン。ここに寺田が飛び込んだが、彼のシュートは枠を外し、G大阪は絶好の同点機を逃した。
さらに後半40分には橋本が2枚目のイエローをもらって退場。最悪の展開に陥ったG大阪に追い討ちをかけたのが残り時間4分というところでの野沢のダメ押し点だった。右に開いた田代からのクロスにドンぴしゃりのタイミングで飛び込んだ野沢は右足を思いきり振りぬく。次の瞬間、シュートが決まり、真っ赤なサポーターも激しく揺れた。
シュート数こそ13対20とG大阪を下回ったが、試合運びのうまさは鹿島ならではだった。復活した本山の存在感と創造性、伸び盛りのFW田代の的確なポストプレーと決定力、そして15日のサウジアラビア戦の日本代表メンバーに初招集された野沢のゲームメークとフィニッシュなど、個人個人の優れた部分も随所に出た。このように攻守が噛み合った戦いを続けられれば、天皇杯タイトル獲得も決して不可能ではない。鹿島イレブンにとっては先につながる大きな一勝となった。
逆にG大阪には痛すぎる敗戦だ。清水戦で勝てない日々から脱出したのに、今回再び黒星地獄に舞い戻ってしまった。しかも次節は橋本が出場停止。西野監督は「やっているサッカーは悪くない」と前向きに話すが、いかにしてディフェンディングチャンピオンらしい勝負強さを取り戻すのか。残り4試合で彼らの真価が問われる。
以上
2006.11.11 Reported by 元川悦子
J’s GOALニュース
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