●Jユースサハラカップ2006 決勝トーナメント準々決勝
第1試合
三菱養和 5-3 大宮(11:02/長居2/300人)
第2試合
名古屋 3−1 鹿島(14:01/長居2/275人)
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Jユースサハラカップもいよいよ佳境の準々決勝。昨年までの決勝の舞台・長居スタジアムが見下ろす大阪長居第2スタジアムでは、寒空を吹き飛ばす熱のこもったプレーが随所に展開された。
●第1試合
三菱養和 5-3 大宮
得点:6'仙石玲(三菱養和)16'仙石玲(三菱養和)22'豊田卓也(大宮)42'神村奨(三菱養和)57'豊田卓也(大宮)81'渡部大輔(大宮)98'神村奨(三菱養和)101'小暮郁哉(三菱養和)
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春のクラブユース選手権予選で顔を合わせた両者は手探りで序盤を進めたが、三菱養和のセットプレーでの先制点が試合を大きく揺り動かす。FW神村奨の仕掛けで得た左のCK。MF大竹隆人が右足で巻いた軌道が大宮選手の思ったより鋭かったのか、DF仙石玲だけがしっかりと合わせ、ネットを揺らした。
反撃に拍車がかからない大宮の間隙を縫って、養和はCKから再び大竹が仙石の頭に合わせ追加点。「(野球で)フライを獲るのが得意だった」という仙石も素晴らしいが、2失点目は大宮の選手も集中を欠いていた。だが、その失点を挽回するように大宮もセットプレーから反撃の狼煙を上げる。
左MFの横田和貴が得た右CKからMF川辺隆弥がキック。ファーでMF柿沼貴宏が折り返し、豊田が中央で蹴り込んだ。勢いを得た大宮はキープとサイドチェンジを織り交ぜてスペースを作り、何度もペナルティエリアに迫る。しかし、「エリア内で点を取るためのシナリオが不足していた」(山崎茂男監督)ためかゴール際でDF陣に阻まれ、逆にカウンターから神村にミドルを決められ再び2点差となった。
後半の養和は時間をかけたボール回しを意識するが、57分に大宮は中央の深い位置で受けた豊田がDFを引きつけてサイドに展開。そこから柿沼のクロスに豊田が再び飛び込み1点差とした。更にMF中里壮太の30mショットがバーを直撃するなど攻勢を増す大宮は81分。左SB石津遼太郎のフィードがDF前の渡部に渡り、スライディング気味に放った左足のシュートはブロックをすり抜けゴール右に転々と吸い込まれた。
両者ともその後の決定機をものに出来ず、試合は延長へ。得点はまたもセットプレーだった。6分にハンドで中央寄りのFKを獲得した養和。藤本のキックのリバウンドを左で拾った大竹が、左足でファーサイドへアーチを描くと、神村が豪快にゴール右隅に決めた。リスクを冒して攻めるしかない大宮は中央に柿沼を入れるが、パワープレーに前線の足が付いていかない。逆にカウンターから小暮郁哉に会心のミドルを許し、これが最後の得点になった。
これで川崎F、G大阪、大宮を破った養和。準決勝まで来ただけでも1つの快挙だが、実力は他の3クラブに決して劣っていない。選手達も目標を優勝に定めたようだ。健闘の末に惜しくも敗れた大宮も、地道な強化が実を結びつつある。大分戦の負傷で欠場した吉田和也に代わりキャプテンマークを巻いたGK松本渉も「(この敗戦を)教訓として1、2年生が来年に生かしてくれれば」と後輩にエールを贈った。
●第2試合
名古屋 3−1 鹿島
得点:20'小谷野顕治(鹿島)54'酒井隆介(名古屋)63'久保裕一(名古屋)79'久保裕一(名古屋)
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リベンジに意欲を燃やす鹿島の攻撃を名古屋がどうせき止め、持ち前の流動的なコンビプレーを繰り出せるかが勝負のポイントだった。「前から来るのは分かっていた」と名古屋のキャプテン吉田麻也。やや落ち着いた立ち上がりを見せる名古屋に対し、「ボールをさばける」(河崎淳一監督)佐伯大成が中央から左右に配球し、両サイドの小谷野顕司と忰山翔が頻繁に入れ替わり縦に仕掛けた。
慎重に対応していた名古屋だが、酒井隆介のミスパスからゴールを襲った諸岡辰哉を吉田が倒し、およそ20mのFKを与えた。小谷野の右足キックがクロスバーに直撃すると、リバウンドを再び小谷野が右足で叩き先制。だが、経験豊富な名古屋の選手達は動じなかった。相手の攻撃をFWにはDF、MFにはMF、DFのビルドアップには3トップが対応しながら、両ウィングの花井聖、新川織部のボールキープで徐々に盛り返す。30分過ぎにはMF福島新太が華麗なターンで忰山をかわし、左からクロス。リバウンドから右サイドバックの磯村亮太がミドルを放ったが、惜しくも枠を逸れて行った。
44分にも、花井から新川への危険なラストパスはDF畑中亮人の渾身のクリアに阻まれたものの、名古屋はいいリズムで後半を迎えた。鹿島が右から攻撃をした直後の10分に、MF福島新太を剛脚で追い越した左サイドバックの酒井隆介が一気のドリブルから右足を振り抜き、失点を招いたミスを帳消しにする同点ゴールを決めた。
選手交代にかける河崎監督だが、リズムに乗った名古屋の逆転は自然な流れだった。FW久保裕一のポストからMF西山洋平が相手DFと競りながら戻したボールを久保が右足でゴール左へ突き刺した。鹿島は攻撃的な選手を総動員して活性化をはかるが、むしろ3トップに攻撃のスペースを与えてしまい、彼らの攻撃によって線を断ち切られた。
そして34分、リスタートを焦ってボールを失った鹿島に絶望的な失点をプレゼントしたのはまたもや久保だった。新川が右サイドを持ち上がると、丁寧なパスを右足できっちり決めた。2分後にはハットトリックを意識して決定機に外してしまったが、鹿島が付け入る材料にはならなかった。焦りから自陣でパスミスを鹿島がしてはDF陣が何とか防ぐ状況が10分近き、タイムアップを告げる笛が寒風を切り裂いた。
「長短のパスをうまく使ってやれていた」と朴才絃監督。持ち前の技術に加え、状況判断も名古屋が上だった。FC東京戦は厳しい戦いが予想されるが、彼らのメンタリティを持ってすれば勝機は十分だ。一方、鹿島の河崎監督は無念の表情を浮かべたが「厳しいゲームを耐えてベスト8まで良く来た」と選手への労いを忘れなかった。そして、また多くの興味深い素材を揃える来季へのチーム作りに意欲を見せていた。
以上
2006.12.10 Reported by 河治 良幸
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★次回の対戦
Jユースサハラカップ2006 決勝トーナメント準決勝
12月17日/長居2
11:00 三菱養和 vs 広島
14:00 F東京 vs 名古屋
J’s GOALニュース
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