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【Jユースサハラカップ2006 決勝 広島 vs F東京:レポート】大会の歴史に残る名勝負。粘り強く戦った広島が3年ぶり3度目の優勝を飾る。(06.12.24)

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●Jユースサハラカップ2006決勝戦
12月24日(日)/13:03/神戸ユ/2,660人
広島 2-0 F東京
得点:81' 保手濱直樹(広島)87'中野裕太(広島)
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 12月24日、クリスマス・イブの日にJユースサハラカップ決勝は14度目の決戦を迎えた。所は神戸。対峙したのは広島とF東京の東西両雄。多くのサポーターの視線と声援が注がれるなか、大会の歴史に残る名勝負が展開された。

 立ち上がりから先手を取ったのは広島だった。守備の狙いは明確。標的となったのは前線でターゲットとなり、パス回しの中心を担うFW森村昂太だった。「まず6番(森村)。とにかく彼が起点になるのがF東京」と広島・森山佳郎監督。ボランチが低いポジションを取って森村に入るボールに対し、センターバックと連動して挟み込む。「1週間ビデオを見て森村くんを研究してきた」とGK兼田亜季重。「落としどころも受けるところも全部狙われていた。見事にはめられました」と森村は言う。得意の左足も広島側が徹底的にケア。前半の森村は『個』で見せることもあったが、チームの一部としての機能性は失っていた。攻めでも、中盤の両翼が素早く押し上げ、サイドで優位を作り出す狙い通りの形が頻出。序盤は広島のペースだった。だが、F東京も最後の一線ではDF陣が体を投げ出して阻止。得点を許さない。「前半はよく我慢してくれた」とF東京・福井哲監督。前半の半ば過ぎからはようやくF東京も立て直し、サイドを使った攻撃も見られるようになっていた。

 ハーフタイム、F東京ロッカールームでは「もっと周りを見ろ」と森村が福井監督から一喝されていた。「目が覚めました。自分が自分がとなってしまっていた」と森村。彼へのサポートの徹底も同時に指示され、F東京の攻撃は本来の形を取り戻していく。森村は集中マークにも動じず、ボールを受けてパスをさばき、ときには一人で局面を打開する。2度シュートがバーとポストに当たったのは不運だったが、試合後には「6番はできる」「うまい」と広島側からも賞賛の言葉が漏れたほど。ベンチワークも鋭かった。次々とカードを切り、ピッチをサポート。特に左利きのテクニシャン、大竹の投入は大きな効果を上げたが、『得点』という成果はついてこなかった。

 一方、広島ベンチは我慢の一手だった。決定機を作られても、「絶対に入らんと信じていた」と森山監督。ピッチに立つ11人への信頼。これに選手たちも応えた。特に最終ライン中央の2枚、佐藤拓と篠原聖の研ぎ澄まされた集中力と闘争心に由来する奮戦ぶりは感動的ですらあった。「あいつら、ホントに成長した」と森山監督。"広島の弱点"と揶揄されたことさえある二人だが、ここに来て"広島の強み"になっていた。最後の最後で粘って体を張り、ゴールは割らせない。前線もそれに応えて、チャンスを作る。気持ちが生み出した一進一退の攻防戦。「これは延長戦もあると思っていた」という森山監督の思いは、ピッチを見守っていた者全員に共通するものだったに違いない。だが試合は90分で終わることになる。

 81分のことだった。広島FW中野裕太が放ったシュートはF東京DFを直撃。ボールは上へと舞い上がる。GKの守備範囲内。「僕は追うのをあきらめていた」ともう一人のFW平繁龍一は言う。だがあきらめてない男もいた。この試合、というより、この大会でどちらかというと守備を重視してきたボランチの保手濱直樹だった。飛び出したGK権田修一と保手濱が交錯。主審の笛は鳴らない。素早く態勢を立て直した保手濱は無人のゴールへ流し込むだけでよかった。

 微妙な判定に思えてしまうゴールが選手たちから冷静さを奪ってしまった。決勝トーナメントに入ってから初めての失点だったというのもあるのだろう。ロスタイムを含めて10分以上の時間があり、焦る必要はなかった。ただ、ここでは若さが出てしまった。「失点のあと、蹴るばかりになってしまった」とMF中野遼太郎は悔やむ。広島は準々決勝と同じく横竹翔が最終ラインに入ってF東京のパワープレーに対抗。ゴールを割らせない。逆に87分には、理想的なカウンターから平繁が抜け出し、最後は中野。自慢の2トップが決定的な2点目を叩き出した。

 2-0のまま、試合は終了。広島が3年ぶり3度目の優勝を飾った。「こんなに苦しかったことも、こんなにうれしかったこともない」と森山監督。「自分が就任して、練習試合含めて春からこんなに負けたことはなかった」と監督も認めるほど"弱い"と言われた広島。だが、最後の1カ月で、彼らはチームとして完成した。今大会、彼らは紛れもなく強かった。

 14回目のJユースサハラカップはこれで終幕を迎える。各チームの3年生たちには、Jリーグへ行く選手もいれば、就職してサッカーから離れる選手もいるし、進学してなおもサッカーを志す選手もいて、サッカーを辞めて医者を目指すという選手もいる。それが冬の大会だ。

 願わくは、今大会に参加した全ての3年生たちの未来に幸多からんことを。

以上

2006.12.24 Reported by 川端 暁彦(サッカー新聞エルゴラッソ編集部
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