5月13日(日) 2007 J1リーグ戦 第11節
甲府 1 - 3 川崎F (14:04/小瀬/12,686人)
得点者:'3 増嶋竜也(甲府)、'10 ジュニーニョ(川崎F)、'26 マギヌン(川崎F)、'56 森勇介(川崎F)
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「久しぶりにこういう負け方をした感じがする」
記者会見で大木監督はこう話し始めた。「こういう」とは「自分たちのミス」を意図している。「自滅」という表現は厳しすぎるのかもしれないが、後味はよくなかった。開始3分の増嶋竜也の先制ゴール。始まりは拍子抜けするほど簡単に点が入った。もちろん、川崎Fを相手にして最後まで余裕で試合を見られるとは思っていなかった。ただ、少なくとも、もう少し長い時間楽しめるはずだった。
先制から7分後に甲府DF(増嶋)とGK(阿部謙作)の判断ミスが重なる。増嶋は早めにGKに返せばよかったボールを持ち過ぎ、阿部もそのボールを川崎FのFW・黒津勝が狙っているにもかかわらずトラップして処理を誤った。そして、ボールを失いジュニーニョにワンタッチで無人のゴールに蹴りこまれる。このとき大木監督は“甲府が攻めているときにマギヌンが空いている”とメモを書いていた。ピッチから目を離しても問題ないシーンだったが、「その間に1点入ってたね」と半ば呆れた表情で話した。
先制ゴールと、立ち上がりから圧倒的なポゼッションができたことによる過剰な余裕(慢心)がもたらしたミス。ただ、時間も10分と早く、得点は同点。試合後はこのミスを笑って話せるはずだった。しかし、4−4−2のダイヤモンドで臨んで来た川崎Fは、中村憲剛を右サイドハーフ、黒津を左サイドハーフに入れ、ダブルボランチに谷口博之、原田拓を入れる形に修正してきた。立ち上がりは川崎Fが前からディフェンスをしないことが意外だったが、「しない」のではなくマークを掴まえきれていなかったのだ。しかし、この修正で川崎Fの前線からのプレスが徐々に機能し始めた。と、感じ始めたときに甲府は2点目を失う。26分にカウンターで3対2の場面を作られ、最後はマギヌンに決められる。甲府の選手もサポーターも、“やられている気がしないのに、負けている”気分になっていたのではないだろうか。しかし、これが個の差だ。
「甲府ってみんなで攻めるから、ボールを取られると守備の選手が足らなくなりますね」
サッカーの仕事を始めて間もないフリーの女性アナウンサーが隣の記者席で言う。そう、みんな気が付くことで、川崎Fもそこを突いている。甲府もそれは承知なのだが、今日はそれが大きなリスクになってしまっている。
「サッカーってどこのチームもリスク覚悟で攻撃するんですか?」
「短いパスでボールを動かした方がいいんですか?」
甲府のことを一寸は知っているつもりでも、素朴な質問は強敵。即座に端的に答えられない。
「人数をかけて短いパスを…ゴニョゴニョ」と答える。後半は川崎Fサポーターの声援がアシストしてかき消してくれた。「詳しくは都内の静かに話が出来る場所で…」とは言えなかったけど、頭の中を整理する必要性は感じさせてもらった。
前半はこのまま1−2で終わるのだが、この試合ではストライカー(候補)・鈴木健太に注目して見ていた。前半だけでも3回は決めて欲しいシュートシーンがあった。シュートシーンがあるということはそれだけで素晴らしいことだが、彼のポテンシャルなら「ゴールを決める」ということを要求するのが当然。また、それ以上に気になるのはペナルティエリアの直ぐ外でDFと1対1になっているにもかかわらず、勝負を避けてパスをしたシーンだ。ここで勝負をしなければストライカーにはなれない。心の片隅にある―逆サイドにフリーの味方がいても勝負するような―傲慢な自信を増幅させて欲しい。
後半は、山崎光太郎(57分)、保坂一成(60分)、宇留野純(79分)と甲府は攻撃的な選手を投入する。山崎のストライカー振りには、同点そして逆転と期待を持ったが、山崎が入る直前に森勇介に決められた3点目はボディーブローとして効いた。そして、焦りと疲れからか、徐々にミスが増え、頑張っているけど充分に機能していない状態で90分を迎えてしまった。逆に、川崎Fは難しい立ち上がりだったが、90分後には勝っている。これが強いチームの勝ち方。ジュニーニョは別格だが、個のレベルの高さも感じさせた。
ただ、甲府は川崎Fと同じサッカーは出来ない。個でも勝負ができるチームとは違うし、個と個の勝負に持ち込んでは勝てない。3人目の動きを含めた、リズムのあるパスワークでの局面打開、攻守の切り替えの早さ、ファーストディフェンダーとそれに続くディフェンスの連動をハイプレッシャーの中でも90分間やりきれるようになるしか、強くなる道は無い。改めてそう思ったときには、記者席には誰もいなくなっていた。
以上
2007.05.14 Reported by 松尾潤
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