93年5月15日に国立競技場で開幕し、16日に各地で熱戦を繰り広げ、日本サッカー史に新たな歴史を刻み始めたJリーグ。当時からJリーグに携わっていた山内雄司氏(元週刊サッカーダイジェスト編集長、現在フリーライター)が、当時の開幕翌日の様子をレポート。Jリーグが始まったばかりのあの頃の歓喜がよみがえる。
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まだ頭がぼうっとしている。歓声や嬌声が耳の奥でこだまする。目を瞑れば、はためく旗で埋め尽くされ、生き物のようにうごめいていたスタンドと、そこに集った信じられないくらい大勢の人々の輝いた顔が、瞼に映し出される。これまでも幾度となく美しい場所や風景に出会ってきた。だが、この2日間に見た光景ほど特別な感情を抱いたことはない。ぎっしりと詰まったスタジアム全体から発散された熱を肌で感じながら、心は中空をフワフワと漂っている感じ。音の洪水、光の反射、目が痛くなるほどのピッチの緑、そして躍動する選手たち。すべてが美しかった。すべてが心に染み入った。夢のような2日間だった。
「ここにJリーグの開幕を宣言します」
川淵チェアマン(当時)の高らかな声に、思わず涙が出そうになった。何をしたわけでもないのに、私も誇らしげな気分になった。光と音のセレモニーに、ぽかんと口を開けて見入ってしまった。いかんいかん、今日からはオレもプロなんだ、と気を引き締める。
だが、ヴェルディ川崎と横浜マリノスの記念すべきリーグ緒戦では、ただただ圧倒されてプロもへったくれもなくなった。
「おおッ、そこだっ、スッゲー」
マイヤーのJリーグ初ゴールには鳥肌が立った。まったくサポーターやファンたちと変わりない。正直言って、冷静にペンを走らせるなんて自分にはできそうもない。おっと、さっき気を引き締めたばかりなのに。いかんぞ、そんなことで開き直っては。
だが、一昨日を上回る、もっと凄い衝撃が待ち受けていた。昨日のカシマスタジアムには、まさしく全身でJリーグ開幕の喜びを表現する「神」がいた。鹿島アントラーズと名古屋グランパスエイトの一戦。もちろん、ジーコがどれほどの選手か知らなかったはずもない。アントラーズにいること自体が夢か幻であるのに、彼は住友金属を戦う集団に仕立て上げ、昨日の開幕戦の舞台にいた。選手の誰もがそのピッチに立てる栄誉のためか、少し緊張した面持ちだったが、ジーコだけは違った。大舞台を思い切り楽しんでいた。
こぼれ球を豪快に右足で叩き込んだゴール、急激に曲がりバーを叩きながらゴールに飛び込んだフリーキック、そして走りこんでの何がなんでも決めてやろうとする気迫のこもったボレー。ひとつだけでもスーパーなのに、スーパーを3つも並べてハットトリック。興奮を通り越して虚脱状態となってしまった。
おおげさではなく、この2日間は私の人生の宝となるだろう。今後も折につけ、思い出すことになるはず。何か困難にぶち当たった時、私は目を瞑りさえすれば、この世で一番美しい光景に出会うことができる。心行くまで素晴らしい世界に酔いしれることができる。まったく幸せ者だと思う。
これからもJリーグは、きっと様々な美しい光景を、私の胸に、脳裏に刻みつけてくれることだろう。この2日間のように、どんどん宝物が増えていく。本当に幸せな時代を生きれられることになったものだ。私も選手に負けず、早くプロとして独り立ちし、ずっとともに生きていこうと誓った。
これから、Jリーグとともに。
Reported by 山内雄司
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