12月8日(土) 第87回天皇杯5回戦
鹿島 2 - 1 甲府 (13:00/カシマ/6,558人)
得点者:28' 田代 有三(鹿島)、89' 久野 純弥(甲府)、109' 柳沢 敦(鹿島)
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鹿島にとって内容・時期で「難しい試合を勝った」ということで意味の大きい勝利。甲府にとっては追い詰めながらも最後は地力の差を見せ付けられ、「決定力のあるストライカーがいれば…」という降格の最大の理由を覆すことが出来なかった敗北。しかし、希望は繋いだ。
立ち上がりから主導権を甲府が握った。握っていたように見えた。しかし、「120分を考えたとき、殆ど主導権を取っていた」とオズワルド・オリヴェイラ監督は会見で話した。そして、厳しい試合になった理由については「(鹿島の選手がJ1優勝でモチベーションが下がったのではなく)相手の健闘を称えなければならないという気持ちもある」と話した。やや相反するようにも聞こえるかもしれないが、鹿島としては「甲府にボールを回されたのではなく、回させた」という認識があるのだろう。甲府としてはそれを素直に認めることはないが、シュート数でも決定機の数でも鹿島が上回っている。この視点から見れば、鹿島のゲームプランから大きく外れていなかった内容ということになる。
しかし、今季ここまで4回対戦した甲府の印象とは少し違ったのではないだろうか。決定力は過去の対戦と変わらなかったかもしれないが、鹿島が中盤でボールを奪ってカウンターを仕掛けるチャンスはそう多くなかった。それは、甲府が以前ほど狭いエリア(クローズ)でボールを繋ぐことに固執しなかったことと、ロングボールとサイドチェンジ(オープン)を選択することを増やしたからだ。また、3トップの頂点に入る羽地にボールが収まったことも中盤でボールを失わなかった理由だった。ただ、クロスを入れるタイミングが遅い場面が少なくなく、ペナルティエリア付近までボールを運んでもシュートを打たずに、打てずにボールを失うことが多かった。10分に桜井がパントキックを茂原に繋ぎ、茂原が内田をかわしてゴール前の大西に合わせた場面もシュートに至らなかった。甲府は優位に試合を進めた立ち上がりの時間帯にゴールを決めることが出来なかったことが悔やまれる。
立ち上がりは守備に追われる時間が多かった鹿島だが、慣れてくると「回させる」余裕が出てきた。先制点は28分、守備的MFの青木の攻撃参加から生まれる。右サイドで野沢からボールを受けた青木が入れたクロスを、田代がきれいに頭で合わせる。甲府はマーカーがいたが、ボールウォッチャーになってしまったのか、身体すら寄せずに田代のヘッドを許した。GKの桜井はこのシーンを悔やむ。
「(ボールを持っていた)青木選手の方を見て、ゴール前の状況をチラッと確認した瞬間にクロスを蹴られた。ゴール前を見るタイミングが悪かった。マークできなかったDFと自分のミスの2つが重なると失点してしまう。あのクロスは僕が出ることが出来た」
今シーズン2回目の先発の桜井はDFとの連携や試合勘という意味では不利な条件だったが、攻撃的なパントキックやスローで桜井らしさを発揮していた。しかし、ミスを鹿島のレベルは見逃さなかった。その後も鹿島は決定機を作るが今度は決定力というパーツ不足で追加点を取れない。甲府は36分に石原がゴール前に走り込んだ羽地にグラウンダーのクロスを入れたが、僅かにタイミングが合わずに同点ゴールには至らない。
後半は甲府の運動量がやや落ち始め、鹿島がボールを奪って決定機を増やし始める。甲府は桜井の好セーブと鹿島のシュートミスなどで失点を重ねることはなかったが、攻撃ではなかなかツボにはまったラストパスが出ない。78分に甲府が久野を、79分に鹿島が柳沢を入れてお互いに攻撃に刺激を入れる。甲府は第33節(柏戦)以降、先発起用に慣れてきた羽地が機能して流れを作るが、鹿島はもう一歩先のシュートまで到達する。しかし、そこには桜井が立ちはだかり終盤までスコアは動かない。しかし、82分に木村を、85分に國吉を入れた甲府は、久野を含めた高卒ルーキーの3人が運動量をチームに加えてロスタイムに夢を繋げる久野の同点ゴールが決まる。
延長戦では興梠のキレのあるドリブルに決定機を作られて苦戦を強いられる甲府。ディフェンダーは足がつり始めていたが、懸命に鹿島の攻撃を食い止める。しかし、延長後半の109分にダニーロにフリーでクロスを蹴らせてしまい、柳沢が確実に決めて再び甲府を突き離す。これがチャンピオンチーム・鹿島のレベルであり、底力。「PK戦になれば自信があった」桜井だが、甲府には同点に追い付く力と運はなかった。
試合終了の笛とともに甲府の特別な3年間が終わった。J1優勝チームとJ2降格チームの5回戦がそれほど注目を集めていなかったことはTV中継がないことと6558人という数字に表れているが、甲府から見れば一つの時代の終わりを告げる特別な試合になった。「たけし軍団」とサポーターに呼ばれたチームの終わり。残留、移籍と今後の去就では大きな違いが出るだろうが、みんな「たけし軍団」が好きだったし誇りを持っていた。オリヴェイラ監督は「J1に残ってもおかしくない内容」と言ったが、その餞別を秘めた自信に変えて、現実を受け止めなければならない。前進するために。Jリーグという希望のステージは来年も続いている。
以上
2007.12.09 Reported by 松尾潤
J’s GOALニュース
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