12月9日(日) FCWC
エトワール・サヘル 1 - 0 CFパチューカ (14:45/国立/34,934人)
得点者:85' ムサ・ナリー(エトワール・サヘル)
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「ボールを支配すればいいわけじゃない。パスを5〜6回、回すとゴールが入らないというデータもある。今のサッカーでは2〜3回のパスから点が決まっている。我々もチュニジアで75%の支配率で試合をしたのに負けたことがある。パチューカもそうだった」
会心の勝利を収めたエトワール・サヘルのマルシャン・ベルトラン監督の試合後コメントが、この一戦を雄弁に物語っていた。
ボール支配率はパチューカの64%に対し、エトワールは36%。シュート数も12対11(うち枠内シュートは7対5)と、やはりパチューカが上回っていた。FWヒメネス(19番)やMFアルバレス(7番)らの個人技、ワンツーやトライアングルパスを使った華麗な攻めなど、内容面でもパチューカは見る者を魅了した。それでも勝てなかった。
それがサッカーというものなのだ。
「必ずしも強い方が勝つとは限らない。今日の試合はその証拠じゃないか」と、ベルトラン監督はさぞかし満足そうだった。
7日から始まったFIFAクラブワールドカップ(FCWC)。9日にはアフリカ王者と北中米カリブ海王者が激突した。2005・2006年大会は全試合がナイターだったが、この一戦は14時45分開始のデーゲーム。穏やかな陽気に誘われて、3万4934人の観衆が東京・国立競技場に集まった。観客動員の面を見ても、この時間設定は成功したといえる。
若い力でアフリカを勝ち抜いてきたエトワール。予想された3−6−1ではなく、今回は4−4−2の布陣でのぞんできた。軸となるのは20歳のエース・シェルミティ(9番)、ベナン代表のオグンビィ(25番)、センターバックを務めるキャプテンのゲザル(2番)ら。いずれも26歳以下の選手たちだ。対するパチューカは3−5−2。2トップにアルゼンチン人FWヒメネス、メキシコ代表のカチョが陣取り、背後からアルバレスらスピードと技術のある選手たちがサポートする。
「パチューカは我々より大舞台経験が豊富で実力的にも上」と分析したエトワールのベルトラン監督は、自陣に引いて守備を厚くし、少ないチャンスから1点を狙う戦い方を採った。立ち上がりの時間こそ堅さの見られたパチューカだったが、じわじわとゲームを支配。華麗なドリブルやパスワークなどを存分に発揮し始める。彼らの創造性ある攻めは観衆をワクワクさせたに違いない。メキシコからやってきた大サポーターも「Si,Se puede(やればできる)」の掛け声などでパチューカの攻撃サッカーを大いに盛り上げた。それでも彼らは決め手を欠いてゴールをこじ開けられず、前半は0−0で終了する。
45分間は一方的に押しまくられたエトワールだが、守りきったという意味では「してやったり」の展開だったはずだ。そして後半は少しずつペースアップし、チャンスをつくり始める。シェルミティが「後半はトップに立って攻めようと思った」と話すように、彼とベンディファラー(28番)のFW陣も積極的に前線へ飛び出す。後半3分のベンディファラーのシュートなどは、パチューカの守護神・カレロの好セーブがなければ、確実に入っていただろう。
やや守勢に回りつつあったパチューカだが、後半20分頃から再び勢いを取り戻す。29分にはヒメネスのFKが相手GKバルブーリに弾かれたところにDFマンスールが詰めゴール。とうとう均衡が破れたかと思われたが、残念ながら判定はオフサイド。35〜36分に得た3本連続CKのチャンスも得点に結び付けられない。「今日、天は我々が負けることを選んだ」とエンリケ・メサ監督も嘆いたが、この日はつくづく運がなかった。
そんな相手を奈落の底に突き落としたのが、エトワールのガーナ人MFナリー。後半40分、ぺナルティエリア内でタメを作ったオグンビーが背後から飛び込んできたナリーにパス。彼は思い切りのいいミドルをゴールに叩き込んだのだ。一発のシュートが全てのディテールを打ち砕く恐ろしさを痛感させる1点だった。
試合内容だけを見れば、間違いなくパチューカが勝っていた。それほど彼らのイマジネーションあふれる組み立ては見事だった。彼らのサッカーがFCWCの舞台でもう見られないのも残念で仕方がない。
けれども、エトワールには北中米カリブ海王者を上回る「堅守」があった。185cmを超える高さを持つゲザルら4バックは強さと安定感を誇り、最後まで相手の猛攻を跳ね返し続けた。鉄壁の守備は準決勝進出に相応しかった。そしてチーム全体がベルトラン監督が考えた通りの「一発勝負の戦い方」に徹した。その集中力は勝者に相応しかった。
「勝利への執着心」も賞賛に値する。劣勢に回る時間が長くても、つねに体を張り、走り、ボールを追った。試合終了の瞬間、ベンチ全員がピッチに飛び出し喜びを爆発させる姿から、いかに彼らがこの大会に全てを賭けているかがよく伝わってきた。
準決勝への挑戦権を得たエトワール。次なる相手は南米王者のボカ・ジュニアーズだ。「かつてマラドーナのいたクラブと対戦できることは非常にうれしい」とベルトラン監督は話したが、「その後の相手がACミランだということを夢見てしまう」という欲もチラリとのぞかせた。果たして彼らはこの勢いで台風の目になるのだろうか…。
以上
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