12月23日(日) 第87回天皇杯準々決勝
F東京 0 - 2 広島 (15:00/熊本/5,148人)
得点者:13' 柏木陽介(広島)、37' 駒野友一(広島)
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3人目の動き。それこそペトロヴィッチ監督が心血を注いだ「広島のサッカー」である。そしてその動きを、90分間にわたって体現できるタレントこそ、「広島のダイヤモンド」とペトロヴィッチ監督が信頼を寄せる柏木陽介だ。
逆に言えば、柏木の調子は「走りながらボールを引き出せているか」で測ることができる。リーグ戦終盤、柏木は足下でボールを受け、一度止まってからドリブルを仕掛ける回数が増えていた。つまり、「3人目」で走ってチャンスをつくることができなかったことが、後半の柏木の苦悩を導いた。
しかしその苦悩は、もう晴れるだろう。彼が今日決めた1得点1アシストは、いずれも「3人目の動き」でボールを引き出した結果、生まれたものだからだ。
13分、やや引いた位置で森崎和幸がボールを奪って縦パスを出す。そのボールを受けた柏木は、左サイドでフリーとなっていた森崎浩司にパス。この時、森崎浩の視界には佐藤寿人がいた。
「寿人とアイコンタクトができていた」と言う森崎浩は左足でクロス。ボールは正確にファーサイドの佐藤へ。F東京の最終ラインは、当然、佐藤に意識を集中した。
しかしその直前、「広島のダイヤモンド」はスタートを切る。そして、佐藤とは逆のサイドにできたスペースに全速力で走った。F東京守備陣は、その柏木の動きを捕まえられない。
佐藤には、その動きが見えていた。「陽介がフリーになっていたから、シュートではなくパスを選択した」と、彼は言う。森崎浩司・佐藤寿人というパッサーと受け手だけの関係だけでなく、そこに「3人目」の柏木が絡んだこのゴールは、広島の理想だ。
37分のゴールもまた、「広島のサッカー」から生まれた。
下田崇のキックに対し、服部公太がジャンプ。「公太さんがDFに競り勝ってくれると信じていた」という柏木の想いが実り、ヘッドから落とされたボールは走っていた柏木の前に落ちた。これもまた、パッサー・下田と受け手・服部に柏木が絡む「3人目」の動きだ。
柏木、ドリブル。そこにクロスするように、平繁龍一が走る。その動きが気になり、DFは柏木に対してアタックに行けない。
柏木は2人のDFを引きつけ、タメをつくる。
勝負か。
いや、パスだ。
ボールが転がる先には、駒野友一が長い距離を走ってあがってきていた。
広島2点目。ここでも3人目の動きが出て、さらに平繁・駒野のフリーランニングが絡む。たくさんの選手が一つのボールに関わっていく「ペトロヴィッチ・サッカー」が炸裂したゴールだ。
前半のF東京にもチャンスはあった。29分の鈴木のシュートがバーに当たり、32分は同じく右クロスを受けた川口が、枠をなめるようなシュートを放った。右サイドから攻め、逆サイドでシュートを打つ形が機能した。
しかしその後は、守備を修正した広島の前にF東京は沈黙する。特に森崎和の素晴らしい予測と判断の前に、決定機をつくることもできなかった。
50分、1トップに起用した川口信男をあきらめ、原博実監督は平山相太を投入。さらに浅利悟をアンカーボランチの位置に投入し、攻撃力のある梶山陽平と今野泰幸の位置を高くした。63分には、コンディションが良くないルーカスも起用し、3−5−2にシステムを変更して攻めに攻めた。だが、後半だけで10本のシュートを放ったものの、ゴール前を固めた広島の集中力の前に決定的なシーンをつくることができない。3点目こそ奪えなかったものの、広島は落ち着いて闘い抜いて快勝。2002年以来の天皇杯ベスト4進出を決めた。
「どうしてもこのチームで国立の舞台に立ちたい。そのためには、G大阪に勝つしかない」
この日のヒーロー・柏木だけでなく、駒野も佐藤も森崎兄弟も口を揃えた。J2降格という屈辱にまみれた広島の選手たちが、自らの誇りを回復するためには、元日の国立で天皇杯を掲げるしかない。その一心でチームがまとまっているから、集中も切れないのだろう。「今の勢いなら、強豪・G大阪に対してだって『格下』にはならないはず」と、ボランチとして獅子奮迅の活躍を見せた森崎和幸は言う。
F東京の攻撃も決して悪くはなかった。しかし、梶山やルーカスが変化をつけはしたものの、広島の守備を崩すだけの工夫が今一歩。試合終盤には焦りから攻撃が粗くなってしまった。ただ、F東京が見せた果敢な攻撃精神は、見るものに熱いものを感じさせたことも事実。原博実監督が植え付けたこの攻撃サッカーがクラブの次の歴史にどう受け継がれていくのか。来季、楽しみに見守っていきたい。
以上
2007.12.23 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
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