1月1日(火)第87回天皇杯決勝 広島 vs 鹿島(14:00KICK OFF/国立)
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J2陥落チームがその年の天皇杯決勝に進出したのは、2002年1月1日のC大阪以来。その試合は、0−2とリードされたC大阪が追いつくという波乱の展開だった。しかし、優勝したのは清水。つまり、歴史上、J2降格チームが優勝したことはない。
まして、相手の鹿島はJ1王者。10月10日、ナビスコカップ準決勝第1戦でG大阪に0−1で敗れて以来、公式戦11連勝中。その11試合中失点がわずか6という抜群の安定性。勝負強さも健在で、準決勝の川崎F戦を観戦した記者は「川崎Fのチャンスもあったが、鹿島の強さが際立った」と語っている。今、日本でもっとも強いチームは、間違いなく鹿島アントラーズだ。
その鹿島を相手に、J2降格を喫した広島の優勝を予想するのは難しい。確かに、広島には勢いがある。5回戦の磐田戦以降、3試合で7得点1失点。磐田・F東京・G大阪と能力の高いチームを相手に、試合内容も危なげない。全員守備が機能し、「人もボールも縦横無尽に動くサッカー」というコンセプトが、ようやく発揮できるようになっている。
だが、前述したように、勢いなら鹿島にもある。その上、鹿島はフルメンバーで決戦に挑めるのに、広島は柏木陽介が出場停止。ストヤノフも万全ではない。鹿島は10冠を達成したが、広島はJリーグ創設メンバーで唯一の無冠チーム(1994年のファーストステージ優勝はあるが)。実績も明らかに鹿島が上だ。
とはいえ、ここまでネガティブな要素を並べると、逆に「何かが起きるのでは」と期待したくなる。例えば、柏木のかわりに先発が予想される高萩洋次郎。今年、鹿島と広島は4度対戦しているが、高萩が出場したのは21分間だけ。リーグ戦出場実績は3試合119分しかなく、天皇杯でも途中出場ばかり。彼の情報は鹿島にとってはほとんどゼロに近い。つまり彼の存在は、広島にとって文字通りの秘密兵器。精度が抜群でアイディアも運動量も豊富な彼のプレーが爆発すれば、国立競技場を埋めた大観衆がそのファンタジーに魅了されるはずだ。
例えば、帰国したウェズレイに代わってFWに入る平繁龍一。スタミナに欠けるものの、屈強なJ1のDFをものともせずにボールをキープし、落ち着いてパスをさばくポストプレーは見事の一言。また、G大阪戦でのテクニカルな得点はもちろん、佐藤寿人の先制弾を導いたフリーランニングなどを見ても、彼のプレーは非常にクレバーだ。その平繁は、対鹿島戦では3試合に出場しているが、当時と今とでは、全く違う選手だと考えた方がいい。
ボランチとして抜群の存在感を発揮している森崎和幸も含め、今の広島は過去に鹿島が闘ったどの「広島」とも違うチームである。どんなにビデオ等で分析しても、4度も闘っていれば「先入観」がどうしても入ってしまうだろう。そこに、広島の付け入る隙が生まれるのではないか。
安定感や経験値は、明白に鹿島が上だ。しかし若さの勢いは、時に経験を上回る。高萩や平繁、槙野智章、高柳一誠ら広島ユース黄金時代を築いた若者たちの力が、森崎兄弟や駒野友一、佐藤寿人といったアテネ世代の中に眠っている底力を誘発すれば、鹿島の計算や予測は無意味になる。時代はいつも、若者が変えるもの。まして、今の広島はサポーターの信頼と自分たちの誇りを取り戻すために、全員が一丸となって闘っている。想いの強さで、鹿島に劣るはずはない。
昨日、広島のサポーターたちは、広島ビッグアーチで「紫のパネル」を集めた。それは、J1・J2入れ替え戦でビッグアーチのスタンドを紫に染めあげたもの。決勝戦に行けないサポーターたちは、そのパネルにそれぞれの想いを書き込み、国立に乗り込む仲間に想いを託した。1日だけで集まったパネルは1000枚を超えた。明日、そのパネルが紫の勇士たちに向かって掲げられ、想いはピッチに注がれることとなるだろう。
辛いことばかりだった2007年は、今日で終わる。明日、2008年1月1日は、今季の終了と共に「新しいシーズンの始まりでもある」(平繁龍一)でも、あるわけだ。来るべき年こそ、絶対に幸せな年にしたい。J1に1年であがり、その次には旋風を巻き起こしたい。そのために天皇杯で優勝し、初のタイトルをサポーターと共に分かち合いたい。チームは、その想いでひとつになっている。
そういえば、平繁龍一は昨年最後の大会=Jユースカップで、広島ユースを見事に優勝で飾った。その翌年、彼は満員の国立競技場で、日本一を決める決戦に挑む。大きな成長を遂げた若者に「今季も去年のように、最後は優勝で終わりたいね」と聞いた。
「そうですね。というか、そうするつもりですけど」
何とも凄い19歳は、平然とした顔つきで、こう答えた。
以上
2007.12.31 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
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