2月20日(水) 東アジア女子サッカー選手権2008 決勝大会
日本代表 1 - 0 中国代表 (19:15/中国・重慶/38,000人)
得点者:17' 山瀬 功治(日本代表)
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試合前の国歌斉唱時も、前半17分に山瀬功治(横浜FM)が先制弾を決めた時も、スタンドに陣取る中国人観衆からのブーイングは起こらなかった。が、その後、中国が怒涛の攻めを繰り出しながら同点に追いつけない展開が続くと、サポーターのイライラが爆発。終盤には2階席で発炎筒が炊かれ、試合終了後にはロッカールームに下がる日本選手に向かってペットボトルが投げられるなどの事態に発展してしまった。
こんな物々しい雰囲気に影響されたのか、中国選手のプレーも荒々しさを増していく。後半10分には完全に抜け出した安田理大(G大阪)がGKゾン・レイに右わき腹と腰を蹴られて負傷退場を余儀なくされた。遠藤保仁(G大阪)や中村憲剛(川崎F)らも悪質なチャージでたびたび削られる。後半39分には、鈴木啓太(浦和)が相手DFで主将のリー・ウェイフェン(背番号5)に押されてエキサイト。そこに入ってきたシュー・ユンロン(背番号18)と小競り合いになりかけた。だが日本代表キャプテンは「ああいう時は、やられたらやり返す気持ちを見せないといけない」と毅然と言い切るなど、決して冷静さを失わなかった。
チーム全体としてパス回しが速まり、ゴールへ向かう意識も高まった。さらには守備面でも高度な意思統一がなされるなど試合内容も17日の初戦・北朝鮮戦に比べると格段によくなった。が、それ以上に際立っていたのが精神面の成長である。これだけの荒れた試合でも闘争心を前面に押し出し、勝利したことはチームの大きな自信につながる。岡田ジャパンは東アジア選手権で初白星を挙げタイトルの可能性を残すとともに、今後に向けてようやく大きな一歩を踏み出したといえる。
初戦を1−1で引き分けている日本にとって、20日の中国戦(現地時間18時15分キックオフ、重慶五輪競技場)は絶対に負けられない一戦だった。指揮官は2日間のトレーニングで戦術練習を一切しなかったため、誰が出場するかは全く見えていなかった。配られたリストに書かれた先発は、GKは楢崎正剛(名古屋)、DF内田篤人(鹿島)、中澤佑二(横浜FM)、今野泰幸(F東京)、駒野友一(磐田)、鈴木、中村、山瀬、遠藤、安田、田代有三(鹿島)の11人。4−2−3−1の布陣にしても、安田の2列目、田代の1トップにしても予想外だった。対する中国は韓国戦と全く同じメンバー。基本布陣も4−4−2だったが、韓国戦でボランチを務めていたリュウ・ジェン(背番号15)が右MFに回り、右MFだったワン・ドン(背番号6)がボランチに入った。
中国は最大の長所である高さ・強さ・スピードを前面に出してきた。日本は球際で負けたり、激しい身体接触の末にボールを奪われるなどやや劣勢を強いられた。特に手を焼いたのが、ボランチのチョウ・ハイビン(背番号16)のサイドチェンジと両アウトサイドの繰り出すクロス。ジュー・ティン(背番号11)らFW陣と中澤・今野の両センターバック、守護神・楢崎によるゴール前の攻防は凄まじいものがあった。
そんな中国の勢いを断ち切ったのが、前半17分の山瀬の先制点だった。中央の遠藤からのボールに左サイドを駆け上がった駒野が呼応。ゴールラインまでえぐって中央に折り返す。この瞬間、ニアサイドに飛び込んだ田代がつぶれ、こぼれたボールを拾った山瀬がGKの位置をしっかりと見てシュートしたのだ。山瀬の決定力の高さは1月のボスニア・ヘルツェゴビナ戦(東京・国立)の2得点でも実証済み。日本はこれで優位に立った。
ここから前半終了時まで中国は怒涛の攻めを見せる。チョウ・ハイビンの展開、両アウトサイドの攻撃参加も鋭さを増した。とりわけ日本を混乱させたのが左のキーマン・ドゥー・チェンユー(背番号8)。若い内田は昨年の中国リーグMVPへの対応に苦しみ、何度か主導権を握られた。「相手がかなり裏を狙ってきた。試合をやらないと分からないこともある」と19歳の彼は戸惑いながらも懸命に相手をケアし続けた。
一歩間違えば同点に追いつかれてしまいそうな前半を乗り切った日本選手たちは、ハーフタイムにいち早く守備を修正した。鈴木が「前半はあまりに相手に自由にやらせすぎた」と反省したが、後半はチョウ・ハイビンにしっかりとフタをして攻撃の起点を断ち切った。これによって両サイドからのクロスも激減。逆に日本は中村が田代にクサビを当てながら攻撃のリズムを作り始める。パス回しもよりスピーディーになり、完全にペースを握る。安田が右わき腹を蹴られた場面も、相手守備陣の裏に完全に抜け出した決定機だったが、それ以外にも3〜4回はビッグチャンスがあった。遠藤のスルーパスを受け山瀬がダイレクトでシュートした24分の得点機、羽生直剛(F東京)のパスを受けた田代がDFを巧みにかわしフリーになった44分のチャンスなどは、明らかに1点ものだった。これを決め切れなかったのは相変わらずの課題といえる。
それでも全体の内容は悪くなかった。中村や山瀬の加入で連動性が高まり、日本の目指す「人とボールの動くサッカー」ができるようになった。ダブルボランチにしたことで中盤は確かに落ち着いた。田代も2試合目とは思えないほど前線でいいターゲットになっていた。北朝鮮戦から短期間でこれだけ修正できたことは前向きに捉えたい。
中国の激しいプレーに決して切れることなく、最後まで落ち着いて対処したことも評価すべき点だ。判定への不満などから終始、仏頂面で記者会見に臨んだ岡田監督が「選手は非常に冷静だったみたいで、私の方が興奮してしまった」と話すほど、選手たちの試合運びは見事だった。同じ反日ムードの中で戦った2004年アジアカップも苦しいゲームを勝ち上がっていく中で選手個人がタフさを増し、チームにも団結力と連帯感が生まれていった。今回の中国戦も、現日本代表が大きく変貌する契機になるかもしれない。
この試合の後に行われた韓国vs北朝鮮戦が1−1のドローに終わったことで、23日の最終日は日本、韓国、北朝鮮の3チームにタイトルの可能性が残された(勝敗表: /jsgoal_archive/japan/result/a_0801.html#02 )。ケガ人の行方は気になるところだが、ここまで来たら、永遠のライバル・韓国に勝って、岡田ジャパン発足後の初タイトルをもぎとるしかない。
以上
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