3月20日(木) 2008 J2リーグ戦 第3節
鳥栖 1 - 0 C大阪 (13:05/ベアスタ/7,839人)
得点者:64' 谷口堅三(鳥栖)
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手に汗握る好ゲームとは、今節のベストアメニティスタジアムで行われた試合のことを指すと言っても過言ではない。
鳥栖のファンもC大阪のファンも贔屓チームの奮闘に興奮しただけでなく、どちらが勝点3を得てもおかしくない試合内容を堪能したに違いない。
勝負事は、勝者の歓喜が大きければ大きいほど敗者の悲哀も大きいのが常だが、この試合に関して言えば、C大阪のファンも敗れはしたものの納得したに違いない。
シュートはお互いに17本ずつ、CKは3本ずつ、ゴールキックも鳥栖の15本に対してC大阪は13本と数字のうえでは全くの互角と言って良い。
敗者となったクルピ監督(C大阪)は、「私たちは負けるゲームでもなかったと思う。C大阪も多くのチャンスを作ったので、負けに値するような試合ではなかった」と内容を評価した。
勝者の岸野監督(鳥栖)でさえ、「前半主導権がとれずにきわどいシーンも何度かあった。ボールの運び方などかなりの差があったと思う」と苦しかったことを正直に露呈した。
シュート本数が両チームで34本と乱打戦のように見えるが、ボールデッド(スローインなどでボールがプレー中にない状態)が少なく、常にボールが動いていた。それにあわせてフィールド上では選手が全力で走り回り、一瞬たりとも目を話すことができなかった。
鳥栖は前線からプレッシャーをかけた。C大阪が左右に展開する時間をかけるとDFラインは積極的に押し上げた。
C大阪もサイドにボールが出ると、両サイドDFまでもが攻撃参加をして全体を押し上げた。
結果的に、両チームが狭いエリアでボールを奪い合い激しい攻防を繰り広げた。
C大阪は、出場停止があけたジェルマーノとアレーが、左右のMFをコントロールした。
左MFの香川の足元にボールを入れて、彼の突破力を度々用いた。
右MFの酒本は、前方のスペースを突いて、その俊足を惜しみもなく見せ付けた。
左右を起点として鳥栖陣内に攻め込んでは、古橋とカレカに合わせてボールを入れ続けた。
11分には、古橋の先制のシュートチャンスを左サイドがお膳立てした。
20分には、右サイドからカレカのシュートを演出した。
鳥栖もボランチの高橋と衛藤が、FWにボールを供給するだけでなく、自ら積極的にC大阪ゴール前に走り込んだ。
この日の高橋は、両チーム最多の5本のシュートを放っている。
18分には、ゴール正面25m地点からのFKでC大阪ゴールを脅かした。
しかし、この日の主役は鳥栖のFW谷口であった。
64分に中央のセンターサークル手前の衛藤から、FW山城に渡ったボールは、左サイドからゴール前に向かっていた谷口とDF柳沢(C大阪)の競り合いのボールとなった。
身長では谷口に分があるが、ボールの質を見て競る振りだけを見せて柳沢からのセカンドボールを狙った。
谷口の狙い通り、柳沢の頭に当たったボールは谷口の前に方向を変えた。
そのボールを「シュートだけを狙って」(谷口)迷わず右足を振りぬいた。
結果は決勝点となり、鳥栖に勝点3をもたらしただけでなく、鳥栖史上初の開幕からの連勝とC大阪を前節からの連敗へと導いた。
昨季、第35節(8月19日)鳥取バードスタジアムでのC大阪対鳥栖に先発しながらもシュート1本に抑えられ、60分過ぎに無念の交代を強いられた谷口が、C大阪を相手に大きな1点を返したのである。
この試合を最後に、昨季の試合出場は二度と回ってこなかった。
スターティングメンバーに名前を連ねたのもこの日以来の試合であっただけに、この1点は初得点と言う以上に大きな思い出になったに違いない。
しかし、まだ19歳。この1点に喜んでいては成長がない。
「次の1点が、自分にとっては大事な得点になる。できるだけ早く取りたい」と浮かれてはいない。
岸野監督も「取ったとはいえ、まだ1点。謙虚な姿勢で頑張って欲しい」と更なる活躍を願っていた。
C大阪の香川も森島も、そして途中出場した柿谷もみんなが若さと可能性を大いに見せてくれた。
この日のベストアメニティスタジアムで見せた選手たちのプレーは、サッカーの面白さを随所に見せてくれた。
今節の試合を、「日本サッカー界の父」と呼ばれるD・クラマー氏が観戦した。
彼の功績は語るまでもなく偉大なものであることは誰もが知っている。
そして、彼の残した“サッカー”を若い世代が確実に受け継いでいることを証明してくれた。
「プレーしていると身体は疲れる。疲れると身体は休みたくなる。しかし、頭(意識)がもっとサッカーをしたいと思うならば、身体は動く」
「目はあっても見えない。耳はあっても聞こえない。ものは気持ち(精神)で見て、聞くものである」
D・クラマー氏がサッカーの指導で用いた言葉である。
気持ちの入ったプレーをし続けた鳥栖とC大阪の選手たちが見せてくれた今節のサッカーは、サッカーの醍醐味を伝えてくれる試合であった。
これだから、サッカーの魅力は尽きることがない。
以上
2008.03.20 Reported by サカクラゲン
J’s GOALニュース
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