4月20日(日) 2008 J2リーグ戦 第8節
広島 1 - 2 甲府 (16:04/広島ビ/10,746人)
得点者:4' 服部公太(広島)、7' ジョジマール(甲府)、25' 秋本倫孝(甲府)
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「予想外だった」
森脇良太は、唇をかむ。予想外だったのは、もちろん甲府の戦術のことだ。
前からアグレッシブに来ることは想定していた。しかし、甲府の攻撃の主眼はショートパスではなく、ロングボールで最終ラインの裏に放り込むこと。そこに広島の選手たちは戸惑った。
7分の同点劇は、その戸惑いが生んだもの。アグレッシブなプレスでボールを奪い、杉山新が間髪を入れずにクロスを入れる。そのボールにGK木寺浩一と森脇が、一瞬対応に躊躇する。ボールは2人の間をすりぬけ、ジョジマールが押し込んだ。開始早々、広島はダイナミックな展開でペースを握り、李漢宰のクロスを起点にして服部公太がゴールを奪った。しかしそのわずか3分後の同点劇によって、広島は一気に消沈、甲府を勢いづかせた。
さらに広島を戸惑わせたのは、甲府の徹底した「守備」だ。広島の攻撃の起点=ストヤノフを警戒した安間貴義監督は、FWジョジマールをストヤノフのマーク役に指名。DFに対してFWが張り付くという「攻守逆転」のような様相だったが、その厳しいマークがストヤノフからのロングパスを阻んだ。広島はショートパスで打開しようと図るが、そこは甲府のプレスの網。同点で勢いづいた甲府の出足は鋭く、広島はボールを何度も失った。
25分の逆転シーンも、広島のパスミスから始まった。甲府はボールを奪い、ドリブルで切り込んでFKを奪う。そして広島は、美尾敦の素早いリスタートに意表をつかれ、秋本倫孝の逆転弾を許してしまった。
後半、奮起した広島は運動量を増して前に出る。高萩洋次郎が佐藤寿人と同じラインまでポジションをあげ、両サイドも高い位置に張り出し、相手の最終ラインにプレッシャーをかけた。そのため甲府のラインは下げざるをえず、プレスの勢いが鈍った。青山敏弘に替わった高柳一誠が攻守にダイナミックなプレーを見せたこともあり、情勢は逆転した。
しかし、甲府はそれでも必死で我慢する。ショートパスでの連動はできないが、広島が前がかりになるところを裏にパスを出し、カウンターで脅かした。
何よりも「勝ちたい」という気持ちを前面に押し出して、走る、走る。60分くらいから足をつらせる選手が続出し、プレーが途切れるごとに誰もが足を伸ばしていた。前半は大西容平が、後半には山本英臣が負傷退場するというアクシデントも、チーム全員でカバーする。どうしても勝つんだ、勝って勢いを取り戻すんだという甲府の強い想いが、ビッグアーチで爆発した。
65分、広島は李漢宰を下げて平繁龍一を投入し、システムを4-4-2に変更する。甲府はジョジマールを前線に残し、全員が引いてブロックをつくる。広島は両サイドからクロスを入れるが、甲府のブロックを崩せない。状況打破のため、広島はユキッチを投入し、残り5分となって高さに強い槙野智章を最前線にあげた。しかし、甲府の想いは広島の執念を上回った。
ホイッスルが鳴った瞬間、甲府の選手を包んだのは歓喜というよりも安堵。ストヤノフを最後までマークし続けたジョジマールは、精も根も尽き果てたように、膝に手をついて肩を落とした。
これで2005年以来、甲府は4勝1分と広島に負けがない。試合後、報道陣からは「これが相性か」という言葉も出た。しかし、この日の勝利を「相性」という一言で片付けることはできない。広島を徹底して研究し、自分たちの良さと相手の良さを潰すこと、その両立を目指した戦略の構築。そして、その戦略を実行するために、選手たちが身体を張り、走り、戦い抜く、その気迫。特に一瞬のスキも与えまいとハイボールをキャッチし続けたGK桜井繁と、佐藤寿人に自由を与えずタイトな守備を続けた秋本と池端陽介のセンターバックコンビに代表される守備陣の踏ん張りは、感動的ですらあった。
一方の広島。前半は相手の攻めに戸惑って失点を重ねた姿を、キャプテン佐藤は「昨年もよくあった光景」という言葉で表現したが、まさにそのとおり。「我慢ができなかった」と槙野は唇をかむが、それもまた、そのとおりだろう。わかっているのであれば、次は同じ轍を踏んではならない。「こんなことで下を向いていたらJ1に復帰できなくなる」という森崎浩司の言葉を、全員で噛み締めるべきだ。前から圧力をかけてきた時の打開策、ブロックをこじ開けるための方法など、戦術的な修正点はたくさんある。しかしそれ以前に、相手ペースになっても我慢を重ね、ネガティブな状況になっても自分たちを信じて前向きに戦う気持ちが何よりも重要なことは、この日の甲府の戦いぶりが実証している。
以上
2008.04.21 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
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