5月3日（土） 2008 J2リーグ戦 第11節
岐阜 0 - 3 愛媛　（13:03／長良川／3,524人）
得点者：7' 赤井秀一（愛媛）、23' 宮原裕司（愛媛）、25' 江後賢一（愛媛）
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ゴールデンウィーク初日。気温29度という夏場を思わせる気候に包まれたこの日の岐阜。しかし、絶好のサッカー日和で見せた岐阜のプレーはあまりにもお粗末なものであった。前節、危機感を持って挑んだ水戸戦で完勝を収めたことで、一瞬気が抜けてしまったのか。水戸戦で見せたチーム全体のひたむきさは感じられなかった。
一方、愛媛にとって、この一戦はどうしても負けられない一戦だった。前節にC大阪に1-4と完敗して最下位に転落。今節の相手はJ2昇格組の岐阜とあって、ここでの敗戦はチームを最悪の方向に持って行きかねなかった。その現れとして、愛媛サポーターはチームに向けた弾幕すべてを逆さまに張り、選手たちに「もう後がないぞ」というメッセージを送った。

この両者の気持ちの差がスコアとなって現れてしまった。試合は立ち上がりから、積極的に仕掛ける愛媛と、受け身に回る岐阜の図式が続いた。今日の岐阜は明らかにおかしかった。
中盤でほぼトップ下の位置でプレーする宮原に対し、アプローチが遅すぎた。愛媛のキーマンである宮原に自由を与えたことで、相手の攻撃を活性化させてしまう。宮原が攻撃の構築にウエイトを置けることになったことで、青野が中盤の底でバランスを取ることに集中できるようになった。この愛媛のダブルボランチの関係性が立ち上がりの段階で確立したことで、狙いを持った攻撃を生み出す土壌を作った。
そうなると岐阜はますます後手に回ることになる。7分に中央でボールを受けた内村に右に展開され、オーバーラップしてきた左サイドバック高杉のセンタリングを赤井にヘッドで合わされ、警戒していた立ち上がりの失点を受けてしまう。それでも、これまではここから盛り返しを見せたが、この日の岐阜にはその予感すら生まれなかった。
ボールの奪いどころがハッキリせず、中盤で数的優位を作り出せない。ボランチと2トップの距離も遠く、前線からの守備も機能しなかった。そうこうしているうちに、23分に内村のクロスからゴール前で混戦となり、ペナルティエリア内に岐阜の選手の方が多いにも関わらず、ボールの処理に戸惑う。クリアミスがこぼれたところを「こぼれてくると思っていた」宮原に蹴り込まれ、2点差とされてしまう。
勢いに乗った愛媛は直後の25分、左サイドでボールを持った江後が横山との見事な連携から、強烈なミドルシュートを叩き込んで、3点目を挙げた。

この3ゴールで試合は決した。岐阜も後半ようやく積極的に仕掛けるようになり、チャンスを作り出したが、前半で負ったビハインドはあまりにも大きすぎた。いくらスロースターターの岐阜といえども、前半のように士気が上がらないサッカーをしてしまった影響は最後まで大きく尾を引いた。岐阜にとって今季初めての完敗といえる試合だった。これまでは負け試合であっても、ペースを奪い返して相手を押し込んで、勝利する可能性を感じさせるサッカーは見せてくれた。しかし、この試合ではその可能性は一切見えてこず、これまであった『健闘』はそこにはなかった―。

この敗戦の意味は十分に考えないといけない。「気持ちを切り替えたい」と選手たちは口にしたが、単純に切り替えるだけでいいのだろうか。この試合を見る限り、問題は根深いものがあると感じる。ここで『見てみぬフリ』するのではなく、真っ向から見つめていかないと、この先の第２クール、第３クールに大きく影響している。もう一度よく考えてほしい。J2新入生の岐阜は、チームが一枚岩となって戦っていかないと、先には進めない。今やるべき事は、もう一度一枚岩のサッカーを取り戻すこと。そのためにはもっと議論を交わして、調子が良かったときのように、全員が同じ方向性を向いた素晴らしいサッカーを取り戻してほしい。これはサポーターの切実な願いでもあるのだから。

一方の愛媛は暗闇に光の射す勝利を掴むことができた。しかし、大事なのはこれからであり、1勝だけですべてが変わるわけではない。この試合で掴んだものを次に活かさないと意味がない。サポーターがこの試合で贈ったメッセージは、この試合に限ったことではない。サポーターは長期的にチームを見ている。目の前の１勝で事が済むなどということはない。愛媛にとって、次が真価の問われる一戦であり、サポーターの信頼を取り戻す意味でも大きな一戦となる。

以上


2008.05.04 Reported by 安藤隆人