5月18日（日）J2 第14節 仙台 vs 山形（13:00KICK OFF/ユアスタ）
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　無失点で３連勝、そして８試合負けなしと好調を維持している対戦相手に抱くのは、警戒心ではなく、感謝の気持ちでありたい。連勝ストップと、彼らの聖地・ユアスタでの今季初黒星をプレゼントする機会に恵まれたのだから。

　「得意なんですよ、そういうところに土つけるの」。小林伸二監督はニカーッと満面の笑みをたたえる。大分の監督時代、自分のすべてをさらけ出した戦術、指導法を吸収したヘッドコーチが敵将にいるやりにくさはあるはずだが、持ち前の懐の深さでそれを周囲に微塵も感じさせていない。今シーズンのＪ２でもっともシュートを打ってきた仙台に対し、もっとも打たせていない山形。仙台の「攻」と山形の「守」という盾と矛の構図は昨シーズンもあったが、どうやら小林監督は、引いてゴールを守るよりも、相手が得意とするパスワークを封じるアグレッシブな守備を選択するようだ。

　たとえば、前線。このフォアチェックのモビリティは、連戦でもトーンダウンすることはなかった。第７節以降の７試合すべてにフル出場している長谷川悠は、ポストプレーも含め体を張りながら１試合ごとに成長している。マッチアップするのは、柏時代のチームメイト。「岡さんに、１年目とは違うというところを見せたい」と静かな闘志を燃やしている。また、前節で今季初ゴールを挙げた根本亮助は本職ＦＷに復帰して２試合。スルーして裏で合わせるなど長谷川とのコンビネーションが少しずつ改善されているほか、サイドバック宮本卓也のオーバーラップに絡んでつなぎ役をこなすなど、本来得意とする「相手にとってうるさいプレー」がさらに発揮されそうだ。

　そして、ボランチ。前節に続き、佐藤健太郎と秋葉勝がコンビを組むことになりそうだ。開幕戦では佐藤がベンチ、秋葉がメンバー外とどちらも出場がなく、シーズン途中でチャンスをつかんでこの位置にいる。佐藤はアプローチする、相手に付いて戻る、フリーランニングで飛び出すなど、求められる仕事をタイミングを逃さずにこなすことで信頼をつかんでいる。仙台・手倉森浩ヘッドコーチが初代監督を務めた山形ユース出身の秋葉勝は、奥羽山脈を越えていったかつての同僚に対して遠慮することはない。「篤志さん（永井）はうまいです。でも、そこは削りに行きます。以前の紅白戦みたいに」。

　その中央を破ろうと、梁、関口が中央寄りにプレーすることになれば、山形はサイド攻撃のスペースを手にすることができる。特に、調子を上げている石川竜也の左足にとっては好条件が整うことになる。仙台では佐藤−中原のホットラインが注目されているが、それ以上のホットラインを根本との間に持っている。石川のひとつ前にポジションを取る宮沢克行は、石川の上がりを促す攻撃の役目もあるが、自陣深くまで戻り守備の貢献度も高い。上下動はいつもどおり激しいものになりそうだが、「向こうのサイドも同じようなスタイル。運動量では負けたくない」と最後まで走りきる決意だ。

　この１週間で数名の選手が練習に合流した効果は、充実したサブメンバーのなかに見て取れるだろう。「アウェイのなかでゴールをしたり、いいプレーをして黙らせたいという気持ちがある。モチベーションが上がります」と話すのはリチェーリ。ほぼ１カ月ぶりの公式戦で快足を飛ばすのが待ちきれない様子だ。前節で３点目のだめ押しゴールを決めた宮崎光平も「先発で行けと言われても大丈夫」と完全復調をアピールする。

　「仙台との試合はみんないつもどおりやれずに、何かが起こる試合」と話すのはＧＫ清水健太。最近５試合で２失点という守備を支える守護神は、だからこそ言う。「いろんなミスが出てきたりすると思うんですけど、そこをみんなでカバーしたい」。３年前、渾身のミドルシュートで６年ぶりのダービー勝利を呼び込んだ秋葉も、「仙台は順位で上にいるので、Ｊ１に行かせないためにも、うちが食いついていくためにも勝ちたい」。選手はみな真剣だ。背番号12は、どうか？

　地域に密着しながらＪ１昇格、さらにその先へ。モンテディオ山形は、見果てぬ夢の途上にある。そのなかで巡り合わせるこの一戦。昨シーズンは１敗３分だったが、「あの試合からダービーは勝ち続きだね」と振り返れる１勝に、きっとできるはずだ。

以上

2008.05.17 Reported by 佐藤円