6月22日(日) 2010 FIFAワールドカップ南アフリカ アジア3次予選
日本代表 1 - 0 バーレーン代表 (19:20/埼玉/51,180人)
得点者:90' 内田篤人(日本)
日本代表特設サイト〜ALL FOR 2010〜
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自分のゴールであることを理解できていなかったという内田篤人が、一切の感情を排して突っ立っている姿に対して、場内モニターに映し出された岡田監督の喜び方は尋常ではなかった。どんな得点でも1点は1点ではあるが、それにしても喜び過ぎではないかと思ったが、さすがに裏があった。
岡田監督は監督会見で「決してかっこいい得点ではなかったけれども、私にとってはこのうまくてスマートな選手たちが泥臭い点を取ってくれたのは嬉しいことでした」と、あの喜びに対する真意を語り、そして、合点がいった。岡田監督はアウェイでのタイ戦後にこんな言葉を残している。
「このチーム。非常にいいサッカーをやってくれますし、うまい選手も多い。がんばっている。しかし何か、あと少し小さなピースが足りないような気がずっとしていました。それが勝負への執着心であったり、どうしてもボールを取るという気迫でした」
つまり「自分や国のプライドをかけた戦い」で先制した事のうれしさよりも、選手たちの勝ちたい気持ちが「コンセプト」を超越して結果につながった事を喜んでいたのである。なるほど、それならばあのガッツポーズは理解できる。岡田監督は、このバーレーン戦の中に、この1ヶ月に渡る合宿の成果を見ていたのである。
何度目になるのか。そもそもこの合宿期間には、チームとしての大きなテーマがあった。それが岡田流コンセプトの徹底である。これまでにも書いてきたから読者のみなさんもおなじみのものだと思うが、それ自体は別に難しいものではない。それどころか、その普遍性やシンプルさもあって中村俊輔の「みんな頭がいい(この代表チームでの)共通理解は早かった」という言葉からわかる通り、あっという間にチーム内に浸透する。
チームとして共有した戦術を試合の中身として具体化させていたのが、このバーレーン戦の前半だった。試合開始直後に見せていたバーレーンの積極的なプレスは、時間の経過と共に影を潜める。真っ向勝負しても日本のパスワークには勝てないことを理解したのだろう。やる気満々の相手を力でねじ伏せた立ち上がりに、佐藤寿人が獲得したPKが決まっていれば「もっと(点が)入っていた試合」(闘莉王)だったのは間違いない。しかし日本は、バーレーンを勇気づけるまずい試合運びをしてしまった。
前半のバーレーンは、1トップの11番アブロゥルラティフを前線に残し、ディフェンシブな戦いを推し進める。バーレーン代表本来のメンバーがそろっていれば、もう少し脅威になっていたであろうカウンターも不発に終わり、バーレーンは攻め手を欠いていた。日本はそうしたバーレーンを相手にボール支配率で圧倒し、パスとフリーランニングを組み合わせた崩しでシュートチャンスを狙い続けた。
岡田監督の狙うサッカーの一つの形であろうと思われるのが13分のプレーである。闘莉王から安田理大へとつながったパスを見て、本田圭佑が前方のスペースへ全力疾走し、安田からのパスを引き出した。シンプルな速攻は、ゴール前の玉田圭司へのラストパスとなり、反転シュートに結びつけた。
また、日本のお家芸であるセットプレーでもチャンスを作った。前半終了間際の44分。ゴール正面からのFKの場面で、遠藤保仁がクロスバーを叩く惜しいシュートを放つと、このこぼれ球に日本代表が4人反応。しかし、ボールに追いついた本田の左足は空を切ってしまった。
決定力に課題を残したが、それは選手個人の資質によるものであり、選手個々が精度を上げて解決すべき問題である。その一方で、チームとして意図を持って決定機を作り出しており、岡田監督のチーム作りが着々と進行していることを示していた。
そんな中、気がかりなのが後半の戦いだった。前半、引き気味だったバーレーンが突如として前掛かりの戦いを挑んできたのである。後半押し込まれる時間帯があったのは、もちろん日本側の疲労もあるが、バーレーンがリスクを取ってきた事が主因であろう。そしてそうした相手チームのペース配分の変化は、アウェイでのタイ戦でも見て取れていた。つまり同じ土俵に上がって前半からプレスを掛け合うのではなく、日本の疲れを待って後半にペースアップしているのである。それがタイの場合のように、2点のビハインドを追いつこうとして、少々無理をして前に出てくるのであればまだいい。しかし、この試合のバーレーンのように1点を取るために、時間を限定し、狙い澄まして前に出てくるような狡猾な戦いをするチームはやっかいである。最終予選で対戦する相手の中には中東のチームが確実に含まれてくる。彼らは日本の事をリスペクトしており、強国という認識を持っている。だからこそ、変化を付けた戦いを挑んでくる可能性は高い。そういう意味でも、もっと決定力を上げていく必要がある。
それにしても、コンセプトに従って形を作った前半に得点が決まらず、「サイドバックは初めてでした」という中村憲剛を左サイドバックに据え、闘莉王を最前線に送り込んだ後半のロスタイムに、意図せざる形で得点が決まったこの試合は、サッカーの不確実性を如実に示していた。もう少し言うとサッカーの試合結果は、少なくはない割合で、運に作用されるのである。
いずれにしても日本はバーレーンを下した。目標だったグループリーグ首位での通過を決め、不細工ではあったがアウェイでの屈辱を晴らすことに成功した。今後、今週末(27日)の組み合わせ抽選会の結果を待って、日本代表の最終予選での対戦相手が決まる事になる。しかし、最終予選に向けて、これだけの長期の合宿の機会はもうない。それだけに、安田が「ガンバでコンスタントに自分のプレーをするのが代表への近道になる。高い意識を持って、ガンバでプレーしていきたいです」と口にしていたように、各クラブでのプレーが各選手を成長させる最大の舞台となる。それぞれの選手は、この代表合宿でそれぞれに課題を見つけたはず。それをクラブに持ち帰り、またある選手は北京五輪という実戦の場で、さらに磨きをかけてほしいと思う。日本代表のでプレーは、日々のプレーの積み重ねの上にあるものである。だからこそ、各クラブでの日々のプレーを大事にしてほしいと思う。
以上
2008.06.23 Reported by 江藤高志
J’s GOALニュース
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