■AFC U−19選手権サウジアラビア2008
10月31日16:15(日本時間22:15)/Prince Mhd. Bin Fahd Abdel Aziz Sdm
U−19日本代表 5−0(前半2−0) U−19イエメン代表
得点者:12分 水沼宏太(横浜FM)、32分 永井謙佑(福岡大)、52分 山本康裕(磐田)、53分 水沼宏太(横浜FM)、55分 鈴木惇(福岡)
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「外野にいろいろ言われて選手も奮起した」
試合後、ボランチの山本康裕(磐田)は珍しく表情を強めて言った。その外野の一人として10月30日の前日練習で感じたチームの雰囲気が、翌日に5−0という結果に繋がるとは想像さえしなかった。ただ、選手の表情だけでなく、牧内辰也監督の顔からもこれまで外野にいろいろ言わせるような部分が消えて、腹を括った潔さが表れていた。何かが違ってきていることは充分に感じさせてくれていた。
サウジアラビアで一番大きい空港・ダンマン国際空港から延びる、滑走路より遥かに長い直線を持つ片側3車線の道路。そこを時速180キロで走るタクシーは、トヨタのカムリがものすごく速く走ることが出来ることを証明して約20分でダンマンの中心部に連れて行ってくれた。遺跡を発掘した学者が今も正しければ、約1万8000年前から人が住んできたダンマン。隣接するアルコバルの地下からは、サウジアラビアのドル箱の原油と天然ガスが1938年からうらやましいほど出続けている。その街並みには、ネジ屋、スピーカー屋、衛星放送のアンテナ屋など何かの部品を売るつまらない店ばかりが並んでいて、間違って観光に来てしまったら45分で飽きてしまう。後半は持たない。東京ドームより大きいカルフールにはノンアルコールビールしか売っていない。この街にU19日本代表は世界への切符(FIFA・U-20ワールドカップ・エジプト・2009)を取りに来た。
永井謙佑(福岡大)は「世界への切符を取るための雰囲気が(チームに)出来つつある」と話したが、気持ち一つでこれまで不安ばかり感じていたチームが大きく変わることは素晴らしい。コンディションが戻っていない香川真司(C大阪)を先発から外したU19日本代表だったが、スカウティングビデオすら手に入らなかったU19イエメン代表に対して最初から主導権を取ることができた。守備の連係も悪くなかったが、何より素晴らしかったのは相手のバイタルエリアでのボールの弾き。まさに弾くようにワンタッチでボールを動かしていくことが出来た。新潟・十日町の最終合宿で流経大のサブメンバー相手に押し込まれ、攻めあぐねたチームとは思えない動きだった。前日練習ではDFを付けないで弾きのイメージを確認していたが、その通りのプレーが出来ていた。前日練習との違いは、そのときは入らなかったシュートが5回もゴールネットを揺らしたということ。驚くことに、日本の攻撃を邪魔する選手が11人もいたのにも関わらずにだ。
その口火を切ったのはU17日本代表でもファーストゴールを決めた水沼宏太(横浜FM)。ワンツーで裏を抜けると、「前に出てくるGKを落ち着いて見て蹴ることが出来た」と、先制ゴール(12分)を決める。水沼は日本チームのダイナモだが、特別なフィジカルに恵まれていない代わりに何かの幸運に恵まれている。このゴールで日本チームの硬さや不安はなくなり、残ったのは自信と希望だけ。
水沼のゴールを喜び、自らもゴールを決めようとモチベーションが2割り増しになった柿谷曜一朗(C大阪)。しかし、後ろからチャージを受けて24分に負傷交代をしてしまう。普通ならこれでチームのいい流れや雰囲気が変わってしまうのだが、代わりに入った永井が水沼と同じようにワンツーで抜け出して追加点(32分)を決める。このゴールで日本は完全に調子に乗ることが出来たし、イエメンは焦り始めた。
後半の52分に山本が3点目を決めると勝負のシーソーは日本に大きく傾き、1分後に水沼がハットトリックリーチとなる2点目のボレーシュートを決め、その2分後には鈴木惇(福岡)が必殺の左足ではなく、軸足になるはずの右足でペナルティエリア外から5点目となる止めの止めゴールを決める。
前半は2点目を決めた後にGKの権田修一(F東京)がハッスルしなければならない場面があったが、後半の権田の仕事のほとんどはコーチングとパントキックだけ。同グループのイランやサウジアラビアがイエメンから10点取るかもしれない心配はあるが、日本戦後に行われたサウジアラビアvsイラン(2−1でサウジアラビアの勝利)を見ると、日本の勝利とパフォーマンスが彼らに充分にプレッシャーを与えるものであることは明らか。
試合後の会見で牧内監督は「サウジアラビアとイランに力があることはわかっている。今日はたまたま上手いゲーム運びが出来たが、思うようにいかない時間帯は多くあると思う。もう一度自分たちのやることを整理して、集中して次のゲーム(11月2日・対イラン)に入れるように準備したい」と、これまで見せなかった厳しい顔で話した。
サウジアラビアに敗れたイランは必死になって勝ちに来る。当たりの激しさはイエメンの比ではないだろうし、過去の対戦成績が良くない相手。しかし、イランのバイタルエリアを日本の弾きパスワークがどう崩せるのか楽しみでもある。もちろん、守備の連係、激しさ、粘り強さも問われる。しかし、流経大と戦うよりは戦い易いはず。組織力の高くないチームが相手なら日本の上手さは活きやすい。修正点を挙げるとすれば、大量得点になってからパスワークでペナルティエリア内に入ろうとして、個人で勝負する場面が少なくなったこと。パスワークに頼りすぎると、主導権を取っているように見えてもドツボにハマっていることがあるからだ。
正直言って早めの帰国も想定していたが、サウジアラビアの法律に触れない範囲でダンマンの楽しい場所を見つける必要が出てきたのかもしれない。
以上
2008.11.01 Reported by 松尾潤
J’s GOALニュース
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