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【キリンチャレンジカップ2008 日本 vs シリア】レポート:3ゴールとともに手にした成果。そして失点に象徴される課題。アウェイのカタール戦に向け、継続と改善が要求される。(08.11.14)

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11月13日(木) キリンチャレンジカップ2008
日本 3 - 1 シリア (19:20/ホムスタ/25,004人)
得点者:3' 長友佑都(日本)、26' 玉田圭司(日本)、62' 大久保嘉人(日本)、78' モハマド・アルジノ(シリア)
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 特に前半に見られたが、どうにもプレスが安定しなかった。激しく追い回してはいるのだが、簡単に飛び込み、プレスをかわされてしまう。そういう場面が何度かあった事について心配をしていたのだが、どうやら選手たちはコンセプトの確認として意識的にプレスを試していたようである。

 たとえばそうした守備について中村憲剛(川崎F)は、「敵陣のボールに対して」と前置きして「前から取りに行ってチャレンジするのはいいと思う。抜かれたら戻ればいいだけなので」と説明。選手同士で「タマ(玉田圭司・名古屋)とかタツヤ(田中達也・浦和)が行ったときはスイッチなので、連動して。それで無理だったらしっかりハーフウェイのところでポジション取ってコンパクトにする」という話をしていたのだと語っていた。

 そうした背景を知った上で激しくも空回り気味のプレスを見直すと、あれは今日出場していた選手たちがあの局面でできる最大限のプレスだったのだろうと推定することができるのである。つまり、選手たち自身が自分たちを追い込むことで、一度限界点を知る過程だったのではないかという訳である。そしてその経験をベースにカタール戦に臨む事で、バランス感覚を持ったプレスが可能になるものと思われるのである。では、バランス感覚とはどういう事なのかというと中村憲の弁を借りれば「相手にしっかりポジショニングを取られれば、こっちもポジションを取って無理に追うべきではない」というメリハリという事になる。

 そうしたメリハリ=バランスが見えたという点でこの試合は一定の成果を上げたと言える。そしてそうした思い切ったプレスに出て行けた最大の要因が、前半の2ゴールにあるのは間違いない。

 というのも岡田武史監督は試合前日の公式会見の席上「明日のゲームに関しては、カタール戦に向けた重要なテストである」としつつ「ただ当然試合をやるからにはピッチに立った瞬間から勝つためにベストを尽くす」と勝ちにこだわる姿勢を見せていたからである。そうした試合において、長友佑都(F東京)の3分の先制ゴール。そして26分の玉田の追加点は大きな意味を持つものとなった。試合の流れを決したこの2ゴールの中でも特筆しておきたいのは、長友の得点である。インターセプトからの流れの中、田中達と玉田のフリーランニングによってスペースが作られ、そのスペースを積極的に使いつつ、ゴールへと向かう意欲を見せたことから生まれた得点だった。もちろん立ち上がりのシリアが、中盤の底を11番のアデル・アブドゥラ一人に任せていたが故の、中盤の守備の手薄さという事情も背景にあるのだが、それにしてもシュートを打つことの重要性。ゴールを目指すプレーの大事さを改めて感じさせてくれる得点だった。

 日本代表にいいように中盤を制されていたシリアが、中盤の前目に位置していた19番のヤヒア・アルラシドのポジションを中盤の底に下げたのが前半の20分頃。守備に注力した相手をパスワークで攻め立て、最後は玉田が豪快に蹴り込んだ2点目も日本代表にとっては自信となるものである。ただ、自信と過信とは違う事を玉田は敏感に感じ取り、自らを戒めるよう「自信も大事だけど、次が本番。気を引き締めてやりたい」と発言。カタール戦に向けて気持ちを新たにしていた。

 激しいプレスを含めてコンセプトを確認できた前半に比べると、後半は少々物足りなさを感じさせるものとなる。お互いに6人ずつを交代させたことによる集中力の低下もその一因だったのかもしれないが、大久保嘉人(神戸)のゴールの後、さらに追加点を畳みかけられなかった事が最大の要因であろう。シリアは彼らの心が折れる前に、チームとしての意地を見せて反撃を開始。PKながら1点を返した78分ごろから日本を攻めて立て始めた。

 シリアが態勢を立て直したという事と、日本代表が混乱に陥ったという点は表裏一体の関係にある。つまり日本側が落ち着いて対処しさえすれば、このシリアが相手であれば1失点は防げた可能性が高いと考えるのである。

 そういう部分では、チームとしてばらけそうなときに、それをどう押しとどめ結束を回復、維持させるのかを検討する必要はあるかもしれない。たとえばアウェイのバーレーン戦の終盤や前回のウズベキスタン戦の立ち上がり。日本代表はチームとしての規律を失うほどの猛攻を受けてしまった。今回の「ばらけ具合」とは別次元ではあるが、ばらけてしまった、という点では根は同じである。相手の猛攻を受けたとき、その対処法として蹴るのか、引くのか、押し上げるのか。方法論は無限にある。あまり考えたくはないが、想定しておいて損はない状況設定ではないかと思う。

 終盤に散漫な試合になってしまったこと。攻守に渡って詰めの甘さが見られたことが少しばかり気にはなるが、一定の成果を手にカタール遠征へと旅立てるのは日本代表にとっては良かった。また偉大なる先輩選手である森島寛晃(C大阪)の引退の報に接し、その森島のゴールパフォーマンスを約束していた大久保が、それを実現したことが大久保のメンタルに与えるプラスの影響にも期待したいところだ。

 テストの中に、結果と課題とが出たシリア戦は、一定の成功を収める形で終了。いよいよ日本代表は、正念場となるアウェイのカタール戦へ向けた戦いへとシフトしていく。

以上

2008.11.14 Reported by 江藤高志
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