12月13日(土) 2008 J1・J2入れ替え戦
磐田 2 - 1 仙台 (16:04/ヤマハ/16,693人)
得点者:41' 松浦拓弥(磐田)、70' 松浦拓弥(磐田)、89' 梁勇基(仙台)
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☆磐田サイドレポート
CKがクリアされ、ホイッスルの音が長く響く。
入れ替え戦という、未だかつて迎えたことのない興奮の舞台を控え心躍った時から、奇跡というものの存在を信じる気になった最後の1分と少しまで…どの部分を切り取っても、仙台のクラブ史に刻むべき瞬間ばかりだった、怒濤の1週間が終わる。高揚感が引いた時「祭りの後」を迎えた僕らはどうなってしまうのか、どんなことを思っているのか、考えたくなかった瞬間が現実になる。
しかしヤマハスタジアムのアウェイ側エンドで展開された光景は「この世の終わり」という類の荒涼としたものではなかった。そこにいた者が驚く位の間髪入れないタイミングで、仙台のサポーターは愛するクラブの名を叫びだした。それはピッチの随所で倒れ込む選手たち、同時に自分たちに対しての、せめてもの労いだったのではないか。
やがて選手たちも立ち上がる。遠征に帯同したもののメンバーには入れなかった選手たちも含め、チームの全員がサポーターの前へ。悔しさもある。涙もふんだんにある。でも恨みや怒りといった、後ろ向きの感情はない。最後は皆を包み込む拍手で、仙台は「共闘」の2008年を締めくくった。
J1時代の2002年と03年、仙台はこのスタジアムでアウェイ戦を2度戦ったが、初回は高原直泰のハットトリックも含む0−4で木っ端微塵に粉砕され、泥沼の残留争いの渦中にあった2003年終盤に迎えた2度目も、無得点ながら虎の子の勝点1を仙台に持ち帰れるかと思われた終了間際に、痛恨のPKを与えてしまい0−1の敗戦。つまり仙台はヤマハスタジアムで、一度もゴールネットを揺らすことができていなかった。
そんな場所で、最低でも1つのゴールを決めないことには、第1戦でアウェイゴールを許した仙台は這い上がれない。そもそも難しすぎるタスクではあったが、仙台は果敢に挑んだ。もちろんリスクは覚悟で前へ出ることにより、カウンターの危機もそれなりにあったわけだが、前田遼一、ジウシーニョの2トップに対して、最終ラインの選手たちはよく食らいつき自由にはさせない。全ては前線がアウェイゴールを奪ってくれることで解決する…彼らは信じて守った。
そして実際に第1戦同様、チャンスが仙台にやってくる。ハーフウェー付近で中島裕希が、ケガを抱えた体にムチを打って相手を背負いながら強引に突破、そこからのパスを受けた関口訓充は左サイド前方に飛び出していった梁勇基へ展開、梁からの低いセンタリングがニアをすり抜け、ファーサイドにいたナジソンへと渡る。だが狙いすましたはずのシュートは大きくバーの上へ。
第1戦と同じ流れに持ち込めなかった仙台は前半の内にやられる。41分、自陣ペナルティーエリア前という危険なスペースでパス交換が窮屈になり、富田晋伍が松浦拓弥にボールを奪われる。千葉直樹、そして菅井直樹と、続けて飛び込んだスライディングがかわされ、一旦左に叩いたボールの折り返しを、ニアに入ってきた松浦に胸で押し込まれた。
後半開始から仙台はナジソンを下げて平瀬智行投入。しかしそこで流れは変わらず。ケガを抱えた中島、菅井の動きも極端に落ちてくる。目に見えて少なくなるチャンスの数と、刻一刻と減っていく時間。
その焦りもあったのだろうか。仙台は頼みの綱のセットプレーであるFKから、平瀬が川口能活を脅かす惜しいヘッドを放ち、続けてCKを得る。だが「ベンチから指示があったわけではないが、気がついたら最終ラインが晋伍(富田)一人だけになっていた」(渡辺広大)という証言が示すとおり、久々にやってきた好機に対し、仙台のイレブンは得点への意欲が高まり過ぎて、許容を超えるリスクを背負ってしまった。
これが富田にとって、そしてチームにとって不幸な出来事を生む。70分のこのCKのクリアを拾った駒野友一はすぐさま前線へボールを蹴り上げる。ハーフウェー付近からドリブルを開始した松浦は富田をかわし、ペナルティーエリア内でGK林卓人の脇を抜くシュートを決める。これで2−0。仙台は2点が必要になった。
だが仙台はそんな「負けっぷりの良いチーム」ではなかった。残留に向けてのカウントダウンが始まったかのようなヤマハスタジアムで最後まであがく。川口能活がどんどん乗ってきても怖じ気づくところなく磐田ゴールに迫り、迎えた4分のロスタイムである。梁が左サイドから中央へ持ち込み、ペナルティーアーク付近でFKを得る。
この状況で、彼が蹴ってもし外したとしても、誰も文句は言えない。梁は仙台にとってそんな存在である。もちろん彼自身、誰に譲る気も無かっただろうが。磐田の選手が全員ペナルティーエリア内に戻る中、さほど助走を取らずに梁が右足インフロントで蹴ったボールは、素晴らしいカーブを描き、ゴールの左上隅へ。
これであと1ゴール奪えば、アウェイゴールの関係で仙台が大逆転昇格。ロスタイムはおそらく1分弱しか残っていないが、仙台ならばやれるかもしれない。しかし関口の今季最後となるサイド突破から生まれたゴール前での混戦から、仙台はあと一歩、押し込むことができなかった。
今季仙台は、幾度ものミラクルで勝点を重ね、何とか入れ替え戦にたどり着いた。だがこの2戦を経験して思った。J2のクラブだと相手に奇跡を許す弱さがあるところ、J1は(少なくとも下部リーグのクラブに対し)ミラクルを起こさせてくれなかった。それこそがJ1ということであり、ここに上り詰めるには、自分たちも本当に強くならないとダメなのだ、ということなのかもしれない。
そして冒頭のCK、その後の試合終了を仙台は迎えた。
以上
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